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「デジタルプラットフォーマー」とは一体何者か 「GAFAなど」と一括りにするのは大問題だ

東洋経済オンライン のロゴ 東洋経済オンライン 2019/03/16 08:20 本田 雅一
グーグル、アマゾン、フェイスブックを分割するとの公約を打ち出したアメリカ民主党のエリザベス・ウォーレン上院議員。写真は2018年11月、ボストンのフェアモントコプリープラザホテルにて(写真:時事通信) © 東洋経済オンライン グーグル、アマゾン、フェイスブックを分割するとの公約を打ち出したアメリカ民主党のエリザベス・ウォーレン上院議員。写真は2018年11月、ボストンのフェアモントコプリープラザホテルにて(写真:時事通信)

 7月に控えるフランスでのG7(先進7カ国首脳会議)を控え、昨年より繰り返し指摘されている“デジタルプラットフォーマー”と呼ばれるIT巨大企業に対する規制議論が活発になっている。

 G7でフランスは、議題の中に“GAFA規制”を盛り込む方針だという。

 しかし、繰り返し報道されている“GAFA”という取り上げ方に、違和感を覚えている読者もいるのではないだろうか。GAFAとして名指しされている企業は、いずれも異なるビジネスモデルの企業だからだ。

 今一度、GAFAに関する議論を確認してみよう。

高まるデジタルプラットフォーマーに対する規制圧力

 GAFAに関しては日本でも昨年来、総務省、経産省、公正取引委員会などで議論されている。

 2月13日に開催された未来投資会議では、アップル、グーグル、アマゾン、フェイスブックなどを“デジタルプラットフォーム企業”と定義付けたうえで、個人の行動情報の独占や市場での優越的な地位の乱用を防止するための枠組みを策定するため、省庁の垣根を越えた専門組織を編成することが決められた。今後、市場での競争環境を公正に保つためのガイドラインについて議論される予定だ。

 一方、アメリカでは2020年の大統領選へ出馬を表明している民主党のエリザベス・ウォーレン上院議員は、グーグル、アマゾン、フェイスブックを分割するとの公約を打ち出した。ウォーレン議員の解体計画は、ブログという手段で3月8日に発表された。

 このブログでは、年間の収益が250億ドル以上の大手ネットワークサービス事業者を「Platform Utilities」と定義し、自らは自社のプラットフォームに参加できないようにする法律を施行するプランが主張されている。

 プラットフォームを提供する企業が、自らのプラットフォーム上で事業をすることで競争環境が歪められているという意見だ。そのうえで、プラットフォーマーが競合となる企業を買収していくことで肥大化していくことを防ぎ、さらには解体することで反競争的な環境を解消していくという。

 ブログではアップルについて触れられていないが、ネットメディアThe Vergeの質問に対し「アップルもiTunesのAppStoreが解体の対象となる」と話しており、(iOS機器という)プラットフォームを持つのであれば、アプリストアは分離せねばならないという考えを示した。

 ネットワークサービス事業者だけではなく、ハードウェアの製造販売を主業務とする企業であっても、ネットワークサービスを通じて囲い込んでいる場合は、中小のイノベーティブな企業の成長を阻害しないためにも分離したほうが、アメリカ企業の健全な発展が可能という意見だ。

 同様の動きは同時多発的に起こっており、インターネットを通じてプラットフォームをグローバルに広げる各社に対する課税方法などに関しても、さまざまな議論が交わされている。

 事業拠点や売り上げを計上している地域からの収益に対する課税といった観点での議論もあるが、顧客の行動データを元に事業価値を高めている企業は、データを収集している地域ごとに税が分配されるべきとの意見もある。

 しかし、ここではそうした議論から目線をいったん外し、デジタルプラットフォーマーと言われている企業が、それぞれどのような企業なのかをおさらいしてみたい。“GAFAなど”とひとまとめに伝えられるほど単純ではないことがわかってくるはずだ。

