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赤字の都バス、「稼げない路線」は何が違うのか 収支で見る、知られざる都バスの正体

東洋経済オンライン のロゴ 東洋経済オンライン 4日前 一井 純
品川の入国管理局に向かう「品99」路線は年間2億円もの黒字を稼ぎ出す、高収益路線だ(記者撮影) © 東洋経済オンライン 品川の入国管理局に向かう「品99」路線は年間2億円もの黒字を稼ぎ出す、高収益路線だ(記者撮影)

 東京都バス、最長路線の「梅70」。都バスファンなら1度は乗ったことがある長距離路線だ。青梅駅にほど近い青梅車庫前から、東京都小平市の花小金井駅北口まで約30キロメートルを、2時間弱をかけて走っている。

 実際に乗ってみると市役所や病院など一部の停留所は乗降客でにぎわうものの、大半の区間では空席が目立つ。この路線は都バスでは最も赤字が大きく、2015年度で2.1億円もの赤字となっている。

運賃だけでは長距離路線を支えられない

 都バスを運行する東京都交通局が昨年10月に公表した資料によると、区から委託されている2路線を除く127路線のうち、7割以上の93路線が赤字だ(2015年度)。

 東京都という日本最大の人口密集地を走るにもかかわらず大半の路線が赤字なのは、23区内ならどこから、どこまで乗っても一律210円(ICカードは206円)という料金体系にある。

 そのため、赤字路線の上位に営業キロ数の長さが際だっている。これは距離が長いほど、利用者の少ない区間を抱えるという理由に加えて、コストに見合った乗降客が確保できず、運賃収入では路線を支えられないことが大きい。

 「梅70」はコスト回収のため、始発から終点までの運賃は540円(ICカードは536円)。1日当たりの利用者は2237人にとどまる。沿線の小平や青梅など4市1町が赤字額の3分の2を肩代わりして、何とか存続させているのが現状だ。

儲かるのは鉄道の"空白地帯"

 一方、黒字路線は首位の「東22」を筆頭に、同2位の「新小21」、同4位の「都07」など、江東区や江戸川区など都内東部を走っているのが特徴だ。この地域は横の動きである東西にJRや地下鉄が通っているが、縦をつなぐ南北の路線に乏しい。そのため都バスの利用者が多く、高い収益につながっている。

 特に、朝方の錦糸町駅には、3分に1本ものペースで都バスが現れる。だが、停留所にはそれ以上のペースで乗客が次々と列を成していた。年間2億円もの黒字を稼ぎ出す「東22」はここから出発する。

 朝方は通勤・通学客で混み合うほか、日中でもショッピングモールや運転免許試験場を目指す客が乗りこみ、車内は乗客の体が触れ合うほど混み合う。

入国管理局へ向かうバスは満員状態

 黒字路線には「短い距離でしっかり稼ぐ」路線が多いのも特徴だ。黒字7位の「田87」や同10位の「都01」は短い営業キロ数ながら、沿線には学校や企業、病院をはじめとする施設が建ち並び、全区間にわたって利用者が一定数存在する。

 黒字路線の中で唯一の例外が、黒字3位の「品99」だ。沿線には目立った観光地や企業がないにもかかわらず、朝のラッシュ時はバス停に長蛇の列ができるほどの盛況で、あふれそうな乗客に対して職員が乗降制限をかけるほど。

 実は、ほとんどすべての乗客の目的地は東京入国管理局だ。車内では外国語が飛び交い、入国管理局に着くとおよそ50人もの乗客が一斉に下車し、それからバスは終点までもぬけの殻となる。

 赤字路線や定額運賃から都バス事業は56年も連続の営業赤字が続いている。公共交通という手前、「不採算路線でも利用客がいるかぎりは存続させる」(交通局自動車部の島崎健一事業改善担当課長)からだ。

 ただ、さすがに利用率の低迷から存続の危機に立たされる路線もある。青梅駅近郊の裏宿町と高水山の登山口付近の上成木をつなぐ、「梅76甲」だ。

存続の危機にある「梅76甲」

 運行本数は1日5本。沿線の大部分を占める成木地区の自治会が2014年に行った調査によれば、同地区での1日の利用者はわずか19人。

 近隣住民も、「移動手段はほとんど車。バスに乗る人は登山客くらい」と打ち明けるという路線だ。

 2011年に発足した「青梅市公共交通協議会」では、この路線の存続が議論されている。

 協議会の座長を務める日本大学理工学部の轟朝幸教授は、「路線があるとないとでは、住民の安心感や利便性がまったく異なる」と不採算路線の存在意義を強調する。他方で、「路線を存続させるなら、行政はその理由を市民に説明し、理解を得る努力が必要だ」と説く。

 赤字の路線バスを、どこまで地域住民や自治体が支援するのかに揺れるのはどこの自治体も同じこと。大阪市では今年3月、市営バスの民営化が決定したほか、山口県宇部市では先月、市営バス路線のうち7区間の廃止が決定している。

 公共交通では鉄道にばかり注目が集まってきた。だが、住民の移動手段を支えるインフラには路線バスも含まれている。都バスですら赤字に陥っている状況に、もう少し光を当てるべきではないのだろうか。

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