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AIを使えば、人間では気づかない仕事のムダが見えてくる

ダイヤモンド・オンライン のロゴ ダイヤモンド・オンライン 2018/09/13 06:00 上阪 徹
AIを使えば、人間では気づかない仕事のムダが見えてくる © 画像提供元 AIを使えば、人間では気づかない仕事のムダが見えてくる

AIに仕事が奪われるという脅威論がある一方で、AIを効果的に活用した仕事の取り組みも進んでいる。マイクロソフトの「Office 365」には、AIを活かして働き方を分析し、個人に気づきを与える「My Analytics」という機能が備わっている。これを活かせば無駄な会議や作業を減らし、付加価値の高い仕事を行うことも可能だという。個人の時間の使い方を大きく変え、残業時間の管理にも役立ちそうだ。AIを活かした働き方は、この先、私たちのワークスタイルを大きく変えるかもしれない。3000人以上を取材したブックライターの上阪徹氏が、日米幹部への徹底取材で同社の全貌を描きだす新刊『マイクロソフト 再始動する最強企業』から、内容の一部を特別公開する。

世界中の働き方を変える「Microsoft 365」の可能性

 これまでマイクロソフトの知られざる姿、技術について語ってきたが、AIをはじめとしたさまざまなテクノロジーを盛り込み、ビジネス領域でのひとつの成果として、マイクロソフトが満を持して世に送り出した最新のビジネス向けソリューションがある。

 それが、2017年8月(大企業版が8月、中堅中小企業版が11月)に発売になった「Microsoft 365」だ。

 史上最高の包括的なソリューションと自らうたう製品は、クラウドパッケージ「Office 365」、最新OS「Windows 10」、さらにはモビリティとセキュリティの管理サービスがセットされている。大企業向けと、中堅中小企業向けがある。

 日本マイクロソフト業務執行役員 Microsoft 365ビジネス本部長の三上智子氏は言う。

「製品の名前に、Microsoftが入っているところに、大きな意味があります。サティア(サティア・ナデラCEO)改革の前までは各製品ディビジョンでそれぞれが開発を行い、製品をリリースしていました。サティアが変えようとしたのが、そうしたサイロ型の組織であり、横で連携するクロスコラボレーションでした。この製品はマイクロソフトとして世界のみなさまの働き方を変えていきたいという思いに加えて、組織の枠を超えたOne Microsoftで作り上げたパッケージという意味合いが込められているんです」

 実際、製品開発の現場では、それまでになかったコラボレーションが繰り広げられたという。会社を挙げてクロスグループコラボレーションで、顧客のソリューションを提供しようと取り組みを進めたのが、この「Microsoft 365」なのである。前出の三上氏が続ける。

「マイクロソフトといえば、多くの方が想像されるのが、WindowsやWord、Excel、PowerPointです。これらはすでに中身を説明する必要はありませんが、Microsoft 365も中身をわざわざ説明しなくてもいいようにしたい、という戦略的な意味を込めたソリューションになっています」

 日本ではすでに、日経平均銘柄の8割以上がマイクロソフトのクラウドのユーザーになっている。ここに集まるビッグデータもまた、日本におけるMicrosoft 365のベースになる。Microsoft 365ビジネス本部シニアプロダクトマネージャーの輪島文氏は言う。

「日本マイクロソフトはOffice 365を通じて、働き方改革、働き方を支援するソリューションをずっと提供し続けてきました。今回、Microsoft 365は何が違うのかというと、キーワードが「活躍」になります。従来の働き方支援は、業務の効率化や、いつでもどこでも働けるテレワークの環境整備が中心でしたが、これから私たちが目指しているのは、マイナスをゼロに持っていくことではなく、プラスを生み出していくことです。根本的に働き方を変えていき、活躍できるための働き方をご支援したいと考えています」

求められているのは単に残業をなくすことではない

 なるほど、クラウドサービスもここまで来たのか、というマイクロソフトのクラウドならではの目玉ソリューションが、Microsoft 365にはある。

 それが、自分の働き方を分析し、改善提案をしてくれる「MyAnalytics/マイアナリティクス」という機能だ。

 先にも少し触れたように、マイクロソフトのクラウドは大企業の多くが導入している。Microsoft 365は、この状況をフルに活用する。本部長の三上氏は言う。

「Office 365はたくさん使っていただいている商品ですから、企業の中で使っているデータはすでにクラウド化されていて、集積されているんですね。例えば、メールの数にしても4兆件だったり、会議の数だと月に8億回だったり。そうした膨大なビッグデータがすでにクラウド上にあるわけです」

