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ANAと別れ、JALと手を組んだ「メキシコの翼」 航空連合を飛び越えた広範囲な提携が相次ぐ

東洋経済オンライン のロゴ 東洋経済オンライン 2017/10/11 中川 雅博
© 東洋経済オンライン

 ベトナム、インド、ハワイの次は、メキシコだった。日本航空(JAL)が今、さまざまな地域で”仲間作り”を急ピッチで進めている。

 JALは10月11日、メキシコの航空最大手、アエロメヒコ航空と2018年度中にコードシェア(共同運航)を始めると発表した。対象となるのは、アエロメヒコが週7便運航する成田―メキシコシティ線やメキシコシティ発着の国内線、JALが運航する日本の国内線や日本とアジアを結ぶ路線などだ。

 今後両社はマイレージ提携や空港ラウンジの相互利用など、一層の提携深化も検討する。また、メキシコシティ発着の中南米路線へのコードシェア拡大も視野に入れる。

JALが矢継ぎ早に繰り出す提携戦略

 今年度に入ってからJALは、他の航空会社との提携戦略を加速。7月にはベトナムのLCC(格安航空会社)、ベトジェットエア、9月にはシンガポール航空とタタグループの合弁航空会社であるインドのビスタラ、そして米ハワイアン航空とコードシェアなどの提携を発表した。いずれもJALの属する航空連合(アライアンス)「ワンワールド」のメンバーではない。

 「提携において望むのは一つだけ。顧客の利便性を高めることだ」。JALの植木義晴社長はハワイアン航空との提携発表会見でそう述べていた。他社とのコードシェアは、自社で路線を飛ばすよりも低リスクかつ低コストでスピーディーに路線網を広げられるというメリットもある。

 アエロメヒコともアライアンスを超えたコードシェアに踏み切った理由についてJALは、「日本企業の進出が増え、需要が伸びている。顧客の利便性を考えれば必要だった」(会社側)としている。

 中南米はJALにとって歴史的に重要だ。かつてカナダ・バンクーバー経由で成田―メキシコシティ間を運航していたことがあるが、2010年の経営破綻を機に撤退。成田―ブラジル・サンパウロ線も破綻で運休を余儀なくされた。同路線は30年以上にわたって運航していたこともあり、いまだに復活を望む声が絶えない。

 一方、今年2月に成田―メキシコシティ線を就航したのが全日本空輸(ANA)だ。飛行時間が14時間30分にも及ぶ同社最長路線である。メキシコへの日本企業進出が1000社を超え、出張需要に高い期待を寄せたのだ。

並々ならぬANAのメキシコへの期待

 高地で酸素の薄いメキシコシティ国際空港での離陸のため、ボーイングの航空機「B787-8」用に新型エンジンを調達した。さらに、メキシコシティ発の便では離陸時に偏西風の向かい風が強いため、本来の169席より客数を制限しなければならない。そこまでしてでも、ANAが一貫して重視してきた出張客の取り込みにはこの路線が必要だった。

 メキシコに進出する日本企業の8割は、メキシコシティ以外の都市にある。現地での乗り継ぎの利便性は重要だ。だが、ANAが属する航空連合「スターアライアンス」にはメキシコ国内線を運航する航空会社がない。

 そこでアエロメヒコと一部で提携した。互いの日本とメキシコの国内線に特別運賃を適用できる契約を結び、乗り継ぎ便も含めた割安な通し運賃を設定できるようにしていた。

 だがこの契約はアエロメヒコ側の要請で、今夏で解除されている。同社の加藤欣弥・日本支社長はその理由を、「JALからより魅力的な条件が出てきたため」と話す。それこそが今回のJALとのコードシェアというわけだ。

乗り継ぎの利便性向上に逆風

 JALの巻き返しでアエロメヒコとの契約を失ったANAだが、ほかにも現地のLCC・インテルジェットとも協力関係にある。だが同社はこの10月以降、メキシコシティを発着する主要国内線の運休や減便を計画しており、ANAの乗り継ぎの利便性向上には逆風が吹く。

 もっともANAの場合、メキシコシティ以外の都市への渡航は、ヒューストン、ロサンゼルス、シカゴなど、米国からの乗り継ぎのほうが多い。スターアライアンスの仲間である米ユナイテッド航空がメキシコ各地に飛ばす便に乗り継ぐのが便利だからだ。「JALとアエロメヒコのコードシェアによる影響も軽微」と会社側は言う。だが、メキシコシティ線を維持していくには、乗り継ぎ客の取り込みも必須だ。

 「アエロメヒコが契約を解消したのは、ANAとの戦略の違いも原因だろう」。旅行会社関係者はそう指摘する。「出張需要を重視するANAは、レジャー客を軽視しすぎた」。ANAとアエロメヒコは双方とも毎日運航であり、メキシコ路線の供給座席数は急激に増えている。出張客だけでなく、観光需要の喚起も欠かせない。旅行会社などと連携してレジャー客の取り込みも重視するアエロメヒコと、ANAの間に溝が生まれたとみられる。

 ANAが就航してまだ8カ月ほど。すでに波乱の様相だ。知名度が上がり活性化しつつあるメキシコ路線で、新たな戦いの火蓋が切って落とされた。

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