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SNS帝国フェイスブック、規制論が高まる必然 「国家を超えたコミュニティ」をどう扱うか

東洋経済オンライン のロゴ 東洋経済オンライン 2018/05/16 07:30 二階堂 遼馬
大量の情報流出事件にSNSの巨人が揺れている。写真は5月1日、開発者会議で基調講演を行うマーク・ザッカーバーグCEO(写真:REUTERS/Stephen Lam) © 東洋経済オンライン 大量の情報流出事件にSNSの巨人が揺れている。写真は5月1日、開発者会議で基調講演を行うマーク・ザッカーバーグCEO(写真:REUTERS/Stephen Lam)

 今年3月、2016年の米大統領選挙や英国の欧州連合離脱をめぐり、フェイスブックの顧客情報が悪用された問題が発覚した。米大統領選ではドナルド・トランプ陣営が有利になるように投票者向けの政治広告で利用され、英国の国民投票でも離脱派に投票を促すようなデータが利用された可能性が指摘されている。情報流出の規模は最大で8700万人にも上った。

 問題のほとぼりは冷めたに見えるが、フェイスブックが乗り越えなければならないハードルはまだある。規制当局との戦いである。5月14日発売の『週刊東洋経済』(5月19日号)では、「フェイスブック解体論」を特集している。

米ニューヨーク大教授が叫ぶグループ解体論

 2004年に誕生し、いまやSNSの代名詞となったフェイスブックがここまで大きくなったのは、サービスの利便性が評価された面が大きい。だが、規模の面で国家を超える存在までになったこの会社は、もうビジネスの側面だけで語ることはできない。これはグーグル、アップル、アマゾンについても同様だ。

 「今まさに(GAFAと呼ばれる)4社を解体(ブレイクアップ)するべきときが来ている」と指摘するのは、米ニューヨーク大学スターン経営大学院教授のスコット・ギャロウェイ氏だ。同氏はフェイスブック、グーグル、アマゾン、アップルのIT系大手4社を論じた書籍『The Four: The Hidden DNA of Amazon, Apple, Facebook, and Google』を昨年10月に刊行。同書は22カ国で翻訳が予定されており、世界で注目を集めている。

 「ビッグ4の市場独占は企業同士の健全な競争を阻んでいる。そのためビッグ4を解体すれば、代わりに登場する新しい企業がこれまで以上に雇用や株主価値を生み、M&A(企業の合併・買収)や投資が促進される」とギャロウェイ氏は主張する。

 同氏は「中でもフェイスブックは解体をしやすい」と強調。具体的には「フェイスブック本体と子会社であるインスタグラム、ワッツアップなどをそれぞれ独立会社として運営させればグループ全体として持っている支配的地位を弱めることができる。フェイスブックが主体的に解体に動くことが望ましいが、場合によっては政府による介入も必要となるだろう」という。

 私企業の経営について社会的に影響力のある学者が、ここまで言及するのは異例でもあるが、実際にグループとしてのフェイスブックは巨大だ。

 月間利用者は祖業のフェイスブックが22億人(2018年3月末時点)、2014年に買収したワッツアップが15億人(2018年1月末時点)、2011年にフェイスブックから機能が分離したフェイスブックメッセンジャーが13億人(17年9月末時点)、2012年に買収したインスタグラムが8億人(2017年9月末時点)いる。全体の月間利用者は58億人に上り、あらゆる国家や宗教をも超越したコミュニティを形成しているといっても過言ではない。

 この巨大なグループは、サービス同士でユーザーのデータを共有し、広告配信に活用している可能性がある。フェイスブックは詳細を明らかにしていないが、たとえばインスタグラムのプライバシーポリシーには「インスタグラムが属する企業グループ内の他社や、このグループに加わる予定の他社と、ユーザーコンテンツや利用者の情報(Cookie、ログファイル、デバイスID、位置情報、および利用データを含みますが、これらに限定されません)を共有する場合があります」と記されている。

 一定の重複ユーザーを含むとはいえ、グループで58億人分のデータを収集かつ共有し広告配信の手段に使うとなれば、グーグルなどを除けば立ち向かえる企業はほぼいないと言っていいだろう。

欧州では独禁法違反で罰金を課された

 この点でフェイスブックを牽制しているのが、欧州連合の行政執行機関に当たる欧州委員会だ。欧州委は昨年5月、フェイスブックがEU競争法(独占禁止法)に違反したとして、1億1000万ユーロ(約140億円)の罰金を課した。

 罰金を課されたのは買収時に欧州委に対して不正確な説明をしていたため。フェイスブックは2014年にワッツアップを買収した際、フェイスブックとワッツアップのユーザーアカウントは連携できないと説明していた。にもかかわわらず、2016年にワッツアップはフェイスブックユーザーのアカウントとワッツアップユーザーの電話番号を連携させる可能性を含むサービス規約とプライバシーポリシーの更新を発表していた。

 現状で各国の規制当局が、フェイスブックの解体を見据えた動きに発展しているケースはない。ただ、最大8700万人分のデータ流出を受けて、今年3月には米連邦取引委員会(FTC)や英国のデータ保護当局が調査に乗り出している。

 日本でもデータ流出の動きとは別だが、昨年6月に公正取引委員会が「データと競争政策に関する検討会」の報告書を発表し、その中で「価値のあるデータが第三者から不当に収集されたり、またはデータが不当に囲い込まれたりすることによって、競争が妨げられるような事態を避けなければならない」と記述している。

 4月上旬の米議会証言でフェイスブックのマーク・ザッカーバーグCEOは「規制を歓迎するか?」との質問に「正当で適切なものならイエス」と語っている。規制一辺倒の議論はイノベーションを阻むことにもなるが、この先フェイスブックが何らかの規制を受け入れざるを得なくなる局面があっても不思議ではない。

 フェイスブックにスポットライトが当たっているデータ独占の問題は、同社に限ったものでもない。ギャロウェイ氏は冒頭のIT系4社について「ある種のペテンや知的財産の窃盗を犯してここまで大きくなった」と手厳しく批判し、「私たちはこれらの企業が善良ではないと知っていても、自らの生活に招き入れてしまっていることを自覚する必要がある」と言い切る。

 国による規制を含め、ITの巨人たちにわれわれがどう向き合うべきかは、真剣に考えるべきテーマとなっている。

『週刊東洋経済』5月19日号(5月14日発売)の特集は「フェイスブック解体」です。

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