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点火型人材と新たな課題の設定が、ブルー・オーシャンの要

ダイヤモンド・オンライン のロゴ ダイヤモンド・オンライン 2019/01/11 06:00 ムーギー・キム,W・チャン・キム&レネ・モボルニュ,有賀裕子
ゴール設定の時点で敗北!? 日本の起業家が世界で勝てない理由とは?: ムーギー・キム ブルーオーシャングローバルネットワークメンバー 慶応義塾大学総合政策学部卒業。INSEADにてMBA(経営学修士)取得。外資系コンサルティングファーム、投資銀行、米系資産運用会社、香港でのプライベートエクイティファンド投資、日本でのバイアウトファンド勤務を経て、シンガポールにてINSEAD 起業家支援企業に参画。 INSEAD時代にチャン・キム教授に師事し、ブルーオーシャングローバルネットワークの一員として、新刊『ブルー・オーシャン・シフト』では、特別付録の日本ケースの執筆を担当している。著書に『一流の育て方』(ダイヤモンド社)『最強の働き方』(東洋経済新報社)、『最強の健康法』(SBクリエイティブ)などがある。』 © 画像提供元 ムーギー・キム ブルーオーシャングローバルネットワークメンバー 慶応義塾大学総合政策学部卒業。INSEADにてMBA(経営学修士)取得。外資系コンサルティングファーム、投資銀行、米系資産運用会社、香港でのプライベートエクイティファンド投資、日本でのバイアウトファンド勤務を経て、シンガポールにてINSEAD 起業家支援企業に参画。 INSEAD時代にチャン・キム教授に師事し、ブルーオーシャングローバルネットワークの一員として、新刊『ブルー・オーシャン・シフト』では、特別付録の日本ケースの執筆を担当している。著書に『一流の育て方』(ダイヤモンド社)『最強の働き方』(東洋経済新報社)、『最強の健康法』(SBクリエイティブ)などがある。』

INSEAD在学時代にチャン・キム教授に師事し、『ブルー・オーシャン・シフト』巻末の特別付録で日本企業ケースを執筆したムーギー・キム氏(ブルーオーシャングローバルネットワークメンバー)とデロイト トーマツ ベンチャーサポートの事業統括本部長である斎藤祐馬氏との対談前編。斎藤氏は2010年に社内ベンチャーとして、ベンチャー支援の事業を立ち上げた。同社が開催するベンチャー企業と大企業の事業提携を生み出す場であるMorningPitch(モーニングピッチ)は、毎週1回開催され、実施回数は260回を超えた。ベンチャーと大企業の連携を支援し続けてきた斎藤氏が、新規事業の創造についてムーギー氏と語る。(構成:肱岡彩)

点火型人材がいなければ、事業は生まれない

ムーギー 斎藤さんは、大企業とベンチャーをつなぐ場である「MorningPitch(モーニングピッチ)」を開催されるなど、2010年から現在に至るまで、ベンチャーを支援し続けていらっしゃいますね。

斎藤 トーマツの中でベンチャー支援が事業として立ち上がったのは2010年なのですが、それ以前にも会計士の仕事をやりながら、夜や土日の時間を使って、ベンチャーの経営者と交流するなど準備をしていたんです。その準備期間も含めると、13年くらいこの分野に関わっています。

ムーギー ベンチャー単独はもちろん、ベンチャーと大企業が連携して、新規事業を生み出す場面をいくつもご覧になって、成功例と失敗例、それぞれあったと思います。 新規事業の成否を左右する要素は、何なのでしょうか。

斎藤 点火する人がいるかどうかが、重要になってきます。「これをやろう」とトップダウンで指示が下りてきても、チームに意志がなければうまくいきません。 人には不燃型で全く燃えない人もいれば、可燃型で周りにインスパイアーされて頑張る人もいる。自分で自分に火をつけて頑張れる自燃型もいます。 そして、起業家や事業を立ち上げる人に共通するのは、点火型だということです。周りにビジョンを伝え、動機付け、巻き込むんです。そういった人が存在しなければ、事業はうまくいきません。

ムーギー なるほど、他にも難燃型で燃えにくい人や、消火型で火を消すべく足を引っ張る人とか、企業内にはいろんな障壁となる人がいるものですよね。では点火型の人は、何がモチベーションになって、大きな動きをつくろうとするのでしょうか。

斎藤 たとえば、ニュースの多くは、自分とは関係のない「他人事」で終わることが多いと思います。けれども、子育てで苦労した人は、そのようなニュースに関心を持つと思うんです。つまり、自分の苦労や自分の歴史との接点があると、関心が生まれます。自分がつらいと思っていたことで、実は周りの人も苦しんでいる。それを知ると「ああ、これは社会課題だったんだな」と認識出来る。それをビジネスで解決しようと考えるのが、起業家です。 原体験がモチベーションになり、周りを動かしていますよね。

ムーギー 斎藤さんの場合、原体験は何だったんですか。お父様の起業体験が根底にあると伺ったことがありますが。

斎藤 旅行会社に勤めていた父が、会社を辞めて、自分で小さな旅行代理店を立ち上げたのが、大きく影響していますね。父が事業で非常に苦労していた姿を見ていたことで、経営者をサポートしたいという思いを持つようになったんです。

ムーギー なるほど。自分が苦労したからこそ、その課題解決の重要性を自分自身が実感している。それが強い原動力になるということですね。

斎藤 何かしら苦労をしないと、土俵際で頑張る理由がないんです。異常に頑張れる理由は、5つくらいしかないと思うんです。

ムーギー 強い価値観をつくる体験とはどのようなものでしょうか?

