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auの人気シリーズCMが示す「好き」の波及効果 なぜ4年目でも飽きられずに支持されるのか

東洋経済オンライン のロゴ 東洋経済オンライン 2018/07/13 08:00 関根 心太郎
auの人気シリーズCMが示す「好き」の波及効果 © 東洋経済オンライン auの人気シリーズCMが示す「好き」の波及効果

あなたのお気に入りのCMは、何位にランクインしているだろうか?

CM総合研究所が毎月2回実施しているCM好感度調査は、東京キー5局でオンエアされたすべてのCMを対象として、関東在住の男女モニターが、好きなCM・印象に残ったCMをヒントなしに思い出して回答するものだ。

最新の2018年6月後期(2018年6月5日~ 2018年6月19日)調査結果から、作品別CM好感度ランキングTOP30を発表。その中から、CM総研が注目するCMをピックアップして、ヒットの理由に迫る。

 期間中にCMをオンエアした3167作品のうち、KDDI『au』の2作品がCM好感度ランキングでワンツーを飾った。総合1位は「みんなつくろう」を夏のテーマに浦島太郎の家のアイデアやデザインを一般に募ったCM、続く同2位は神木隆之介演じる“高杉くん”のクラスに、転校生として幼なじみの“細杉くん”が現れるCMだった。

 また、同社からはサッカー日本代表チームを応援するべく「三太郎」シリーズの主要メンバー7名が“本人”として『アイーダ』を歌うCMが同8位に入っている。

 1位のCMはスタッフ宛てに、ある少女から届いた一通の手紙に基づき制作されたもの。『みんなつくろう 浦ちゃんの家 大ぼしゅう』と題して彼女の「浦ちゃんの家をつくってほしい」という願いをかなえる視聴者参加型のプロジェクトで、出来上がった“浦ちゃんの新しい家”は7月下旬オンエア予定のCMやフジテレビのイベント『THE ODAIBA 2018』での公開を予定しているという。

リアルも巻き込んだ一大キャンペーン展開 

 CMでは桃太郎と金太郎が一緒に浦島太郎のいる砂浜を訪ねると、浦島太郎が手紙を読んで号泣しているのを目の当たりにする。事情を聞いた桃太郎が「そういえば浦ちゃんちって行ったことないね」と言った途端、浦島太郎は「なんで! いま来てんじゃん!」「ウチこ~こ」とムキになって反論。

 壁もなく屋根代わりのすだれをかけただけの小屋が家だと知って衝撃を受けたふたりが「浦ちゃん、つくろ!」と浦ちゃんの家を建てることを提案するストーリーだ。

 三太郎たちが集まる“たまり場”となるのは桃太郎・かぐや姫夫妻や金太郎の家で、浦島太郎の家については一切触れられてこなかったが、シリーズ4年目にして初めて明かされることとなった。

 視聴者もお世辞にも家とも呼べない造りには驚かされたようで「あれ家だったんだ……」「浦ちゃんの家が家じゃなくて可哀想になった」「浦ちゃんの現在の家が衝撃でした」といった声が並んだ。

 2015年1月に始まった三太郎シリーズだが、“昔話”が題材のため携帯端末やauショップなど、現代と通じる要素はストーリーと関わってはこない。しかし、本作では実際の少女からの手紙をきっかけにアイデアを募るというリアルを巻き込んだ一大キャンペーンとして立ち上がった。

 同社はその背景について「実際にお客さまから届いたお手紙をきっかけとして、皆さまから浦ちゃんの家のアイデアを募集する本企画を通してauにより親しみやワクワクを感じていただき、ブランドイメージの向上につなげていきたい」との思いがあったという。

 人気シリーズだけに常に次回作への高い期待を持たれている同社であるが、今回に至っては「視聴者」が「参加者」へと変化したこともあり、より大きな“ワクワク”へつながることが期待される。この新たな試みがどのような“家”そして“ストーリー”とへと展開するのか、三太郎シリーズから引き続き目が離せない。

 さらに大きな変化が見られたのは8位の「全力アイーダ」篇だ。松田翔太を筆頭に桐谷健太、濱田岳、有村架純、菜々緒、川栄李奈、菅田将暉の順番で日本代表の応援歌でも知られる『アイーダ』を歌いつなぐCMで、それぞれが三太郎のキャストとしてではなく“本人”として出演した。

CMに“本人”が登場するに至った経緯

 KDDIは2016年8月にサッカー日本代表チームのサポーティングカンパニー契約を締結し、以降は三太郎シリーズの枠内でも「全力で全力を応援する。」をスローガンに応援CMを展開してきた。

