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「電動自転車」の超進化が子育てママを救う理由 10万円超の高級品でもリピート需要が活発

東洋経済オンライン のロゴ 東洋経済オンライン 2019/03/21 18:00 圓岡 志麻
子どもを乗せて走る電動自転車は今や子育て用品の1つとして必需品だ。今どきの電動自転車の人気車種や特徴を紹介(写真:ucchie79/PIXTA) © 東洋経済オンライン 子どもを乗せて走る電動自転車は今や子育て用品の1つとして必需品だ。今どきの電動自転車の人気車種や特徴を紹介(写真:ucchie79/PIXTA)

 今や街中でも珍しくなくなった電動自転車。特に、子どもを1人ないし2人前後に乗せた女性が、ちょっと車体の低い自転車で通る姿をよく見かけるようになった。子どもや荷物を乗せて、坂道などでもラクに移動ができる電動自転車は、小さな子どもがいる家庭の必需品となりつつある。

 電動自転車はペダルをこぐ力をモーターで補助しているので、正式には「電動アシスト自転車」と呼ばれている。日本では安全性のため、人力対モーターのアシスト比率が1対2、スピードは時速24キロまでしか出せないよう法律で決まっており、日本製の自転車であれ、海外からの輸入であれ、その基準にのっとって設定されている。

 現在、国内で販売されている自転車の数量は約157万台。そのうち電動アシスト自転車は約67万台で、4割以上を占める。過去10年間の自転車全体の販売台数を見ると、2008年の約350万台から激減してきているが、電動アシスト自転車は年を追って増えており、10年前の約28万台から現在まで約2倍以上に膨らんできている。

電動アシスト自転車の健闘で市場は拡大

 また、全体の販売台数が減少しているのに反比例して、売上額は534億円から715億円へと上昇している。つまり自転車の需要は全体的に低下しているものの、電動アシスト自転車の健闘により、市場としては拡大・深化しつつあることが数字から見て取れる(データは自転車産業振興協会のまとめによる)。

 今回は、このように活況を見せる電動自転車市場の今について、シェアの上位を占めるパナソニック、ブリヂストンの2社に取材した。それぞれ独自の工夫で特徴を出しており、8万円台から10数万円の高級車までラインナップも広がってきている。昔に比べ価格が安くなったというのではないようだが、技術進化で、価格に対して性能が格段に向上してきていることが、普及の理由だろう。

 パナソニックの電動自転車を生産しているのが、パナソニック サイクルテックだ。同社で扱う電動自転車には、子どもを同乗できる子乗せタイプ、シニア向け、ショッピング用途、通学向けタイプ、スポーツ用途、ファッション性の高い街乗りタイプなどがある。

 最も売れ筋のタイプはショッピング用途の「ビビ」というモデル。いわゆる「ママチャリ」の電動自転車版で、最も価格が低いものが8万5000円と、お手頃な価格なのも人気の理由だろう。

 「なかでもビビ・DXは当社で一番売れているロングセラーモデルです。電動自転車に求められる機能をバランスよく備えています」(パナソニック サイクルテック営業企画部の東裕介氏)

 バッテリー容量16Ahで、最大約100km走行できるなどの基本性能に加えて、オプションのチャイルドシートを付けることにより、子乗せにも対応可能と汎用性がある。価格は11万0800円だ。

 そして近年、顕著に伸びてきているのが子乗せタイプだ。12月3日に発売した「ギュット・クルーム」は、60年以上の歴史があるベビー用品メーカーのコンビとの共同開発により、使い勝手や子どもの安全性に徹底的にこだわった電動自転車とした。

 「子乗せタイプの市場が急激に広がっているのはここ10年ほど。まだ発展途上で、自転車メーカーが子育てに10年ほど向き合えていないわけです。

 これまでの製品は言ってみれば、『自転車に子ども用のシートを付けた』という印象が強いものが多かった。そこで、ベビー用品を通して経験とノウハウを有するコンビさんの協力をいただいたわけです」(東氏)

