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EVの次なるフロンティア:地下深いトンネル

The Wall Street Journal. のロゴ The Wall Street Journal. 2019/11/08 13:48 Rhiannon Hoyle
© Newmont Goldcorp

 【シドニー】電気自動車(EV)のブームが次に訪れるのは、世界中の鉱山で活躍する大型車両かもしれない。

 カナダの地方部やオーストラリア内陸部などで鉱山を運営する企業の間で、ディーゼルエンジン式の掘削機やホイールローダーなどの動力源をリチウムイオン電池に切り替える動きが活発だ。地下坑道の空気を汚染し、作業員の健康を危険にさらす排ガスを減らすのが目的だ。

 カナダのオンタリオ州シャプロー近郊にあるボーデン鉱山では、鉱石を掘り出すためや、作業員を敷地内の各所に運ぶために約35台のEVが稼働している。鉱山を所有する産金世界最大手ニューモント・ゴールドコープは100%の電動化を目指している。電動掘削ドリルは年明けに納品される予定で、ディーゼル式トラックは段階的に廃止する見込みだと広報担当者は話す。

 「究極の目標は大型ダンプカーだ」。時価総額で世界最大の鉱業会社BHPで低排出技術を統括するカーステン・ローズ氏はこう話す。

 高馬力のダンプカーは地下坑道の底から何トンもの鉱石を運び出す。ディーゼルエンジンの馬力に匹敵するためには、現在の技術では巨大なバッテリーパックが必要になる。

 BHPは豪州最大の地下鉱山オリンピックダムに1年前から小型EVを試験的に導入している。今月中にもう1台増やす予定で、豪州各地の鉱山にも拡大する考えだ。カナダで計画中のBHPの炭酸カリウム鉱山ジャンセンでは、何台のEVが配備可能かを検討している。

 ローズ氏によると、いずれ鉱山から一切のディーゼルエンジン機械をなくしたいという。

 より小規模な企業も環境への配慮を強化している。例えば、ヌーボー・モンド・グラファイトはカナダのケベック州に100%電動化した露天掘り黒鉛(グラファイト)鉱山を作る計画だ。

 世界有数の鉄鉱石産出量を誇る豪フォーテスキュー・メタルズ・グループのエリザベス・ゲインズ最高経営責任者(CEO)は「ディーゼルから切り替えるチャンスがあればいつでも大歓迎だ」と述べた。だが「この技術、つまりバッテリー駆動時間がわれわれの事業に見合う水準に達していない」

 技術の発達は急ペースで進むが、だからこそ別の課題も持ち上がる。「ノートパソコンと同じだ。あなたが家に持ち帰るともう旧式になっている」。オリンピックダム鉱山でのEV実験を指揮するドリュー・オサリバン氏はこう話す。

 さらなるハードルは価格だ。専門家によると鉱山用EVはディーゼル車に比べて40%から時に3倍も値段が高いからだ。

 だがEV推進派はランニングコストが安いと反論する。ボーデン鉱山の年間エネルギー支出は、従来の鉱山より約900万ドル安くなり、場合によってはそれ以上の違いがあるとニューモントの広報担当者は話す。その一因は、トンネルから汚染物質を除去する巨大換気システムを動かすのに地下鉱山のエネルギーコストの最大40%を費やしていることだ。

 顧客や投資家は、世界の資源企業が行いを正すことに期待を寄せる。投資の社会的影響力への関心が高まる中、プロジェクトに融資する銀行だけでなく、大手年金基金や資産運用会社の多くが、二酸化炭素排出量を公表し、削減に取り組むよう資源会社に求めている。ディーゼルはいま旬のターゲットだ。BHPの場合、事業活動に伴う直接排出量の3割以上をディーゼルが占めているとローズ氏は言う。

 間もなく規制当局もこれに同調するかもしれない。西オーストラリア州の鉱山局は7月、地下迷宮で1日最大12時間も重機を操作する作業員の健康状態に改めて懸念を示した。

 「ディーゼルエンジンの排ガスは鉱山事業の危険要因として知られる。特に地下鉱山ではそうだ」。同局の鉱山安全責任者アンドリュー・チャップリン氏は言う。政府の委員会は同国の資源担当相に対する勧告を作成中だという。

 もっとも、発電方法を化石燃料から再生可能エネルギーに移行しない限り、採掘機械や車両を電動化するだけでは排出量削減に大きな効果は期待できない。

 一部の鉱山会社はその方向に努力している。フォーテスキューは先月、豪電力会社アリンタ・エナジーと契約を結び、鉄鉱石生産拠点チチェスターの電力を太陽光発電でまかなうことにした。年間およそ1億リットルのディーゼル燃料に取って代わるという。

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