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364日働いたジャパネット高田明氏の「残業ゼロでも一流になる方法」

ダイヤモンド・オンライン のロゴ ダイヤモンド・オンライン 5日前 高田 明
364日働いたジャパネット高田明氏の「残業ゼロでも一流になる方法」: 「もっとうまくなりたい」――無我夢中に自分のしゃべりを磨いてきた高田明氏が語る、成長するために必要な要素とは? Photo by Kazutoshi Sumitomo © diamond 「もっとうまくなりたい」――無我夢中に自分のしゃべりを磨いてきた高田明氏が語る、成長するために必要な要素とは? Photo by Kazutoshi Sumitomo

まったくのシロウトから出発し、ラジオショッピング、そしてテレビショッピングの名物MCとして人気を博した高田明氏。自らを成長させた秘訣、そして後輩・部下たちの教育についてはどう考えているのだろうか。

細部までとことんこだわる私はあまり「褒めない社長」だった

 私は1948年生まれの団塊の世代。平等な教育が望ましいとされる現代からは考えられないことだが、当時の中学校では生徒を成績順に並べたものだったし、時には廊下に立たされたこともある。今では考えられないと思う人もいるだろうが、私はこういう教育も当時は当たり前で、それによってたくましく生きる力を育ててもらっていたようにも感じる。

 90年にラジオショッピングを始めたとき、MCとしてはまったくシロウトだった。そこからテレビショッピング、さらに自社スタジオ建設、生放送開始と事業を拡大していったときも、それぞれが一からのスタートだった。よく「苦労したことは何ですか?」と聞かれるが、これといって思いつかない。

 試練を乗り越えることを苦労と捉える人もいる。しかし、私はステージアップに貪欲にこだわる性格。自己ベストを更新していくことは、苦労でも何でもなく、むしろ楽しくて仕方ないことなのだ。

 今でも、自分のしゃべりを100%だとは思えない。それどころか、もう全然足りていない。おそらく、あと50年経験を積んでも、完璧だなんて思うことはないだろう。そんな私だから、ジャパネットの社員たちには気の毒だったと思う。「10のうち、9叱って1しか褒めない」、私はそんな社長だったのだ。

 我ながら、世の中の風潮から逆行しているかもしれないと思う。私は社員一人ひとりの成長にすごく関心があるから、怒るのではなく「ここを磨けばもっと良くなる」という思いで叱っている。愛情があるからこそ本気で叱るし、みんなに成長してほしいと願っているからだ。

 だからテレビ制作のカメラワーク一つに関しても、たった1秒のズームのずれにまでこだわってダメ出しをする。そんな細かいことまで、と思われるかもしれない。だが、こうしたこだわりこそが、売り上げを2倍、3倍と伸ばす秘訣なのだ。


週休2日、残業なしで一流の社員を目指すには?

 数年前、ある社員から室町時代の能役者・世阿弥の本を勧められた。「高田社長が普段言ってることが書いてあります」というので読んでみたら、能の世界とはジャンルも全く違うのに、確かにテレビショッピングの世界に共通するものがあると驚いた。以来、「風姿花伝」と「花鏡」は私のバイブルだ。

 世阿弥は「初心忘るべからず」と書いている。初心というのは、ビギナーの持つ初心だけではない。30代、40代、50代…年齢を重ねるごとに、その時々のレベルに応じた「初心」があり、何歳になっても自己を更新し続けなければならないと説いている。「これで十分」と思えば、そこから先の成長はないのだ。

 MCを始めた頃は、とにかく場数を踏み、己を成長させることに熱中した。364日番組に出演し続け、休みは1日だけだった年もある。それでも、苦労をしているという感覚はなかった。気づいたら働いていた、という感じだったし、どんどん自分をレベルアップさせることが楽しくて仕方がなかった。