 まず、子乗せ自転車の車体性能から説明すると、バッテリーは16.0Ahで、1回の充電で最大約80km走行することができる。車輪の径を小さくして車体の重心を低くしているのは、車体を安定させるためだ。電動自転車は車体だけでも30kg以上あり、子どもを乗せると100kgを超えることもある。バランスを崩すことによる転倒の危険性が普通の自転車より高いのだ。さらに、安全性と軽量性を備えた国産フレームを採用。小柄な女性でも乗り降りしやすいU字形状となっている。

厳しい安全基準を採用し、主要部品は内製

 なお、一般的にはなかなかわかりにくいが、この国産フレームに加えて、モーター・バッテリーをパナソニックグループで内製していることが、パナソニック電動自転車の密かな売りとなっている。

 「国内工場でフレームを1本のパイプから成型し、モーターやバッテリーなどの主要部品はパナソニックグループで内製しています。またパナソニックは非常に厳しい独自の安全基準を採用しています。やはりお子さんを乗せるということで、安全性へのニーズは高くなっています」(東氏)

 そのほか、女性の力でも扱いやすいよう、テコの原理を利用して立てられるスタンドなど、細かい部分で省力化の工夫がなされている。

 子乗せタイプではこのような自転車をベースに、子ども用のシートが前と後ろどちらにあるかで大きく2つに分かれる。フロントシートタイプは運転中などに子どもを見守れることがメリットだが、年齢が1~4歳に限られる。また、荷物用のカゴあるいはリアシートは後輪の上に据え付ける。子どもを2人乗せられるようにした場合、荷物を入れるスペースがなくなってしまうことになる。

 対してリアシートタイプは1~6歳と年齢が広く、さらに、フロントシートを装着してもなお、前のバスケットが使えるなど、汎用性が高い。

 このうち、新しいモデルとして発売されたギュット・クルームはフロントシートタイプ。子どもを乗せるシートには、コンビのチャイルドシートのノウハウが詰め込まれている。“卵すら傷つけない”という衝撃吸収素材や、赤ちゃんの生えかけのやわらかい歯が当たっても傷がつかない、やわらかなグリップを採用するなど、小さな子どもの安全性に配慮。

 また、子どもをシートに固定するベルトは、肩ベルトがシートから少し立ち上がった立体的な形に成形されているため、子どもの腕をスッと通して座らせられるのが特徴だ。ベルトの長さも座面下のボタンを押しながら引っ張るだけで調整できるため、じたばた暴れる子どもをスムーズに固定できる。さすが、コンビのノウハウにより、子育て現場の実際に即した設計となっているのだ。

 そのほか、特徴的なのが電子キーだ。自転車をロックしている錠そのものは後輪に取り付けられているが、キーを持ってさえいれば、カバンなどから出さなくてもハンドル部の電源ボタンを押すだけで解錠が可能だ。ボタンによって解錠するのはキーが3m以内にある場合だけなので、基本的に盗まれる心配はない。

子乗せ自転車は「子育て必需品」の1つに

 前述のシートと電子キーの双方を搭載したタイプは、定価で16万5800円となっている。12月3日に発売後、ギュット・クルームシリーズの売れ行きは「当初予想より2倍のペースで推移している」(東氏)とのことだ。

 近年では子乗せ自転車は子育て用品の1つであり、子どもの通園の時期を迎えた親の多くが購入を検討するという。誰もが持つようになってきたので、見分けがつきやすいよう、カラーバリエーションを以前より増やしているそうだ。ギュット・クルームEXでは5色がそろえられている。

 このように、パナソニックでは子乗せタイプにさらなる可能性を見いだしているようだ。

 対するブリヂストンでは、子乗せ、通学向け、ショッピング用途、シニア向けと4タイプの電動自転車をラインナップしている。

 「動きとしては、子乗せタイプはもちろんですがシニア向けに注目が集まっている。免許返納などで移動手段を奪われた60~70歳の世代の方のニーズです。

 クロスバイクや電動自転車に興味を持つなど、『自由に出歩きたい』という意思が強い印象を受けています。また、通学用途が伸びてきていると感じており、坂道の多い地方を中心に伸びていきそうです」(ブリヂストンサイクルマーケティング本部の室伏僚氏)

