古いバージョンのブラウザーを使用しています。MSN を最適にご利用いただくために、サポートされているバージョンをご使用ください。

HIS、「変なホテル」100軒体制目指す大胆戦略 投資枠は最大2000億円、ホテル事業に本腰

東洋経済オンライン のロゴ 東洋経済オンライン 2017/03/19 松浦 大
© 東洋経済オンライン  

 旅行会社大手HISがホテル業強化の姿勢を鮮明にしている。同社は3月15日、千葉県浦安市に「変なホテル舞浜 東京ベイ」(以下東京ベイ)を開業すると発表した。

 会見したHISの澤田秀雄会長兼社長は「変なホテルは変化し、進化し続けるポリシーで作られたホテル。新しいビジネスモデルを世界に展開していきたい」と語った。

9種類、140体のロボットを投入

 HISのグループ会社ハウステンボス(長崎県佐世保市)は、2015年7月に「変なホテル」初号棟(以下、初号棟)を開業。受付やクローク、室内清掃にロボットを活用した作りで話題を集めた。今回、東京ベイは2軒目のロボットホテルとなる。

 東京ベイにも9種類、140体のロボットを投入。受付にはベロキラプトルのロボットほか、水槽の魚類ロボット、実物大のティラノサウルスの模型などを配置。全客室にもAIを搭載したコンシェルジュロボットを備えている。

 東京ディズニーリゾートに近い立地のため、家族客やグループをターゲットにしており1室あたり大人3~4人が泊まれる作りとなっている。客室は100室で公式サイトによれば、1泊2人で1.5万円~4万円という価格設定だ。

 格安旅行会社のイメージが強いHIS。だが近年では2010年に経営再建に携ったハウステンボスがグループ全体の利益の半分近くを稼ぐまでに成長。澤田氏はHISの経営をいったん離れ、ハウステンボスの社長に専念していた。

 澤田氏は就任直後からハウステンボスの業績を好転させた。さらに現地でロボットを活用したアトラクションや「変なホテル」を開設。最近では宇宙ベンチャーへの出資や野菜工場、新電力への参入などさまざまな事業に手を広げている。

 その一方で、絶好調だったHISの業績も最近では伸び悩んでいる。昨年12月に発表した2016年10月期決算は売上高5237億円(前期比2.6%減)、営業利益142億円(同28.5%減)と低迷した。

 利益の4割を稼ぐハウステンボスが熊本地震の影響で大幅な減益に。主力の旅行事業も、採算性の高い欧州旅行がテロの影響を受けたうえ、訪日観光客が“爆買い”した際に受け取る手数料が激減したことも痛手になった。

 2月28日に発表した2016年11月~2017年1月期(第1四半期)決算の営業利益も25億円(前年同期比45.7%減)と振るわない。

 こうした状況を受け、2016年10月には、それまで2008年から社長だった平林朗氏を副会長とし、澤田氏が12年ぶりに社長に復帰した。

 平林氏はグループのホテル事業を統括するHISホテルホールディングス(略称はHHH)の社長とM&Aを専門に扱う部署のトップとなった。

ホテルを5年で100軒体制に

 そして打ち出したのが、「変なホテル」などホテルを5年で100軒体制に拡大し、事業の柱にする計画だ。今回開業した東京ベイを含めてグループ全体で13軒あるホテルを、2021年までに100軒体制に増やす。

 そのために、グループ全体のM&Aとこのホテル事業に対して、借入金を含め最大で2000億円の投資枠を設定。旅行のほか、周辺事業の強化とホテル事業の拡大を加速させ、「3~5年後に売上高1兆円、利益で500~1000億円の水準にする」(澤田氏)とブチ上げた。

 2017年には、グループが運営するラグーナテンボス(愛知県蒲郡市)の中に「変なホテル3号店」を開業。さらにM&Aかフランチャイズで他社をグループ内に取り込み、年内にも30軒体制まで増やす計画だ。

 ただ、通常、自社でホテルを開業するには土地の取得から建設まで2~3年はかかる。

 もし、東横インのように不動産オーナーにホテルを建設してもらい、賃借するリース形式の場合はさらに時間がかかる。

 澤田氏は「ホテルの建設費が1軒で20億円。それが100軒だから2000億円」という試算を以前の決算会見で披露していた。実際に初号棟の建設費は18億円、東京ベイの場合は不動産取得費用も含めて34億円という巨額の費用がかかっている。

 昨年秋に記者も初号棟に自腹で泊まってみた。ロボットを活用したとはいうものの、チェックインや部屋の空調・照明設定はタブレットで行い、荷物を運ぶポーターロボットも移動できるフロアが限られている。記者の主観ではあるが、HIS側が強調するほど、ロボットが活躍しているようには思えない。

 変なホテルの宿泊料金は初号棟で2万円前後、東京ベイでも周辺のビジネスホテルよりやや高めの設定だ。当初は物珍しさや新鮮さが顧客を呼び込むだろうが、一巡した数年後にも、しっかりとした単価と稼働率を維持することができるのか。評価にはもう少し時間がかかるかもしれない。

 HISはホテルの運営事業のほかにも、変なホテルの運営ノウハウをパッケージにすることでFCシステムを構築。全世界で1000軒ほど販売し、「既存にはないビジネスモデルを作り、ゲームチェンジャーになりたい」(ホテル事業を統括する平林氏)と意気込む。

 ホテル運営は巨額の不動産投資が絡むため、単年度ではなく、10~20年という長期間での収支をはじく必要がある。はたして遅れて参入してきたHISの戦略は功を奏するのか。12年ぶりに社長に復帰した澤田氏の手腕が問われている。

東洋経済オンラインの関連記事

東洋経済オンライン
東洋経済オンライン
image beaconimage beaconimage beacon