 この膨大なビッグデータを、働き方の改革に活用しない手はないというわけである。輪島氏は言う。

「ひとつは時間の使い方です。日本では残業の削減が大きく取りざたされていますが、会社で残業をなくすという取り組みだけだと、仕事を残したまま家に戻ってしまう、家で仕事をしてしまう、というようなことが起こり得ます。これでは、本当の意味での生産性の向上やビジネスの成長は難しいわけです」

 今、求められているのは、単に残業をなくすことではなく、限られた時間の中でいかに成果を出していくかということだからだ。

「そのためには、どんなことに時間をかけているのかを見える化して、無駄なことにかけている時間をなくすことに意味が出てきます。その時間を、付加価値の高い時間に変えていくことが必要なんです」

 かといって、どんなことにどのくらいの時間を使ったか、一人ひとりがインプットしなければいけないなどということになれば、むしろ仕事を増やしてしまう。Microsoft 365では、そんなことは必要ない。

 輪島氏が実際に4ヵ月にわたって社内でテスト運用をしていたという画面を見せてもらった。会議時間、メール時間、フォーカス時間、残業時間が棒グラフで表されている。

「何か特別にインプットしたということはありません。メールをしたり、スケジュールを入れたりして普通に仕事をしているだけで、1週間、何にどれくらいかけていたか、というデータが可視化されるんです」

 パソコンにどれくらい触れていたか、スケジューラーとも組み合わせて算出される。一人で集中して仕事をするフォーカス時間は、スケジュール上に個人の作業時間を入れるようになっている。

「我々は、いつでもどこでも仕事をしていくのが基本ですので、なるべくスケジュールはオープンにして共有することが前提になっています。スケジュールに、作業も含めて時間を入れているんです」

 残業時間中にメールを送ったりすると、残業していることになる。輪島氏によれば、かなりリアルに近い印象だったという。

 しかも、これが毎日ストックされ「時間の使い方の傾向」が折れ線グラフで見られたりする。メールにこんなに時間がかかっているのかなど、何にどのくらい時間を使っているか、自分でわかるのだ。

 また、会議に関しては「会議の傾向」も出る。長時間の会議、定期的な会議、残業時間の会議のほか、面白いデータが出てくる。

「会議の最中に何か別の作業をしている、例えばメールを打っている、なんてデータも出てくるんです。他の仕事をしているくらいなら、会議をやめるか、自分を半分にしたほうがいいということがわかるわけですね。あと、競合の会議などというものもあって、これは部下が管理職に会議の出席をお願いされたとき、どのくらい重なったかというものです。こうした状況を、メンバーや上司と共有して働き方の改善につなげていけるのです」

「MyAnalytics」で「時間の使い方」を可視化し改善、生産性向上へ

 さらに、誰と一緒が多いか、誰とあまり接触していないかというデータも出てくる。身近な人ばかりでなく、もっと広くコネクションを持ったほうがいいという気づきになる。メールも、チームのメンバーが読んだか、返答したか、シェアしたか、などもわかる。メールがうまく機能していないとなれば、他の方策を考える必要がある。

 そして最も興味深いのは、ではどう改善すればいいのか、AIがアドバイスをくれることだ。膨大なビッグデータをベースにして、自分の仕事のどこに問題があるのか、AIが毎週、勝手に指摘してくれるのである。

「この会議ではよく内職をしていたので、開催者の××に確認を取るように、なんてことを言われます。人から言われるのではなく、AIからのコメントですから、妙に納得してしまうところがあります(笑)」

 日本マイクロソフトでは、昨年4部門40人が4ヵ月にわたって実証実験を行ったが、効果はテキメンだったそうだ。

「会議は真っ先に効率化を図れました。これは出席しなくてもいいのでは、ということが言いやすくなりました。AIが指摘している、と(笑)。コミュニケーションも、メールに偏り過ぎ、誰々に偏り過ぎ、ということが見えたり。自分の仕事について考えるフォーカス時間が短いということで、正々堂々とプランニングの時間をスケジュールに入れられるようにもなりましたね」

 数字に換算すると、4ヵ月間の4部門40名の合計で約3600時間の削減。残業時間と位置づけ、残業代として試算すると、日本マイクロソフトと同規模の社員2000人の会社として、1年間で約7億円もの削減効果に値する結果が出たという。

 そしてこれは、基本的に上司が管理するものではなく、本人が働き方の改善に役立てるツールである、というところがポイントだ。

「数字的な効果もさることながら、見える化をすることで、社内やチームで話し合いをする風土ができあがってきたという印象があります。もっとこうしたほうがいいというQCサークル的な活動が、ボトムアップで進んできたことが大きな成果だと思います」

 MyAnalyticsにはすでに多くの企業が強い関心を持っており、活用が進んでいるという。

(この原稿は書籍『マイクロソフト 再始動する最強企業』から一部を抜粋・加筆して掲載しています)

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