斎藤 家庭環境が複雑だったり、虐められたり、苦労したり、留学などで衝撃を受けたり、大企業の不条理に悩まされたり…とかですね。あらゆる理由も元をたどると、この5つのどれかに分類出来ると思います。何かしらの体験が、強い価値観をつくるわけです。

ムーギー 「これは困った」という強い実感がないと、価値観は生まれないですもんね。

斎藤 2、3年であれば、お金儲けのために頑張れるんです。価値観に基づく頑張れる理由がないと、5年、10年頑張ることが難しいというのが、私の実感です。 大企業の中で、新規事業の立ち上げに成功しても、金銭的には数十万程度ボーナスが上がったりする程度のリターンしかありません。他には出世が数年早くなるとか。

ムーギー まあ、たかが知れていますよね。

斎藤 そうなると余計に、頑張れる理由がないと続けられないですよね。

ムーギー なるほど。つまり、社会的な報酬のような価値観レベルの報酬感がないといけないということですね。

斎藤 そうです。要は、これは世の中にとって意味があると信じられない限り、やり抜くことは難しいんです。

ムーギー けれども、子どもの頃の原体験は、自分で選べない場合が多いと思います。ものすごく恵まれた家庭で、特に何の苦労もせず、大企業に就職し、エリート路線を歩む…そういった人たちも一定数いるはずです。今更「原体験を持て」といわれても、結構困ると思うんです。「何がやりたいのかわかりません。原体験もないし、強い価値観もないです。」という人には、どのようにアドバイスをされていますか。

斎藤 おっしゃる通り、「まあ、上々だよね」という人も結構います。頑張る原動力となる価値観を見つけるのは、確かに難しいです。

ムーギー そうですよね。

斎藤 ただ、「何が好き」のような価値観は絶対に持っているんです。まず、その価値観から聞いていくんです。「何でこの会社を選んだのか」と聞けば、何らかの理由が返ってくる。そこから突き詰めていくと、多くの場合、5つの理由のいずれかにたどり着くんです。「実はこうだと思っていたけど、これを重視していたんだ」と気が付く人は、結構いますね。

ムーギー 自分で自分の価値観を認識出来ていない人が多いんですね。そんな人でも、よくよく考えると、自分に影響を与えているものに、気が付くことが出来る。

斎藤 誰でも何かしらの意思決定を連続して下しているわけです。その時の基準が、絶対にあるはずなんです。

「誰を笑顔にしたいか」を基軸に、課題を更新し続ける

斎藤 私たちの事業は端的にいうと、ベンチャーがいて、その周りにはお金を出すVC(ベンチャーキャピタル)、大企業、政府がいます。「VCのファンドがもっと増えるようにしよう」「大企業とベンチャーをつなぐためにモーニングピッチをやろう」「政府に政策提案して、もっとこの分野への関心を高めよう」…そうやって事業を考えていくんです。その時に考えるのが、「誰を笑顔にしたいか」ということです。 この問いは、「ブルー・オーシャン戦略」ともつながると思うんです。「この人をどう幸せにするか」から発想すると、どんどんアイデアが生まれます。けれども、「どこが稼げるか」からスタートすると、レッド・オーシャンになるんだと思います。

ムーギー 稼げる市場には、みんなが同じような発想で進出しちゃいますからね。これに対し、本質的に顧客の痛みを取り除くバリューを考えるのは、ブルー・オーシャン戦略の基本的な要素の一つでもあります。

斎藤 はい。発想の起点に“喜ばせたい人”がある。しかも、そこに思いがあれば、課題を解決するサービスはどんどん浮かぶんですよね。そして、今課題だと認識しているということは、まだブルー・オーシャンだということと、イコールだと思うんです。

ムーギー 未解決の問題ということは、誰もそれを解決するサービスや製品を十分なレベルで提供していないということですもんね。

斎藤 私たちの事業も、最初はベンチャーへの資金調達に関する助言や大企業とベンチャーをつなぐ支援を中心に行っていたんです。

ムーギー ただ、他にも同じようなことをやっている人がいますよね?斎藤 そうです。どんどん、課題は解決されていきます。だから、解決されると、次の課題解決に動くんです。 私たちの場合、今は日本のベンチャーを世界で活躍させることが、次の課題です。ここはまだ、ブルー・オーシャンだと思っています。ムーギー なるほど。今、日本のベンチャーが大企業とつながり、資金調達をするエコシステムが構築されていて、ある程度市場が出来てしまったという認識なんですね。だから次は日本のベンチャーがグローバルで活躍するための橋渡しをするぞと。ベンチャーが経験するトータル顧客体験として、資金調達のところでひたすら競っても仕方なくて、その後のグローバル進出などもサポートしていくのだと。

斎藤 課題が解決されつつあるというのは、レッド・オーシャン化しているということです。だから、新しい課題を見つけて、ブルー・オーシャンに移らないといけない。

ムーギー 実は、ブルー・オーシャン戦略への最も大きな誤解は、「ブルー・オーシャンは一度切り開けばよい」というものです。「かつてブルー・オーシャンを切り開いていたかもしれないが、今はレッド・オーシャンになっているじゃないか」と、勘違いされる方もいます。 『ブルー・オーシャン戦略』の著者のチャン・キム教授もおっしゃっているのですが、一度切り開いたブルー・オーシャンが永遠に続くわけではないんです。刷新し続けなければいけません。 斎藤さんがおっしゃるように、課題が解決されると市場を変えるのは、まさに「ブルー・オーシャンを刷新し続けよ」という、チャン・キム教授のメッセージと重なりますね。 課題が解決されると、次の課題を探して事業化していくというのは、イノベーションを起こす企業にとって不可欠な、基本的態度であるように思います。(対談後編へ続く)

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