 しかし政府を挙げて「働き方改革」が進められ、長時間労働を是正しようという昨今、私が社員たちにかつての自分と同じような働き方を求めれば、ブラック企業になってしまう。

 週休2日、さらに祝祭日を入れれば、1年のうち4ヵ月は休んでいる計算になる。私はこの取り組みには大賛成であるが、生産性を高めなければ労働時間の短縮だけでは企業は生き残れない。そんな限られた時間の中で生産性を高めるには、普段の生活の中で、仕事の視点を常に持てるかどうかがカギを握ると思う。

道を極めようとしている人が日々心がけていること

 私はバラエティ番組を見ていても、無意識のうちにカメラのスイッチング(複数のカメラで同時撮影して、映像を切り替えること)を考えていたりする。新聞や雑誌を読んでいても、スポーツを見ていても、自分の仕事につながりのある何かを、つい拾う癖がついている。

 どんな物事にも、その根底には普遍的、かつ本質的な何かがあるものだ。世阿弥の説く能役者の心構えが、テレビショッピングのしゃべりにも通じるように。私は本気でうまく伝えられるようになりたかった。そうしたらいつの間にか、何を見ても、何を聞いても、テレビショッピングにつなげて考えるようになっていたのだ。

 高度成長期の団塊の世代の人たちのように働けというのは間違っているが、プライベートで何をするときにも、常に仕事に通じる何かを拾い出す視点を持ってもらいたいと思う。それが自分の成長にもつながるし、生産性向上にもつながると思う。恐らく、道を極めようとしている人は、みんなそうしているのではないだろうか。

 スポーツが好きなら、スポーツ関連の情報だけでなく、政治や経済の優れた本を読むなど、あらゆるジャンルの情報に貪欲になってみてほしい。すると、まったく畑違いのジャンルから、スポーツをより深く理解するための「何か」を得ることができるだろう。そして、こういう努力は人間性を深め、磨くことに大いに役立ってくれる。

希望通りに配属されなかったら…私ならこう考える

 ジャパネットは、グループを合わせると2500人規模の会社に成長した。時には、「MCになりたかったのに、まったく違う部署に配属されてしまった」という声を耳にすることもある。

「この部署は私がしたかった仕事じゃない」と言いたくなる部署への配属をされたとしても、仕事というものは部署それぞれに大きなミッションがあるものだ。そこで諦めてしまうのはもったいない。

 任されたその業務に本気で向き合って取り組むことで本質が見えてくる。そうなるとその仕事が面白くなってくるし、自分も成長し、会社にも貢献できる。

 物流を「なんて地味な仕事だ」としか捉えられないのは不幸なことだ。あのAmazonは、物流を制して世界に羽ばたいたのだ。連載2回目(『ジャパネットたかたは「目標を持たない経営」だから今がある』)で、私は「今を生きる」ことの重要さを述べた。「こんなはずじゃない」と思ったときこそ、「今」を生きてみてほしい。

 結果はすぐに出ないかもしれないが、とことん今にこだわれば、必ず飛躍できる時がくる。そして、その飛躍は、今の自分が思い描いている以上のものになるだろう。

 ただ、私は社員研修などを熱心にやる方ではなく、ともに現場に立ちながら「俺に付いてこい」というようなタイプの経営者だった。少し言い訳になるが、「今を生きる」性格の私は、社員教育や組織作りのようなことが少し苦手なのかもしれない。

 2年前、私は息子の高田旭人に社長を譲った。彼は、私と違って組織作りに非常に力を入れている。私ができなかったことをやってくれているのは、本当にありがたい。社長を譲る際、「変えてはいけない大事な理念の部分は引き継ぎ、ダメだと思うところは変えていけ」と伝えた。今も、その気持ちは変わらない。どんどん、自由にやっていってもらいたい。

 次回は、私がもっとも力を入れてきた「伝える力」について、お話をしようと思う。

(ジャパネットたかた創業者、A and Live代表取締役 高田 明)

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