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良質な顧客体験はAIには生み出せない

ダイヤモンド・オンライン のロゴ ダイヤモンド・オンライン 2018/11/09 06:00 大坂祐希枝

今、顧客減、会員減に悩んでいる企業は多い。中でも定額課金=サブスクリプションモデルで利益を上げている場合には、会員取得ばかりに目を向けて、離れてしまう顧客には、なかなか有効な手を打てない現状だ。元WOWOWグループ初の女性取締役であり、顧客を引き留める「リテンションマーケティング」で実績を上げた大坂祐希枝氏が初の著書である『売上の8割を占める 優良顧客を逃さない方法 利益を伸ばすリテンションマーケティング入門』を発売。この連載では、この著書から一部抜粋してご紹介する。

コミュニケーションを深め、良い顧客体験に導く

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前回は、時代劇が好きな60代の男性に、番組を見た時の気持ちをきっかけに、おススメ番組を検索する「気持ちデータベース」を使って、洋画を勧めてリテンションを成功させた実例をご紹介しました。

私たちがアマゾンで本を購入する際に表示される、「この本を買った人は、こんな本も買っています」というリコメンドシステムは、類書を探さないで済んだり、意外な本が紹介されたりして「すごいな」とは思います。

ですが、もっとすごい機能のシステムがでてきたら、私ならそちらに転向するかもしれません。

アマゾンのシステムに感じるのはコンピューターが介在したことによる利便性の高さであり、そのシステムを通して企業との間にコミュニケーションが生まれているとは感じません。

自分に合っているリコメンドがあれば購入の可能性が高まりますが、一方でコンピューターを通して企業に自分の嗜好を読み取られたと感じて、今後の利用を少し控えようかと思ったりする人もいるでしょう。

つまり自分の好みにストライクな商品をコンピューターに勧められても、たとえ勧められたものに新鮮な発見があっても、そこにコミュニケーションが発生していると人は感じていないので、体験価値につながりにくいのです。

人と人のコミュニケーションの意味は、人が存在するからこそ顧客の体験価値が上がる、つまり人が存在することによるプレミア感だと私は思います。

この点からも、人を介在させることの意味、人とコンピューターの使い分けの大切さがわかります。

「赤穂浪士からロッキー」の顧客のやりとりが示しているもう一つのポイントは、顧客に「君は(顧客のことが)分かってるね」と言われていること。つまり、オペレーターとのコミュニケーションが、「WOWOWは自分の好みを知っていて、それに合う番組を提供する」という評価に繋がっていることです。

人が、人や企業にロイヤリティを感じる際の重要なポイントは「自分のことを分かってくれる」だと言われています。

人に対してであれば「自分の気持ちを分かってくれる」「自分の立場を分かってくれる」でしょうし、企業に対しては「自分の好みを知っている」「(だから)いつも自分に合う商品やサービスを提供してくれる」ということになります。そして、優良顧客を増やすためにはロイヤリティを高めることが必須なのは言うまでもありません。

顧客とコミュニケーションを深め、良い顧客体験に導く。この流れが作られないとロイヤリティを高めることはできず、優良顧客化も難しくなります。優良顧客を増やしていくためにも、今後、人が介在するコミュニケーションの必要性は、ますます高まると言えるでしょう。

システムの向こうにいる生身の人間を感じさせる

では顧客の体験価値を上げロイヤルティを向上させるためには、どのポイントに人を介在させ、その存在を顧客に感じてもらえばよいのでしょうか。

購入や利用開始は、できる限りシステム化することが必要です。新規の顧客をスムーズに流入させる必要があるからです。

しかし、商店街の八百屋や魚屋で店の人に新鮮な食料品の見分け方を教えてもらえる、というような購入時の付加価値は、生活者にとっては見逃せない魅力です。

商店街の八百屋や魚屋はすべてを人が行っているから、当たり前にこうした付加価値がついてくるわけですが、システムを通しても、部分的に、裏側で顧客の動きを見つめている人がいることを感じさせるコミュニケーションは可能です。

ホームページ上でのFAQ以外に、実在する社員に質問できるサービス窓口を設けたり、SNSの公式アカウントで担当者がメッセージを発信したりしている企業はそれを狙っています。システムを通していても、このようなサービスの向こう側には、顧客が人の存在を感じるからです。

そして生身の人間が存在することで人件費を補って余りある効果が得られる場面には、人を介在させることが重要です。WOWOWの解約リテンション施策は、システムだけでは得られない効果が人の介在によって得られる最たる例だと思います。

顧客にとって不愉快なやりとりは、人でもコンピューターでも当然論外ですが、「赤穂浪士からロッキー」の顧客のように、上質な顧客体験に導き、ロイヤリティが感じられるコミュニケーションは、人間が介在しないとできないと私は考えます。

リテンションの場面でこうした体験をし、解約せずに留まった顧客は、他の同業サービスに簡単に乗り換える可能性が低く、その後はよほどの事情がない限り解約しません。

解約時にも良い顧客体験をしてもらうことが大切

WOWOWの解約は長らく電話でないとできませんでした。(現在はWOWOWのサイトにWEB会員の登録をしている加入者限定でオンラインでの解約を受け付けています。)

オペレーターと話さなければ解約できないことを煩わしく感じる人もいます。しかし、オペレーターは嫌がる方にはしつこくリテンションすることはありません。むしろ顧客の気持ちに添って解約の手続きをし、加入期間が数年間にわたる顧客には「〇〇様、××年の長い間ご視聴いただきまして本当にありがとうございました」と感謝を伝えます。

ツイッター上には解約時にオペレーターにこう言われたことを、「ぐっときた」「また状況が許せば加入したいと思った」とつぶやいている例がたくさんあります。システムで解約受け付けをした場合にはこうした気持ちにはなりにくいのではないでしょうか。

解約時に良い顧客体験をしてもらうことも、人と人のコミュニケーションだからできることで、結果的にロイヤルティ向上に寄与していると言えるでしょう。

続きは本書でお楽しみください。

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