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BMW日本法人についに公取委が立ち入り検査 販売店に過剰なノルマ、独禁法違反の疑い

東洋経済オンライン のロゴ 東洋経済オンライン 2019/09/11 20:45 高橋 玲央
高級輸入車BMWでは、販売台数を多くするために新車をディーラーに購入させる「自社登録」が横行している。写真はBMW日本法人が入るビルの1階にあるショールーム(記者撮影) © 東洋経済オンライン 高級輸入車BMWでは、販売台数を多くするために新車をディーラーに購入させる「自社登録」が横行している。写真はBMW日本法人が入るビルの1階にあるショールーム(記者撮影)

 傘下ディーラーに過剰な販売ノルマを課し、達成できない場合は新車を買い取らせていたとして、公正取引委員会は11日、独占禁止法違反(不公正な取引)の疑いで、日本法人「ビー・エム・ダブリュー」(BMWジャパン)へ立ち入り検査に入った。

 BMWジャパンは「検査が入っているのは事実。公正取引委員会の検査に協力する」としている。

 関係者によると、BMWジャパンは通常の営業活動からは達成困難な新車販売台数のノルマをディーラーに課したうえ、達成できない場合に自分で新車を買い取らせる「自社登録」を強いる不当な取引条件を設けていた疑いがある。

 東洋経済では7月にこの問題について、新車同様の「新古車」が市場にあふれる事情をリポートした。当時の記事を再掲する。

 「新車を買うよりも絶対にお得です。だって、ほとんど走っていないのに、100万円以上安いんですから。これはもう『新車同然』と言い切ってもいいですよ」

 ある平日の昼下がり、高級輸入車、BMWの正規ディーラー(販売店)が運営する都内の中古車販売店を訪れると、販売員が近寄ってきてこう言った。記者の目の前に飾られていたのは昨年発売されたばかりの人気車種で、新車登録は昨年末の日付だった。走行距離はわずか20キロメートル。車両価格は、同じ装備の新車に比べて100万円以上安い。

 高級輸入車の代名詞とも言える、BMWの販売現場で「異変」が起きている。新車同様の中古車が市場に大量に出回っているのだ。販売台数をかさ上げするためのなりふり構わぬ姿勢が今、問題になっている。『週刊東洋経済』7月13日発売号は、内部資料を交えながらBMWの販売現場の「異変」を詳報している(週刊東洋経済プラスで「BMW『ディーラーへ押し込み販売』の決定的証拠」を配信中)。

好調の裏側で積み上がった新古車

 国内の自動車販売は、1990年の777万台をピークにして落ち続け、2018年は527万台だ(日本自動車販売協会連合会調べ)。国内市場全体がしぼむ中で、BMWをはじめとした輸入車は順調に販売台数を伸ばしてきた。日本自動車輸入組合によると、2018年の輸入乗用車の販売台数は34万2770台で、ピークだった1996年の39万3392台と比べると減ってはいるものの、国産車よりも落ち幅は小さく健闘していると言える。BMWの販売台数も、2008年の3万1928台から2018年は5万886台と、大きく伸ばしている。

 ただ、足元の販売現場では厳しい戦いを強いられている。近年は、BMWやメルセデスなどの古くから日本で販売するメーカーのほかに、ボルボやジープといったブランドも日本市場向けに攻勢を強めている。トヨタの高級車ブランド、レクサスの好調もBMWにとっては逆風だ。

 冒頭で紹介したような中古車はいわゆる「新古車」と呼ばれ、自動車の「お得な購入方法」としてインターネットで紹介されることもある。ディーラーが販売ノルマを達成するために、自ら名義人(購入者)となって新車登録(自社登録)したナンバー取得済みの車で、扱いとしては中古車としての販売となる。新車同様の状態にもかかわらず販売価格は1~2割ほど安くなるが、高級車の場合は通常あまり表には出てこない。

 ところが、なぜかBMWに関しては、新古車が目立って多い。例えば、中古車情報サイト「カーセンサーnet」で走行距離100キロメートル未満の中古車を検索すると、7月1日時点で849台がヒットする。

 この数字は同じドイツの高級車、メルセデス・ベンツの99台、アウディの6台と比べて著しく多い。トヨタ自動車(4397台)やホンダ(2767台)といった国産車よりは少ないが、BMWの国内新車販売の台数は約5万台。トヨタ自動車が約150万台販売することを考えると、BMWの多さが際立っている。

疲弊する販売現場「メカニックが確保できない」

 新古車を作ると、1台単位で見れば収益は悪化する。ただ、台数ノルマを達成したときにメーカーから支払われる成功報酬(リベート)があるため、多少の自社登録やむなしというのは、BMWに限らず自動車ディーラーの間では共通の考え方だ。

 ただ、あまりにも多くの新古車を抱えることは、ディーラーの経営を圧迫することになる。実際、各地のBMWディーラーは、口々に経営の厳しさを訴える。

 「折からの人手不足で、メカニックの確保が難しくなっている。賃上げをすべきだとは思うが、利益が上がらないので難しい」

 東日本のあるディーラーの幹部はこう訴える。近年、自動ブレーキや運転支援システムの搭載など自動車の高度化が進んだことにより、不具合対応やメンテナンスでメカニックの労働時間は長くなっている。BMWディーラーは大量の新古車を抱えるために経営が厳しく、ほかのメーカーのディーラーとのメカニック獲得競争で不利な立場に立たされている。

 ディーラーの経営状況は深刻で、ほかのメーカーのディーラーと比べても明らかに利益率が劣っているという。この幹部は「質のいいメンテナンスも含めて、評価してもらっている。そのために頑張っている従業員の踏ん張りに報いたいのに」と話す。

 ディーラーには販売台数達成に強い圧力がかかっており、契約打ち切りをめぐって訴訟が起きるなど、軋轢も表面化している。BMWでディーラーによる自社登録が増え始めたのは2013年頃。このころ、ライバルのメルセデス・ベンツが販売台数を伸ばし、BMWに対して差をつけ始めた時期と一致する。

日本法人から露骨な自社登録要求も

 なぜこのようなことが起こるのか。取材を進めると、販売台数をかさ上げするためにBMWの日本法人、ビー・エム・ダブリュー株式会社(BMWジャパン)がディーラーに大量の自社登録をさせていることがわかった。BMWディーラーの元には、期末になると「あと30台買ってくれ」というような露骨な自社登録要求もディーラーに対して寄せられるという。

 関係者によると、2018年の新車販売台数約5万台のうち、3割はこうしたディーラーによる自社登録によるものだという。本来新車で買う予定だった顧客が新古車で購入することがあるため、実際の販売力は正確には見積もれないが、5万台という数字が“少なからず”「かさ上げされた数字」とみることはできる。

 新古車や自社登録の存在は、少し自動車に詳しい人間の中では広く知られている。安い新古車が出回るということは、それを狙って購入するユーザーにとって必ずしも悪い話ではない。ただ、中古車市場全体でのブランドの価値が下がってしまう。このため、既存のユーザーにとっても下取り価格が下がるなどの弊害が及ぶ。あるディーラーの幹部は「品質の高い車を提供している自負があるのに、売り方がよくないせいでお客様にご迷惑をかけてしまう」と悔しがる。

 BMWジャパンは取材に対し、「当社はディーラーのビジネスに関してコメントする立場にない」としている。

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