 “善悪”といった議論をまずは脇に置き、各社がどういう会社であるかを改めて考えてみるべきだろう。

「AIの会社」へと発展しようとしているグーグル

 改めて言うまでもなく、グーグルは検索をはじめとするネットワークサービスを出発点に、閲覧者の行動やコンテンツの内容に連動して掲出するネット広告を変える「行動ターゲティング」や「コンテンツ連動」の広告で伸びた企業だ。

 ネット検索からは、具体的な各サイトへの流れ、あるいは滞在時間や戻って再検索で別のサイトに行くパターンなど、さまざまなユーザーの行動が反映される。近年は検索結果に対して、レストランなどの予約、移動ルートなど、検索結果から即座にサービスや商品へとつながる動線も提供しており、それらの情報を広告事業に生かすことで成長してきた。

 検索市場2位のMicrosoft「Bing」は2.4%にすぎず、92.4%はグーグルである(StatCounter調べ)。

 そのグーグルは現在、AIの会社へと発展しようとしている。10億以上のユーザーが存在するサービスを、グーグルは「Google Search」「YouTube」「Gmail」「Google Map」など8ブランドも保有しているため、データ収集の面で高い優位性を持っており、それを深層学習の研究開発に生かすことができるためだ。

 ネット上で使われる多くの個人向け情報サービスを無償提供し、そこでの行動について相関性検出しながらデータが抽出されており、全世界で流通する約半数のスマートフォンはグーグルとの親和性が高い「Android」。

 収益の約9割が広告であり、高度にシステム化されたネット時代の広告代理店というのが、グーグルの実態と言えるだろう。

 GAFAの中で、最もわかりやすいのがアップルだろう。アップルはコンピューターを元にした消費者向け製品を販売する会社だ。自社が販売するコンピュータ製品(広義にはiPhone/iPad/iPod/アップル TV/アップル Watchはすべてがパーソナルコンピューターだ)の価値を高めるため、アプリや各種コンテンツを流通させるネット上のマーケット(iTunes StoreやAppStore)を運営し、その売上比率は上がってきている。

 またそれらのコンピューター製品がうまく連動するよう、各種OS(基本ソフト)を開発して組み込み、そこに開発者を呼び込んでいる。そうした意味ではMicrosoftやグーグルとも比較されやすいが、事業全体の枠組みを見ればハードウェアメーカーであることは明らかだろう。

 なお、前述のウォーレン議員のようにAppStoreをアップル自身が管理することに対する疑問の声が出ているのは、AppStoreの売り上げが過去8年間で累計1200億ドル(2019年1月時点)と大きく成長しているからだ。このうち約700億ドルは、直近の2年半でたたき出した数字であり、アップルはAppStoreの売り上げから3割を手数料として徴収している。

 このことが非競争的という指摘につながっているが、一方でAppStoreがアップルの販売するハードウェアと一体化されたサービス(製品の一部とも言える)であり、またセキュリティー管理上、重要な役割を持っていることは考慮せねばならない部分だ。

個人に近付いたターゲットの絞り込みを行えるフェイスブック

 フェイスブックは大学キャンパス内の社交(ソーシャル)をネットワークサービスという仮想世界に置き換えて、個人間の関係性を強化することを目的に開発されたシステムだ。このため、よく知られているように“実名”による登録が求められており、友人関係も関係の近さや属性に応じて多重に管理し、相互のコミュニケーションが行えるよう工夫されている。

 またフェイスブックを基本として、個人間あるいは特定グループ間の連絡用に音声や文字での情報交換を行える「Messenger」も用意し、企業向けには企業アカウントや行動ターゲティング広告の販売を行っている。

 売り上げそのものはグーグルに遠く及ばないものの、“実名登録”を基本として現実社会でのつながりが強い友人同士の交流における行動を分析することで、精度の高い行動ターゲティング広告を打てることが彼らの強みだ。

 グーグルが大まかな人の興味の流れを把握して広告のターゲットを絞るのに対して、もっと個人に近付いたターゲットの絞り込みを行える。2017年度の406億ドルという売り上げのうち、およそ98%が広告によるものだった。2016年度に対する成長は47%増、純利益は56%増で159億ドル、営業利益率は50%に達する。

