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「セブン銀行」が明かすAI実証実験の舞台裏 導入の秘訣は「悩まずしぶとく、やってみる」

東洋経済オンライン のロゴ 東洋経済オンライン 2018/05/15 17:00 『Ledge.ai』編集部
セブン銀行常務執行役員セブン・ラボ担当の松橋正明さん(写真:Ledge.ai編集部) © 東洋経済オンライン セブン銀行常務執行役員セブン・ラボ担当の松橋正明さん(写真:Ledge.ai編集部)

 みなさんご存知のセブン銀行、実はかなりAI活用を進めています。

 既にプロジェクトは複数進行していて、長い期間のものだと既に2年も継続しているそうです。

 中には、既に実証実験から本格導入検討へ進んでいるプロジェクトも。うまくいく秘訣は、実証実験に厳しい期限は設けず、トライアンドエラーを繰り返すこと。

 今回は、セブン銀行でのAI活用の取り組み・AI活用で気をつけるべきポイントをお聞きしました。

本格導入を判断するフェーズの実証実験も

 ――セブン銀行では、どんな場面にAIを活用しているのでしょうか?

松橋:当社はATMサービスを主な事業としています。ただ、ATM自体へのAI搭載というよりかは、どちらかというと裏方のオペレーション業務でのAI実証実験を進めています。現在進行しているものは、大きく2つありますね。

実証実験をおこなっているのは、大きく下記の2つとのこと。

・ATMへの現金供給予測
・ATMの故障検知予測

 1つ目は、ATMにどれほど現金を入れておけば良いかを、AIによって予測するというもの。

 こちらは2年ほど前から開始し、データは5年分のATMのデータを使用。去年の夏ごろには精度はまだまだだったそうですが、現在はかなり精度が向上してきて、いよいよ本格導入を判断するフェーズとのこと。(2018年3月現在)

 2つ目は、ATMのセンサー情報から故障を予測し、適切なタイミングでのメンテナンスができるよう実証実験をおこなっているそうです。

 既に安定した精度を出し、本格導入の判断をする段階まで進んでいるものもあるとは驚き。

 現在は、チャットボットのプロジェクトも進んでいるようで、そちらではディープラーニングの技術を使用しているとのこと。松橋さん曰く、FAQなどのマッチングに関しては、一般的な機械学習よりディープラーニングのほうが精度が良いようです。

 ――それぞれ、どんな目的を持って行ったのでしょうか?

松橋:チャットボットは、コミュニケーションやQA手段の多様化のための自動化という要素が強いですね。ATMのオペレーションに関しては、現状より高度化、省力化を図るというのが大きいです。保守に関しては、ゆくゆくはマニュアルレスにしたいと思っています。うまくいけば、大きな工数削減に繋がるので、4〜5年のスパンで考えて研究を続けていきます。

AI活用に対して、とても積極的ですね。

 よく、数ヶ月で精度がうまく出なかったので実証実験を止めてしまう、というケースをよく聞きますが、4〜5年先まで見据えているのはかなり長いと思いました。

なぜ積極的にAI活用に踏み込めるのか 

 ――なぜそこまで実証実験に取り組めるのでしょうか?

松橋:当社の経営理念に、“技術革新の成果を取り入れる”という項目があります。それが社員全員の共通言語になっているので、新技術への障壁は一切ないといえるでしょう。

松橋さん曰く、絶対にできるという確証がなくても「やってみよう」という空気になるのだそうです。

 松橋さんも自らコミュニティイベントに出向き情報収集。オープンイノベーションという形でいろんな企業とコラボをし、実証実験を開始したのだとか。驚きのフットワーク・文化です。

 ――実証実験で難しいのが“評価”だと思います。ビジネス的な観点での評価・期限はどのようにしているのでしょうか?

松橋:ある程度の目標はありますが、とくに締め切りなどは設けていませんね。

――それはかなり寛容ですね! なぜそのような体制にしているのでしょうか?

松橋:実証実験の結果は、すぐには出ないです。だから、しぶとく何年もやっていくしかないですね。一回やってみただけで、諦めないことが大事だと思います。

なるほど。確かに、最初から完璧な精度を出してくれるAIなんてないですもんね。

 ――そのほか、これからAI活用をしたい企業の方々へアドバイスはありますでしょうか?

松橋:悩まずやってみること。ただし、実現したい未来像をしっかり描き、そこに向けて挑戦し続けることだと思います。成功も失敗も、とにかく経験することでしかわからないですから。

すべて相手まかせではなく、自分たちでもトライアンドエラーをしていく必要もありますね。

 詳しくお話を伺うと、自分たちでもデータの精査などをおこない、AIのクセや特殊性に順応するよう心がけているとのこと。今後は内製化をさらに進め、より経験を積める環境をつくっていくそうです。

 悩まずトライアンドエラーを進める文化、我々も見習いたいです。

次なる目標は、次世代ATM

 ――お話ありがとうございました。最後に、AIをやってみて“良かったこと”を教えていただけますでしょうか?

松橋:やっぱりワクワクすることですかね! さすが第4次産業革命というだけのことはある、と思いました。現在、メインのプロジェクトで動いているのは従来の機械学習技術ですが、今後はディープラーニングを活用して、もっと革新的なことをやっていきたいです。

そういったシンプルな動機も大事ですよね。今後の計画としては、利用者により良い体験を提供できる、次世代ATMの開発に取り組んでいくそうです。

 現在は、直接目に見えづらいオペレーション領域のみですが、目に見える形で世に出てくるのも大変楽しみです。

 現在、なかなかAI活用に踏み出せない企業が多いと思いますが、経験・知見の蓄積を優先し、とにかくトライアンドエラーを進めるセブン銀行の体制は大変参考になりました。読者のみなさまも、長期スパンで・失敗を恐れない前提で、体制づくりを考えてみてはいかがでしょうか。

(取材:岡田孟典)

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