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米市場の警告、その真偽と株価への影響

The Wall Street Journal. のロゴ The Wall Street Journal. 2日前 James Mackintosh

――著者のジェームズ・マッキントッシュはWSJ市場担当シニアコラムニスト

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 米国で市場が経済成長に赤信号を発している。投資家は再び米大統領選挙前の「ニューノーマル(長期にわたって低成長が続く状態)」に賭け始めている。

 こうした投資家の動きはまだ始まったばかりで、地政学的な問題やフランス大統領選の先行き不透明感からはっきりとはしていない。

 しかし、大統領選でのトランプ氏の勝利に対する興奮が冷め、世界経済の成長への期待が薄れていることを示す兆しが数多く見られ、投資家の間では株式市場が高値を維持するのは難しいのではとの見方も出ている。

 国債利回りの急低下は何かがおかしいことを如実に示している。それは、銅や鉄鉱石価格の急落という不吉な兆候や、株式市場の主役が好調な銀行株や割安なバリュー株から、公益株や不動産株のほか、バランスシートが良好で業績が堅調な企業に変わっていることによって裏付けられている。一方で、債券市場に織り込まれているインフラ期待が低下し、弱い経済指標を受けて経済見通しが引き下げられている。

 ハイテク株が再び買われていることも、投資家が景気低迷期でも成長を遂げることができる企業を探していることを示唆する。


 グッゲンハイム・パートナーズのスコット・ミナード最高投資責任者は「『ニューノーマル』は今も続いている」とし、投資家は(少なくとも一時は)トランプ氏が掲げた選挙公約が、米国が低成長から抜け出す助けになると思ったと指摘。「今のところ、公約の実現に時間がかかり、ほとんど果たされていない。そのことに市場が気づきつつある」と語った。

 こうした市場の前兆については2つの大きな疑問がある。1つ目はそれが正しいのかどうか。もし正しいのなら、その前兆が株式市場に破滅をもたらすかどうかだ。

 今回の前兆が間違っていると言えるケースの1つは、その要因が景気減速以外である場合だ。考えられる最も有力な要因は地政学的な問題だ。つまり、23日のフランス大統領選の第1回投票を前に、また北朝鮮問題に対する懸念から、安全な避難先に資金が流れているというものだ。これが、債券利回りをどの程度押し下げているは分からないが、債券と似ている公益株と不動産株が買われているのは、景気減速を裏付けているのはなく、債券利回りが低下しているためかもしれない。コモディティー(商品)価格の下落については別の説明が必要だが、たまたま時期が重なっただけかもしれない。

 経済が極めて好調な場合も、市場のメッセージは間違っていると言える。アトランタ連銀の1-3月期の経済成長率予測が2月初旬の3%超から0.5%に低下するなど、期待されていた景気回復が1-3月期に実現しなかったことを示す証拠が相次いでいる。シティグループが算出する「エコノミック・サプライズ指数(各種経済指標と事前予想との乖離(かいり)幅を指数化したもの)」も3月につけた3年ぶりの高水準から低下し、足元ではほぼマイナス圏で推移している。

© Provided by The Wall Street Journal.

 しかし、1-3月期のデータは従来、季節調整の誤差によって実態と食い違うことが多く、以前ほどではないにしても、聞き取り調査などの結果は好調だ。

 ホワイトハウスと米議会は今までのところ、景気に弾みをつけそうな減税やインフラ投資で進展を遂げていない。だがトランプ氏には柔軟に対応する以外の選択肢はなく、年後半には公約が実現するとみるのが妥当だ。

 JPモルガン・アセット・マネジメントのグローバル債券部門の最高投資責任者、ニック・ガートサイド氏は、株価の上昇と債券利回りの低下には矛盾があると指摘。だが、今年初めと同様に、連邦準備制度理事会(FRB)の利上げペースの加速によって債券利回りが上昇することで、この矛盾は解消されるとの見通しを示した。

 この1カ月、国債利回りの低下を受けて、住宅ローン金利も低下している。連邦住宅貸付抵当公社(フレディマック)は20日、30年固定金利型住宅ローンの平均金利が先週、4.08%から3.97%に低下したと発表した。昨年11月半ば以降で初めて4%を割り込んだ。


 2つ目の疑問は1つ目より難しい。過去5年間、債券利回りが低水準で推移している間は、株高と低成長は両立していた。株式市場は総じて、他に良い代替投資先はないとの見方に支えられていた。だが今後、景気敏感株はアンダーパフォームするかもしれない。フォード・モーター、ゼネラル・モーターズ(GM)、フィアット・クライスラー・オートモービルズ(FCA)は、債券利回りが3月半ばに低下し始めてから株価が10%近く下落している。

 欧州最大級の資産運用会社アムンディのビンセント・モルティエ副最高投資責任者は、債券利回りの低下は「株式市場に対してもっと慎重になった方がいいと告げている」と述べた。米国企業の業績への信頼から、投資家は押し目買いをしているが、モルティエ氏は株価の調整が大きなものになることを懸念している。

 低成長の中で低金利が続き、企業業績が脅かされないうちは、株主にとって何の問題もない。しかし経済がフル稼働に近づいているため、わずかであっても経済成長率が伸びれば賃金とインフレ率は上昇する可能性が高い。そうなれば、企業業績は悪化する一方でFRBはいつでも利上げする構えを見せることになるだろう。

 金利上昇と低成長は最悪の組み合わせであるため、投資家は市場の警告を真剣に受け止め、それが間違いであるよう願った方が良い。

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