 同社では高齢者の市場調査に力を入れているようだ。2018年9~11月の3カ月間、1都3県にてシニア向け「フロンティアラクット」の「出張試乗キャンペーン」を開催。新聞広告で呼びかけて希望者を募り、応募のあった家庭を訪問するというものだ。

 「出張試乗は約170人に実施しましたが、『自由に出歩きたい』というニーズの強さと、60~70代など、比較的年齢が高い方の興味も高いことがわかりました。より安定性をアップさせるなど、今後の商品開発に生かしたいと思っています」(室伏氏)

前輪にモーターを設置した独自技術

 ブリヂストンの自転車についても、車体の性能から説明していこう。独自の技術の1つ目に挙げられるのが「デュアルドライブ」だ。

 一般的な電動自転車では、車体の真ん中にモーターが設置されており、人力と電力を後輪に伝えて動かす。対してデュアルドライブでは、前輪にモーターを設置。前輪は電力、後輪は人力で動かす。

 どのように違うのだろうか。1つには、両輪に推進力があるので、走行安定性が高まる。また前輪ブレーキのアシストも行い、弱い握力でブレーキがかけられるほか、ブレーキをかけたときや、走行中、ペダルを止めたときにモーターが勝手に充電し、省エネ走行ができる。これにより、バッテリー残量が最大28%回復するほか、こまめに充電することでバッテリーへの負担を軽くし、バッテリーの寿命を延ばすことにもつながるという。

 副次的には、モーターを中央に付ける必要がないので、フレームの高さがより低くなり、またぎやすくなるメリットもあるようだ。

 独自技術の2つ目は、チェーンの代わりに樹脂製のベルトを採用したことだ。何かの拍子にチェーンが外れ、直そうとして手がオイルでべとべとになってしまった経験はないだろうか。ズボンの裾がチェーンに触れ、汚れてしまうこともある。ベルトドライブはさびないので注油もいらず、外れることもないため、メンテナンスがラクになる。軽いので、車体の軽量化にもつながる。

 さて、このように車体の機能を追求したブリヂストンは、子乗せタイプとして、「ビッケ」と女性誌とコラボした「ハイディ ツー」の2種類をそろえる。バッテリーは14.3Ah相当で1充電当たりの最大走行距離は種類によって異なり、78~88km。それぞれオプションなしの基本タイプで14万8800円、15万4800円だ。特徴的なのが、全車種を「3人乗り対応」としていることだ。

 オプションでフロントシートかリアシートを付けることで、子どもを2人乗せることができるようになる。フロントシートは1~3歳あるいは4歳までという年齢制限があるが、1人目のときに購入した車体は2人目の通園まで長く使えるのがポイントである。

 子乗せタイプでさらに工夫されているのが、前輪の径を後輪より大きくしていることである。子どもの乗せ降ろしがラクになるよう後輪を低くするために20インチとし、前輪のみ24インチの車輪を採用することで、安定性を高めた。

 スピードが速いほど安定するという「ジャイロ効果」により走行時の安定性がアップし、段差やデコボコ道での乗り越え力にも優れるという。ビッケシリーズでは、前輪と後輪とをほぼ同じサイズにし、より安定性の高い「ビッケ ポーラー e」(14万3800円)もラインナップされている。

 その他スタンドの形状など、非力さを補う工夫はパナソニックと同様にこだわっている。パナソニックと異なるのが、停車時にハンドルがぐらぐらしないようにするロック機能。パナソニックでは、スタンドを立てた時点で自動的にハンドルロックがかかるが、ブリヂストンでは、手元でロックできるその名も「テモトデロックⅡ」を採用。これだと自転車を停止して、ロックしてから降車、スタンドを立てるといった流れになる。

 「スタンドを立てるまでの間にぐらぐらしてしまい、自転車ごと転倒してしまう危険がありますので、この方式を採用しました」(室伏氏)

