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Androidの父が作ったシンプルスマホの全貌 公式サイトを通じて日本でも購入可能に

東洋経済オンライン のロゴ 東洋経済オンライン 2018/05/17 07:00 松村 太郎
Essential Phone PH-1 ホワイト。5.71インチ液晶ディスプレーにカメラが割り込んでいる「ノッチ」を採用した初めてのスマートフォンだ(筆者撮影) © 東洋経済オンライン Essential Phone PH-1 ホワイト。5.71インチ液晶ディスプレーにカメラが割り込んでいる「ノッチ」を採用した初めてのスマートフォンだ(筆者撮影)

 日本は「世界で最もiPhoneが普及している国」として知られており、その販売シェアや国別のOSシェアを見ても、6割ほどの勢力を占めるとみられている。その影で、秀逸な機能やデザインを持っていた多様性のある日本のケータイと、その系譜を組むAndroidスマートフォンは、メーカーの撤退が続き、今では中国、韓国などのメーカーの製品以外の選択肢がほとんどなくなってしまった。

 米国でも状況は同じで、米国のスマホメーカーはとうになくなり、主要メーカーで米国に本社があるのはアップルぐらいしかなくなってしまった。しかし、そんな中で昨年夏から注目されている米国でデザインされたスマートフォンがある。

 それが、「Essential Phone(エッセンシャルフォン)」だ。

 Essentialはスマートフォンを作るスタートアップ企業。昨年5月に「PH-1」を発表し、8月から発売。販売台数は公表されていないが、その美しいデザインと機能性で存在感を増している。

 2018年4月27日から、公式サイトを通じて日本でも購入可能となったEssential Phone PH-1のレビューとともに、このスマートフォンが作られる現場を取材した。

「スマホ初」が目白押し

 Essential Phone PH-1は、5.71インチで2560×1312ピクセル(QHD)の解像度を持つ液晶ディスプレーがデバイスいっぱいまで敷き詰められたいわゆる「全画面スマホ」だ。

 しかも昨年11月に発売されたiPhone Xよりも早く、画面上部の切り欠きにカメラを配置する「ノッチ」を活用したデザインを採用している。

 iPhone Xのノッチには受話スピーカーやFace IDを実現するTrueDepthカメラのセンサー類が備わっているが、Essential Phoneのそれにはカメラだけが備わり、小さく丸い切り欠きとなっている。このノッチの小ささを実現した秘密は、横幅が取られる受話スピーカーを端末上部のエッジに配置する工夫があったからだ。

 iPhone Xがリリースされ、中国メーカーなどからノッチを用いたAndroidスマートフォンが登場してもなお、全画面と小さなノッチを備えるデザインは色褪せない。それは手触りの楽しみにも共通する。

 Essential Phoneには、スマートフォンとしては初めて用いられる素材が用いられている。フレームには腕時計などにも用いられてきたチタンが採用されており、アルミやステンレスに比べて傷がつきにくく、マットな質感が楽しめる点も新鮮だ。

 チタンのマットな表面とコントラストを演じるのが背面のセラミックの艶やさ。Essential Phoneにはすでに販売が終了したカラーもあるが、ブラックやグレーといったシックな色や、艶やかさがより際立つホワイトなど、どの色を見てもセラミックの質感はほかのガラスやプラスティックとは違う楽しみがある。

 プロセッサーにはQualcomm Snapdragon 835が採用され、処理性能も十分だ。また日本のLTE通信にも対応し、IP54等級の防塵防沫性能にも対応するので、安心して使うことができる。

ピュアなAndroid体験を届けるデバイス

 Essential Phoneを紹介されるときについてくるタグラインに「Androidの父が作ったスマホ」がある。その理由は、Android社を立ち上げた人物、アンディ・ルービン氏が、Essential ProductsのCEOを務めているからだ。

 Androidは現在はグーグルのスマートフォンOSとして知られ、すでに20億人のアクティブユーザーを数えるほど成長しているが、もともとは2003年に設立されたスタートアップであり、ルービン氏はその創業メンバーの1人だ。2005年にグーグルがAndroid社を買収し、2007年11月5日にバージョン1がリリースされた。

 その後ルービン氏は2013年末にAndroidの開発から離れ、新設されたロボット部門のトップに就任したが、2014年秋にグーグルを退社している。その後ハードウエアスタートアップを立ち上げ、2015年にEssentialを創業、2年でスマートフォンの発売にこぎ着けた。

 そんなルービン氏のゴールは「ピュアなAndroid体験を人々に届ける」ということだ。これはどういう意味なのだろうか。

 開発者会議Google I/O(5月8~10日開催)で発表された時期OS「Android P」には、グーグルの人工知能アシスタントの連携や改善されたインターフェースデザイン、そして人々がテクノロジーとちょうどよい関係を保つための「Digital Wellbeing」といった新機能が用意され、「シンプルで高速に動作するスマートフォン」がアピールされた。

 しかしこれまで、グーグルが用意したAndroidをシンプルに楽しむには、グーグルがリリースするスマートフォン、すなわちNexusシリーズやPixelシリーズを利用しなければならなかった。

 現在多くのスマートフォンに搭載されているAndroidは、各メーカーやキャリアによってさまざまな機能が付加されたり、ユーザーインターフェースに手が加えられ、その端末に最適化されたり、新たな価値を提供することに熱心だ。