 泥だらけになりながらも全力で試合に励む人々を三太郎が興奮気味に見守ったり、鬼役の菅田が、丘の上やスタジアムで『見たこともない景色』を歌ったりするもので、あくまで三太郎シリーズの登場人物として出演してきた。

 それが今回初めて本人として登場するに至り、その狙いについて同社は「日本代表チームを応援するサポーターとしての視点から三太郎メンバーがCMキャラクターとしてではなく本人役として気持ちの込もった全力の『アイーダ』を披露いただくことで、『全力を全力で応援する。』という選手を鼓舞するメッセージをよりリアリティをもって発信する企画に至りました」と語る。

 CMに好感を示したモニターは「新鮮」「豪華」と声を上げ、「ワールドカップの時期になりました。本人として出ているのがいつもと違って良い!」「いつもと違うCMが新鮮で、auのカッコよさが感じるCMだと思った」「改めてそーだった、この人だった!?と驚いた」とキャスティングを変えることなくニュースを作り出した。

 また、「1、2回しかみなかったが、すごく目をひいた。印象に残ったCMだ。サッカーがんばってほしいと思った」「サッカー日本代表の応援をしたくなる。みんなで応援したくなる」など、同社の狙い通りに日本のサポーターたちの“日本代表を応援する”という機運を盛り上げることに一役買った。

 「昔話」という世界観を曲げずに続けてきた三太郎シリーズが、一体感の高まるこのタイミングで自らが決めた枠組みを飛び越えるという挑戦で表現した「偽りのなさ」が見る者の心を打った。

 2位に入った「意識高すぎ!高杉くん」シリーズはユーザーとより近い視点で『au』のサービスを深く、広く知ってもらうことを目的に今年1月30日に始まったシリーズである。

 “何ごとにも高い意識を持って取り組む高校生・高杉くん”役に神木隆之介、その同級生の“松本さん”役に松本穂香を起用し、高杉の意識の高い振る舞いの数々に松本が「意識高すぎ、高杉くん」とツッコミを入れるフレームで描かれてきた。ここに新キャストとして中川大志演じる“細杉くん”が加わったことでさらにCM好感度を伸ばし、シリーズの自己最高スコアを大幅に更新した。

高杉くんを上回る新キャラ・細杉くんが異彩を放つ

 CMでは、高杉が細杉とは3歳からの付き合いだと松本に教えようとするも「2歳7カ月からでしょうが!」と指摘され握手をかわされてしまう。さらに会話の中でポイントと交換できるものについて問われた高杉は「ギフト!」と答えるが「厳選…ギフトだ」と完璧な回答を求められるといったやりとりが立て続けに映し出されていく。“高杉の幼なじみ”という設定通り、息の合ったコンビネーションでの掛け合いを軸に、細杉の“細かすぎる”性格を印象づけた。

 なかには中川が連続ドラマで演じたクールなキャラクターとCM中での“濃い”キャラクターとのギャップに言及する感想も見られ、主人公に負けず劣らずの存在感を示した。

 学園シリーズでは新たな登場人物がつきものだ。モニターの中にも「高杉くんの次は誰が来るのかワクワクしながら待ってて、細杉君と聞いたときには笑ってしまいました」というコメントがあり、今回のCMが想定内の展開でありながらも視聴者の期待を大きく上回ったことは、高いCM好感度が証明している。

 三太郎の魅力のひとつに彼らの人間味あるキャラクターが挙げられるが、同社のキャスティングの巧みさは高杉くんシリーズにもそのまま当てはまってきそうだ。相棒を得てさらにパワーアップした“意識の高すぎる”高杉くん、登場するやいなや強烈な個性を発揮した“細かすぎる”細杉くん、ともに浮世離れしているようでクラスにひとりぐらいはいるかもしれない。

 消費者にとってはUSP(=Unique Selling Propositionの略。独自の売り方)の違いがわかりにくい業界のひとつである携帯キャリア。

 auのシリーズCMのひとつひとつに対する評価を細かく見ていけば「面白いけれど何のCMかわからない」といった意見が挙がっているのも事実だ。

 だが一方で、三太郎シリーズを開始してからは、CM好感度だけでなく「愛用持続度」のポイントでも以前の倍程度の割合を示し続けている。これは回答時に商品・サービスを愛用していることを示す項目であり、携帯キャリアであれば「auユーザーからの支持」と言い替えられよう。つまり、auユーザーは、auというブランドをちゃんと「好き」なのだ。

 機能や料金、端末の差を取り上げて勝負することが難しい中で、生活者の気分や期待を正確に読み取り、感情を動かしてCMやブランドを「好き」になってもらう。この「好き」という感情が、この「何でもある時代」にブランドを強くしていく上で実はとても大切なものなのではないだろうか。

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