機能だけでなく「おしゃれさ」にも力を入れる

 このように、商品づくりがややメカニック寄りで“理屈っぽい”イメージがあるブリヂストンだが、こだわりはそれだけではない。“おしゃれさ”にも力を入れているのだ。

 「デザインは非常に重要だと思っています。メカニックのこだわりは外から見てわかりにくく、特に女性のお客様などにはアピールしにくい。また自転車というと『ダサい』と言われてしまうイメージがありますよね。そのイメージを変化させるような自転車をつくりたいと思っています」(室伏氏)

 ビッケシリーズではカラーバリエーションは5~7色。カラーの構成も、ネイビーグレー、レトロレッドと名付けられた中間色で、街中やファッションになじみやすい。さらにサドルカバーやハンドルグリップ、チャイルドシートのカラーや柄も多彩で、好みに合わせてコーディネート可能となっている。

 ファッション性の重視については、ショッピング用途の「イルミオ」からもうかがうことができる。前述の「ハイディ ツー」と同様に、こちらもファッション誌とコラボした電動自転車。荷物を入れるバスケットは大容量であるとともに、フォルムが円形で、フレームと共色なのでごつさや生活感を感じさせない。手元にも小さなバスケットが取り付けてあり、飲み物やスマホなどを入れることができる。

 ベルトドライブを採用しているが、そのベルトの色が通常の黒でなく、タイヤとコーディネートされた色であるなど、細かいこだわりが見られる。

 「子どもが大きくなって、子乗せから卒業した人をターゲットとした自転車です。いったん電動自転車を使ってしまうと、普通の自転車には戻れない。かといって、子乗せ用にいつまでも乗るのはかっこ悪い、という女性の声に応えました」(室伏氏)

 10万円以上の高級品であるにもかかわらず、電動自転車のリピート率は非常に高いという。子どもの送り迎えという必要性がなくなっても購入されるとなると、性能だけではなく、ちょっとした便利さ、快適性、ファッション性へのニーズも高まると考えられる。実用品である自転車にも、おしゃれさは重要なのだ。

 以上のように、パナソニックはコンビとの提携で子ども用シートの使い心地を確保し、親のストレスを軽くする細部のこだわりで差別化。対してブリヂストンはメカニックの工夫で安定感や走りやすさを追求するとともに、ファッション性にもポイントを置いている。なお自転車を購入する際には、販売店などに足を運び実際に使用感を確かめたり、試乗して決めるのがおすすめだ。

電動自転車の普及とともに増える事故の危険性

 最後に、安全性について見ていきたい。これまで説明してきたように、メーカーでは独自の基準を設け、ハードの安全性については追求しているようだ。このことについては引き続き必要だが、今後電動自転車の課題としては、安全な乗り方やマナーについての啓蒙など、ソフト面の比重が高くなると思われる。電動自転車が普及し、主に高齢者ではあるが、電動自転車による事故件数も増えてきている。

 パナソニック、ブリヂストンの両者とも、メーカー側としてはまず整備士のいる販売店を通じ販売することをはじめ、消費者に対しては販売時に乗り方の説明を徹底することを基本としている。

 最初に思い切り踏み込んでしまうとスピードが急に出るなど、乗るうえでの基本的な注意事項があるからだ。また両者とも、教育機関・自治体からの依頼による交通安全教室に協力することが増えているという。社会的にも関心が高まっているということだろう。

 子どもを乗せるなどして100kgを超えることもあり、また普通の自転車が最高時速16~18kmであるのに対し、電動自転車では18~20kmか、それ以上出ることもある。車体が重くスピードもある以上、衝突時の衝撃は普通自転車よりはるかに強い。自転車に乗っていた当事者が死亡する例が多いが、ぶつかった他者を死亡させてしまった事故も発生している。

 マナーも普及してきてはいるものの、まだ全体に浸透するまでには至っていないようだ。歩行者通路を歩いていて、追い抜きやすれ違いの自転車のスピードに驚くことも多い。歩行者通路を自転車が通るのは、厳密に言えば法律違反となる。

 電動自転車は確かに技術進化し、生活の利便性を上げてきたが、利用者数に比例して事故数も増加するようなことがあってはならない。日常的に使うものだけに、つい気を抜いてしまいがちだが、事故の危険性を他人事と思わず、つねに意識し続けることが重要だ。

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