 年齢、性別、交際ステータス、学歴、職場、職歴、役職、イベントへの参加履歴や訪問するお店、趣味趣向などの情報が実名と連動し、興味の対象に対して「いいね!」が押されることで単なる属性値を超えた“ひととなり”を推測できるためだ。

 しかも利用者はグローバルで22億人に達する。

 アマゾンが“ネットを通じた小売り”を主業務としていることは明らかだが、俯瞰してみるとやや異なる表情が見えてくる。その最も大きな特徴はキャッシュフローだ。例えば純利益に関して言えば、彼らはずっと長い間、わずかな利益、あるいは少しばかりの損失を出し続けてきた。

 近年、その状況も少し変化してきているが、利益は基本的に出さない。その一方で、営業キャッシュフローは爆発的に増え続けている。

 書籍販売から始まったアマゾンの本来のサービス属性は、“スペックだけで取引できる、品種の多い商品ジャンル”に絞り込んだうえで、実店舗では実現できない幅広い取り扱い品目を実現できる、ネット販売の長所を前面に押し出した小売業者だった。その最も典型的なジャンルが“本”であり、本に続いて扱いを始めたDVDやCDだったわけだ。

 では現在のアマゾンはといえば、ホールフーズなどリアル店舗での展開を除いてネットでの小売り事業者としての戦略は、営業キャッシュフローを最大化する中で顧客の購買行動、嗜好性に関する情報を集め、適切なリコメンド(オススメ)を行う仕組みを、サードパーティーに提供することで成長する会社と言える。

 アマゾン自身が販売する商品で利益を追求しなくとも、お得に好みの商品を見つけやすいとなれば、小売りサイトとして魅力的となり、顧客が集まる。そのうえで、顧客が気持ちよく買い物をするための分析データを活用し、他社に販売機会を提供するマーケットプレイスで収益を上げ始めている。

 すなわち、自社で販売する商品の営業利益はほとんど出さずにイーブンとしながら、消費者にとって心地よい買い物の場を作り出し、そこに“マーケットプレイス”という名のテナントを呼び込んで利潤を上げるのが現在のアマゾンと言えるだろう。

 アマゾンは消費者の行動を極めて細かく分析しており、商品を購入するに至るプロセスだけでなく、「購入しなかった」情報も参考にしている。例えば、何度もアクセスし、明らかにある属性の製品を購入しようとしているのに、結局は購入しなかった。そんな購入しなかった人が、次回、同じ属性の製品を購入した。では、どんな条件が変化したのか?

 アマゾンはデータを外部に販売したり、広告を通じてクライアントに価値を提供したりはしないものの、プラットフォームから得られる情報を元に“場”を作り、買い物をする“場”を他社に提供することで価値を創出している会社だ。

成長すればグローバルなプラットフォーマーになる

 筆者は各社のビジネスモデルに関して批判しようとは思わない。フェイスブックのマーク・ザッカーバーグCEOが言うように、無料でサービスを提供しているのだから、広告価値を高めることに注力することは悪ではないというのは、ある意味正しい意見なのだろう。

 しかしプラットフォーマーと呼ばれる企業も、それぞれに本業があり、なぜプラットフォーマーになっているのか。その事業の本質は何かを見極める必要はある。“デジタルプラットフォーマー”あるいは“巨大IT企業”といった曖昧な括りで見ていると、対処や判断を誤ることになるだろう。

 もちろん、筆者の各社に対する見解が、その企業の100%を表現しているわけではない。例えば、アマゾンはネットワークサービス事業者としての効率化を図るため、ネットでの小売りサービスを充実させるためのサーバーをクラウド型のサービスとして提供してきた。今やその規模は副業とは言いがたい規模に達している。

 いずれにしろ、ネットワークサービスを提供する企業は、成長していく中でグローバルの企業になっていく。質の高いインターネットサービスは、国をまたがって使われていくものだからだ。成長していけば、いずれグローバルに広がり、プラットフォーマーと呼ばれるようになっていく。

 これからG7に向けて、さらに議論は深まっていくだろうが、対象企業について大まかに“これらの企業”と見るのではなく、個々の事業が何かを見極めるようにしたい。

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