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BRICSから中国除外。ゴールドマン・サックスも憂慮する人民元安

HARBOR BUSINESS Online のロゴ HARBOR BUSINESS Online 2017/01/12

 BRICSのもともとの名付け親は、投資銀行のゴールドマン・サックス(GS)です。かれこれ1 5年も前の2001年11月に、GSはBRICという言葉をレポートで世に出しました。BRICは、ブラジル、ロシア、インド、中国という4つの国を指します。その後、それにSの南アフリカ共和国を加えたBRICSという言葉が広く知れ渡りました。BRICSは、将来の経済規模がとてつもなく大きくなりうる国を指しています。

 名称をつけたのはGSですが、そのGSが、2017年早々、興味深いレポートを出しました。

 1月6日にBloombergが報じたところ、GSは中国人民元は今年も2016年同様、じりじり下げるとし、BRICSから中国(C)を除いた、BRIS(ブラジル、ロシア、インド、南アフリカ共和国)通貨の上昇に賭ける取引を「堅持」するよう投資家に促しているとしています。

ハーバービジネスオンライン: 2017年の中国元は注意が必要 © HARBOR BUSINESS Online 提供 2017年の中国元は注意が必要

 なぜ中国を除くのか、なぜ中国の通貨である人民元は上昇しないのか。この理由としてBloombergでは、中国はトランプ次期大統領の保護主義的政策などの影響を大きく受けるからとしています。一方、中国を除いたBRISは、輸出面で米国の労働力と直接競合する度合いが小さいがため、リスクが比較的軽微としています。

◆循環として決して好ましいといえない現在の人民元安

 GSが憂慮するように、ここ最近の人民元安はリスクとなっています。そして、この人民元安は資本流出を伴っているものである点に注意する必要があります。

 中国経済の先行きが分からない中、国外の資金を持つ。GSの発言からも分かるように、2017年にはさらなる元安も既に想定されています。元がさらに下がるなら、下がる前に国外の資金を持とうとする流れも理解できます。

 そして、中国当局はこれを止めるのに必死な状況です。中国人民銀行の1月7日の発表では、2016年12月の外貨準備高は3兆105億ドル(約352兆円)で、前月比410億ドル減となっています。ドル売り、人民元買いという為替介入のため、外貨準備が減少しているのです。

 外貨準備というのは、対外債務を返済する目的でも使われるわけですから、このまま外貨準備が減少するのは中国にとってはよい循環であるといえません。

◆1年前の1月前半も人民元安の話題で市場は揺れていた

 なお、人民元安の流れは今に始まったことではありません。

 重要なターニングポイントは2015年8月11日。中国が人民元切り下げを突然しました。このとき言われていたのが、中国の輸出企業を上向ける考えが背景にあるといったもの。景気対策であり、人民元安にしてこそ、輸出企業を持ち直すといったものです。

 ただ、それ以降、人民元は対ドル相場で下げ続け、株式相場に影響を及ぼすようにもなりました。2016年1月7日に中国人民銀行が発表した対ドルレートの基準値は1ドル=6.5646元。その後しばらくして、中国当局は人民元安の流れをストップさせることに成功したものの、2016年の半ばから人民元安の流れは再び加速しました。

 2017年になり、昨年同様、人民元安、資本流出への懸念が起こる中、1月6日に中国人民銀行が発表した基準値は元高設定の1ドル=6.8668元。これは1月5日よりも0.9%引き上げられるという大幅な元高設定となりました。中国当局による資本流出を食い止めようとする策が出された形となります。

◆“ゾンビ企業”の淘汰は進むのか

 2017年、中国には多くの問題があり、注視しないといけない状況となっています。不動産市況の悪化は懸念事項の一つで、不動産価格の下落が始まると、負のサイクルに陥る可能性があり、経済全体が停滞する可能性があります。

 中国の経済停滞と人民元安に備え、対外投資を加速させたいにしても、当局の監視も厳しくなっています。今後、企業サイドもさらなる対策を練る局面に立たされることでしょう。

 ゾンビ企業の問題もまだ片付いておらず、今後さらなるゾンビ企業の淘汰が進むのかにも注目が集まります。また、トランプ氏が大統領になり、今後中国とどう関わっていくのか。こちらの点は、GSが指摘した通り、中国の為替政策に影響を及ぼす可能性が大いにあります。

 2017年の中国は、資本流出しようとする側、それを食い止めようとする当局と、心理戦が続く形になりそうです。中国の動きによっては、日本の円に与える影響も大きくなるでしょう。外貨準備の動き含め、2017年も引き続き中国に注意する必要があるといえます。

<文・岡本泰輔>

【岡本泰輔】

マルチリンガル国際評論家、Lingo Style S.R.L.代表取締役、個人投資家。米国南カリフォルニア大学(USC)経済/数学学部卒業。ドイツ語を短期間で習得後、ドイツ大手ソフトウェア会社であるDATEVに入社。副CEOのアシスタント業務などを通じ、毎日、トップ営業としての努力など、経営者としての働き方を学ぶ。その後、アーンスト&ヤングにてファイナンシャルデューデリジェンス、M&A、企業価値評価等の業務に従事。日系企業のドイツ企業買収に主に関わる。短期間でルーマニア語を習得し、独立。語学コーチング、ルーマニアビジネスコンサルティング、海外向けブランディング、財務、デジタルマーケティング、ITアドバイスなど多方面で活動中。

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