 しかしこれは、ルービン氏が言う「ピュアなAndroid」のポテンシャルから離れてしまう。結果として、動作が緩慢になったり、セキュリティを含む重要なアップデートが遅れるなどの弊害も出ていた。

 Essential Phoneはグーグルブランドのスマートフォンではないが、よりシンプルにAndroidのポテンシャルを引き出すことを目指したスマートフォンであり、デザイン同様に、サードパーティのAndroidスマートフォンの中で、もっともミニマルな存在と言える。

進化し続ける「カメラ機能」

 追加アプリがほとんどなくピュアなAndroidとして使い始めることができるEssential Phoneだが、カメラアプリは同社が開発しているカスタマイズアプリとなっている。

 Essential Phoneが昨夏に発売された当初、カメラの評判はお世辞にもいいとは言えなかった。1300万画素のカラー・モノクロのデュアルセンサーを備え、赤外線と位相差のデュアルオートフォーカスが搭載されていたが、ノイズの多さや動作の遅さがあり、レビューでも「生焼け」との評価が見られた。

 しかし同社はカメラアプリを繰り返しアップデートし続け、スピード、暗い場所での撮影などの改善を加えてきた。またセルフィーを撮影する際に画面をフラッシュ代わりに光らせる機能や、陰陽の差が大きい場合に双方を最適に撮影できる自動HDR機能などを追加した。また2つのカメラを用いたポートレートモードの自然な仕上がりはiPhone X以上と評価できる。

 2018年5月16日現在の最新ソフトウエアでレビューをすると、撮影機能の少なさは変わらないものの、非常に満足できる撮影体験が得られるカメラに仕上がった。

 特にモノクロレンズを備えていることから、ちょっと露出を下げれば非常に自然で深みのある白黒写真が得られ、エフェクトで白黒にするほかのスマートフォンと一線を画す迫力が得られる。

 さらに、Essential Phoneの背面には2つのピンがあり、本体に仕込まれている強力な磁石で固定するワイヤレスアクセサリを接続できる。現在用意されているのは、360度カメラだ。ワンタッチですぐにカメラが起動し、360度写真や4Kの360度ビデオを撮影することができる。

 FacebookやYouTubeにこれらのコンテンツをそのままアップロードすれば、ほかの人にすぐに見せることができる。またEssential Phoneのカメラアプリでは、360度写真を平面の写真にまとめる「Tiny Planet」写真を作成したり、撮影したコンテンツから新たに写真やビデオを切り出す機能も備えている。

 とにかく手軽に360度コンテンツを普段のスマートフォンで作成できる点は、Essential Phoneを選ぶ1つの理由となるだろう。Facebookが発売した安価なVRゴーグル「Oculus Go」の登場もあり、Essential Phoneは、VRのカジュアルな楽しみ方の起点となることが予想できる。

Essentialが作られる「遊び場」

 Essential Phoneは、チタンやセラミックといったこれまでのスマートフォンにはなかった素材によるデザインの実現、ピュアなAndroid体験、ハードウエアはそのままに細かいアップデートによってその機能や性能を改善していく点など、スタートアップ企業ならではの製品の面白さと、品質を上回る体験の提供を両立している希有な存在だ。

 カリフォルニア州パロアルトにあるEssentialが入居するのは、前述のアンディ・ルービン氏がグーグル退社後に設立したハードウエア系スタートアップ投資会社「Playground Global」。Google I/O前日の5月7日に開催された、同社のポップアップパーティーを取材した。

 Essential以外にも数々のハードウエアスタートアップが展示を行っており、その多くの企業がすでに製品を販売している。たとえば、体に装着してゲームなどの重低音を振動で感じるジャケット「Subpac」や、3Dマシンビジョンを駆使した自動追尾飛行を実現するドローンカメラ「Skydio」など、ユニークな製品が数多く生まれる場所だ。

 パーティのメイン会場となっているのは、ちょっとしたショッピングセンターのフードコートのような広々としたキッチンエリアだったが、その奥に一際存在感があるのが、デザインスタジオだ。

 巨大な切削機械やレーザーカッターが並ぶマシンショップ、電波や電気的な設計やテストが行えるエレクトロニクスラボ、光学機能をテストできるオプティックラボなど、スタートアップ企業では揃えられないような機材と環境が整っており、素早いプロトタイピングやテストを繰り返し行うことができる。

 Essential Phoneをはじめとしたユニークで高品質な製品をスタートアップ企業が素早く生み出せる理由は、ルービン氏が整えた環境とこれを活用できる頭脳の集積によるものだった。

日本でもEssential Phoneの展開が始まる

 発売後1年経ってもなお魅力的なデザインと進化を続けるソフトウエアを備えるEssential Phoneだが、ようやくオンラインで日本からも買えるようになった。

 米国では直販のほかに、携帯電話会社Sprintでの取り扱いと家電量販店BestBuyなどでの販売が行われている。日本市場でも気軽に触れる環境を、Essentialとして用意したい意向だ。

 その質感やシンプルさをもっとも発揮するのは、手に取った瞬間の心地よさだ。その瞬間は、スマートフォンを日々使う日常そのものでもある。ルービン氏とエンジニアの情熱を感じる意欲的な製品に触れると、テクノロジーとのつながりに新たな気づきがもたらされるだろう。

今回取材したPlayground Globalのイベント風景をEssential Phoneと360度カメラで記録したものはこちら。写真をクリックすると、マウスで左右に動かせます。

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