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「超高速複合機」は、業界地図を塗り替えるか エプソンが新技術で頭打ち市場に殴り込み

東洋経済オンライン のロゴ 東洋経済オンライン 2017/04/12 遠山 綾乃
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 成熟した複合機業界で、セイコーエプソンの新製品「LX-10000F」がそのパワーバランスを崩すかもしれない。

 現在、オフィス向け複合機は、リコー、キヤノン、米ゼロックスグループなどが群雄割拠。商品はすべてレーザー方式だ。そこに、セイコーエプソンは5月、最高毎分100枚という高速で印刷できるインクジェット方式の複合機を投入する。

 これまでのインクジェット方式は、インクを紙に吹き付けるヘッドのサイズが小さく、印刷のために紙面を往復させる必要があった。そのため、安価ではあるが、印刷に時間がかかるという弱点があった。そこでセイコーエプソンは、ヘッド部分を紙幅いっぱいに広げることで紙面を往復する時間を短縮することに成功、高速化を実現した。

超高速でもコストは変わらず

 現在主流のレーザー方式は成熟した技術であり、もはや格段の性能向上は見込みづらい。そのため先行する各社はサービス面で勝負している。たとえばコニカミノルタは、米マイクロソフトなどと連携してオフィスのITインフラを統合するシステムを提供。複合機だけではなく、顧客のオフィス全体の効率化を請け負う。

 一方、エプソンはハードウエアの商品力を重視する傾向が強い。同社の碓井稔社長は、1980年代後半のインクジェットヘッドの開発における立役者である。2016年の東洋経済の取材に対しても、「(複合機ビジネスの)本質は、より高い値段で扱ってもらえて、為替に応じて値上げできる、競争力のある商品を作ることだと考えている」と話している。碓井社長のこうした姿勢が、エプソンの技術重視の商品展開につながっている。

 LX-10000Fも、ハードの魅力そのものを顧客に訴求する。メリットは印刷の速さ、ランニングコストの安さだ。複合機は、毎分30枚未満が低速機、毎分40~44枚が中速機、毎分45枚程度以上が高速機の目安とされる。毎分100枚印刷できるLX-10000Fは"超高速"複合機といっていい。にもかかわらず、ランニングコストは他社の高速機と同水準だ。

 ランニングコストの安さは、インクジェット方式は部品数が少ないという構造上のメリットに起因している。これは製品の販売を担う代理店にとってもプラスとなる。これまで扱ってきたレーザー方式と比べて交換部品数が少なく、その分修理に行く回数が減り、人件費を抑えられるからだ。

 レーザー方式は構造的に内部が熱くなるためメンテナンスに手間がかかるが、インクジェット方式は紙が詰まる程度の故障であれば自力で解決できることもある。

新規参入で業界秩序を崩せるか

 5月の発売開始を前に、LX-10000Fは病院、官公庁、流通など紙やチラシの印刷量の多い業態から引き合いが来ているもようだ。

 エプソンが従来から強みを持つ卓上サイズの家庭用プリンタは市場が先細っている。エプソンが持つオフィス向け複合機のシェアは、9000億円程度の国内市場において1%未満にすぎないが、未開拓の領域に食い込むことで収益を確保したい考えだ。レーザー方式が主流の市場に、得意のインクジェット技術で乗り込む。

 今回の発表では同時に、従来より展開していた低速複合機の新モデルも発表された。インクジェット方式の強みを生かし、低速機では同じスピードのレーザープリンタと比べて「コスト2分の1」、高速機では同じコストのレーザー品と比べて「スピード2倍」で印刷できる。高速機の新たな投入でラインナップを拡充し、顧客のニーズに合わせた販売が可能になった。

 先行各社は顧客を囲い込んでおり、切り替えのハードルは低くはない。だがインクジェット方式の速さ、安さというメリットが認識されれば、複合機市場の地図が塗り替えられる可能性もある。

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