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米国で1年後に「景気後退が始まる」危険性も? FRBは「高圧経済」のクールダウン図るが…

ZUU Online のロゴ ZUU Online 2018/06/14 17:15

6月のFOMC(米連邦公開市場委員会)で予想通り利上げが決定した。注目されるのは、意見の割れていた年内の利上げ回数が「あと2回(2018年中に計4回)」で決着したことだ。ウォール街の市場関係者からは「高圧経済が目前に迫ったことで、金融政策の手綱の引き締めにかかったようだ」との意見も聞かれるが、その舵取りは暗中模索となりそうな雲行きである。

今回はFOMCの結果を振り返りつつ、米経済が内包するリスクについてリポートしたい。

(画像=PIXTA) © 米国経済,見通し (画像=PIXTA)

■利上げ回数を引き上げたのは「たった1人」

3月のFOMCで「年3回」が見込まれていた利上げ回数も、6月は「年4回」となり、2018年中の利上げ回数が1回増えることとなった。ただし、FOMC参加者の金利見通し示す「ドットチャート」を見る限りでは、15名中1人が見通しを引き上げたに過ぎず、この3カ月で劇的な変化があったわけでもなさそうだ。

実際、ドッドチャートから年内の利上げ回数ごとの人数を調べてみると、3月FOMCでは現状維持が2名、あと2回が6名、あと3回が6名、あと4回が1名となっていた。それが、6月FOMCでは現状維持2名、あと1回が5名、あと2回が7名、あと3回が1名となっている。つまり、3月時点であと2回としていた6名のうち1人が6月のFOMCであと2回に「引き上げた」が、残り14名は見通しを一切変えていないのである。

ちなみに、6月のFOMC前にCNBCが実施したフェド・サーベイでも2018年中の利上げ回数は3.5回となり、3回と4回で意見が真っ二つに分かれていた。見解が分かれているのはFOMC内でもほぼ同じであることを理解する必要がある。

■FOMCで「年内の物価目標達成」を宣言

もう一つ、注目されるのはインフレ動向である。6月のFOMCの経済見通しによると2018年のPCE(個人消費支出)インフレ率は2.1%と3月の1.9%から引き上げられており「目標の2.0%」を上回ることが予想されている。

この予想について、ウォール街では市場ベースの期待インフレ率が上昇していないことから懐疑的な向きも少なくない。たとえば、米5年先5年物期待インフレ率(市場が予想する5年後から5年間の平均インフレ率)は6月11日現在で2.18%と2月2日の2.35%からやや弱含みで推移中である。同様に米10年債のBEI(ブレーク・イーブン・インフレ)率は2.13%で2月以降はおおむね横ばいで推移している。少なくとも市場のインフレ見通しからは上昇する気配を認めることはできない。ここにきて原油価格が反落していることも先行きのインフレ見通しを疑問視させる要因だ。

とはいえ、6月のFOMCで「年内の物価目標達成」を宣言したことはエポックメイキングな出来事であることは確かだ。

■ついに「高圧経済」が到来した?

2%の物価目標達成がなぜエポックメイキングなのか。それは「高圧経済」が到来したことを意味するからだ。高圧経済とは2016年10月にイエレンFRB議長(当時)の発言で注目された言葉であるが、金融政策的な観点からすると「緩和的な金融政策を粘り強く続ける」ことを示唆している。イエレン体制下のFRBは需要が供給を上回る状況を維持することを目指していた。具体的には労働市場のひっ迫や物価の上昇を容認し、景気が過熱した状態を維持するために「利上げを急がない姿勢」を堅持したのである。

つまり、イエレン体制では「インフレ目標」の達成には至らなかったが、パウエル体制になってようやく景気の過熱を確認できる高圧経済が訪れようとしているのだ。

高圧経済を目指す理由は「インフレ率の上昇には目をつぶることで経済が本来持っていた活発さを取り戻したいから」(ウォール街の市場関係者)と考えられている。背景には、リーマンショック後の大不況が余りにも深刻であったために「米経済が本来の力を取り戻すために、従来に比べ過剰とも言える金融緩和や財政支援をせざるを得なかった経験が学習効果となっている」(同)と指摘されている。

■景気のクールダウンは必要だが

ただ、気掛かりなのは高圧経済を達成した後の「景気の舵取り」である。6月のFOMCの経済見通しによるとインフレ率は2020年まで2.1%で安定することが見込まれており「2.0%を超えた水準でインフレ率を落ち着かせる考え」であることを暗に匂わせている。だが、現在の執行部はリフレ政策から始まって2%を上回る水準で物価を安定させた経験がなく、パウエル体制の「景気の舵取り」の成否には不透明感を残すのが実情だ。

最大の問題は、景気後退がいつ始まるかである。前回は2004年6月に利上げを開始し「3年6カ月後」の2007年12月から景気後退が始まっている。また、前々回は1999年6月に利上げを開始し「1年9カ月後」の2001年3月から景気後退が始まっている。今回は2015年12月に利上げを開始しており、今年6月で2年6カ月が経過、2019年後半には3年6カ月に到達し、前回を超える計算だ。利上げによる景気のクールダウンは必要かもしれないが、誤った舵取りでクールダウンが「進み過ぎてしまう」リスクも警戒する必要があるだろう。1年後に「景気後退が始まる」恐れもないとはいえない。(NY在住ジャーナリスト スーザン・グリーン)

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