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絶頂のゼネコンに起こりうる「稼げない未来」 利益はバブル期の2倍だが課題も山積

東洋経済オンライン のロゴ 東洋経済オンライン 2018/02/13 08:00 一井 純
好調はいつまで続くのか(写真:毎日新聞社/アフロ、デザイン:熊谷直美) © 東洋経済オンライン 好調はいつまで続くのか(写真:毎日新聞社/アフロ、デザイン:熊谷直美)

 「あまり大きな声では言えませんが、工事の依頼を断ることもけっこうありますよ」

 とあるゼネコン(総合建設会社)の幹部は明かす。

「神風が吹いた」

 スーパーゼネコンと呼ばれる大手のうち、上場している鹿島、大成建設、清水建設、大林組の前年度(2017年3月期)における当期純利益の合計は約3900億円。バブル期の恩恵があった1992年3月期の約1600億円の2倍以上だ。業界の頂点に君臨するスーパーゼネコンは言わずもがな、準大手でも最高益が続出している。

 きっかけは、2011年に発生した東日本大震災だ。東北地方での復興事業を契機に建設需要が急回復。さらに東京五輪の開催決定や景気の拡大などにより、民間企業に開発や設備投資の機運が広まってくると、ゼネコンは一気に息を吹き返した。『週刊東洋経済』は2月13日発売号で「ゼネコン 絶頂の裏側」を特集。一見順風満帆に見えるゼネコンの実情に迫っている。

 建設経済研究所の試算によれば、建設投資は2010年度の41兆円から2013年度には一気に51兆円へと回復し、その後も50兆円を上回って推移している。とはいえ、ピークだった1992年の84兆円と比べると、市場は4割も縮小した。にもかかわらず、バブル期を超える利益を上げられているのはなぜなのか。

 最大の理由は、工事の採算改善だ。冬の時代が長く続いた建設業界。かつては「社員や下請け企業を遊ばせるよりマシ」と赤字覚悟での受注が当然のように横行していたが、今は「割に合わない工事は受けない」と態度が豹変した。

 バブル崩壊後の建設不況のあおりを受けて、ゼネコン各社は規模の縮小を余儀なくされ、建設業の就業者数もピークから約3割も減っていた。そこに降って沸いたような好況が訪れた。技術者をフル稼働させても受注しきれないほど案件が転がり込み、採算の良い案件を選んで受注できるようになった。

 東日本大震災前は大手でも4%台にまで沈むこともあった売上高総利益率(粗利)。それが今や2ケタ以上が当たり前。過去に受注した赤字工事の完工も相次ぎ、利益を押し下げる要素が消えたことも追い風だ。大成建設や鹿島の土木部門など、10%台後半や20%の大台に乗るゼネコンも出てきている。無理に受注しなくても過去にない好業績を上げている。

 割を食うのは発注者だ。ゼネコン同士を価格競争させていた民間企業が、今度はゼネコンに足元を見られる格好となり、急いで建設したいなら「さらなるコストアップをお願いせざるを得ない」(大手ゼネコン首脳)など、力関係が完全に逆転した。

 「建設費の高騰を受けて、自社の利益を削った」(大手マンションデベロッパー)という嘆きの声も聞こえる。だが「ゼネコン各社は過去にさんざん赤字を出したのだから、これぐらい稼いでも文句は言われないはずだ」と大手ゼネコン幹部は意に介さない。

 手持ちの工事量は過去最高水準で、一部の案件は五輪後まで着工を延期しているようだ。当面食いっぱぐれる心配はないと考えているのか、「私たちは『活況は五輪まで』などと言った覚えはない」(大手ゼネコン幹部)という強気の発言も相次ぐ。

先は意外に長くない?

 とはいえ、足元では変化の兆しが見て取れる。

 ゼネコン各社の業績の伸びは鈍化しており、今月より順次発表されている2018年3月期第3四半期決算でも、減益となった企業が相次ぐ。「前期までは証券アナリストからの問い合わせがひっきりなしだったが、今期からは一気に減った」(中堅ゼネコン経理担当)。

 地方に地盤を置く中堅ゼネコンの業況はあまり良くない。地域別の建設投資を見ると、大きく伸びているのは南関東(埼玉、千葉、東京、神奈川)のみ。再開発や五輪といった大工事も都市部に集中している。

 「地元では案件が少ないため首都圏に進出したが、ほかの地域の同業者も同じことを考えて進出してきている。そのため競争が激化している」(北陸地方を拠点とするゼネコン)。五輪関連の需要が一巡すると首都圏の建設投資は鈍ることが予想され、なりを潜めていたダンピングが始まる可能性は否定できない。

 足元ではリニア中央新幹線や東京外かく環状道路(外環道)の工事をめぐる談合疑惑に揺れ、建設現場の高齢化や大量引退も控える。長期的に見れば国内の人口は減少していき、それに比例して建設市場も縮小するため、建設以外の収益柱の育成も急務。我が世の春を謳歌するゼネコンだが、解決するべき課題もまた山積みだ。

 週刊東洋経済2月17日号(2月13日発売)の特集は「ゼネコン絶頂の裏側」です。

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