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ZOZOとは違う勝ち方がある——ストライプが窮地のアパレルで仕掛ける小売革命とは

BUSINESS INSIDER JAPAN のロゴ BUSINESS INSIDER JAPAN 2018/05/17 05:00 滝川 麻衣子

スマートフォン上での洋服レンタルやホテル経営など、既存のアパレルの枠を超えたビジネスモデルで知られるストライプインターナショナルが、ソフトバンクとの合弁でアパレルEC「ストライプデパートメント」を立ち上げてから3カ月。一人勝ちスタートトゥデイの「ZOZOTOWN」が立ちはだかるアパレルEC市場で、本格的な攻勢に出ている。

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まずは全国で閉鎖の相次ぐ百貨店市場のイノベーションと、そこに流れていた「幸せな時間の消費」を取り戻すことだという、ストライプ社長の石川康晴。モノが売れないと言われ、苦境に立つアパレルの未来を、どう見据えているのか。

軒並みアパレル企業が不振に陥る中、テクノロジーを取り入れたビジネスモデルで、ストライプインターナショナルは気を吐く。 © Business Insider Inc 提供 軒並みアパレル企業が不振に陥る中、テクノロジーを取り入れたビジネスモデルで、ストライプインターナショナルは気を吐く。

長崎の五島列島の人のポケットの中にも、新宿伊勢丹を入れたいんです

東京・銀座の歌舞伎座タワー上階にあるストライプの東京本部を訪ねると、石川は「ストライプデパートメント」を立ち上げた理由について、穏やかな口調でそう話した。

世界を代表する百貨店の一つである伊勢丹新宿店のような売り場をECで実現し、日本中の百貨店ファンに届けたい。それが、アパレルEC立ち上げの背景にあるという。

アパレル業界全体が不振にあえぐ中、「斜陽産業にこそ芽がある」と、スマホ上での洋服レンタルサービスや、食やライフスタイル分野への事業拡大と、ストライプはテクノロジーを駆使した攻めの姿勢を続けてきた。

「今、全国に230くらいの百貨店があるのですが、毎年数店舗ずつ減っています。一方で、じゃあ、小さな頃から百貨店の屋上遊園地で遊んでいたようなお客様がいきなり、ファストファッションに行くかというと、そうではない。とくに地方に住んでいる人が、洋服を買う場がなくなっています」

そう語る石川の物腰はアグレッシブな経営者というよりは、ソフトなアーティストといった風情だ。

石川の故郷は、岡山市。23歳で地元に小さな洋服店を立ち上げて以来、年間売上高がグループで1300億円を超え、一部上場の準備を進める大企業となった今も、会社の本拠地はずっと岡山市に置いている。海外進出を果たす一方で、視界にはいつも、地方の町に住む人々がいる。

ストライプ社長の石川康晴。全国の地方では、毎年のように百貨店が撤退して行く実態に解をもたらしたい。 © Business Insider Inc 提供 ストライプ社長の石川康晴。全国の地方では、毎年のように百貨店が撤退して行く実態に解をもたらしたい。

「五島列島から百貨店に買い物に行こうとしたら、長崎の人が福岡まで行かなくてはならない。それは非常に不便な社会です」

一方で、アパレルやラグジュアリーブランドの経営者と話しても、「百貨店は縮小している上にECは苦手で、商品を出すプラットフォームがない」と言われる。そこに対する回答がストライプデパートメントだ。

ZOZOTOWNのターゲットが20代〜34歳と若年層中心なのに対して、ストライプデパートメントのメーンターゲットはF2層(30代後半〜40代)。百貨店やセレクトショップなど実店舗での買い物に馴染んできた層だ。

ストライプデパートメントの常務取締役・営業本部長には、三越伊勢丹ホールディングス出身の近内哲也がいる。

サイトには、三陽商会、サンエーインターナショナル、レナウンといった、百貨店系アパレルのお馴染みのブランドが顔を揃えるが、気軽にオンラインで購入するには価格帯は高めに映る。

チャットでやりとりするパーソナルスタイリスト

やはり手にとって選びたいというニーズにどう応えるか。そこをテクノロジーでカバーするのが、ストライプのやり方だ。

「今、ウケているサービスが2つあります。試着サービスとパーソナルスタイリングサービスです」

試着サービス:3着まで申し込むことができ、自宅に無料で届いた商品を、自宅で着てみてから実際の購入を決められる。特徴は、利用者の購入率が高いことで、3点借りた人のうち、平均で1.23点が売れるという。

パーソナルスタイリング:販売経験の長いベテランスタッフが、顧客アンケートとチャット相談を元に、スタイリング提案を行うサービス。小売りを手がけてきたストライプならではだ。

パーソナルスタイリストの客単価は高く、多い人で8点購入する例もあると言う。

2月に開かれた、ストライプデパートメントの立ち上げ記者会見の様子。中央が石川。 © 撮影:小林優多郎 2月に開かれた、ストライプデパートメントの立ち上げ記者会見の様子。中央が石川。

「パーソナルデータを入れて頂ければ、僕たちの業界に10年くらいいると、こういうテイストが好きなんだ、というのがすぐに分かります。それを今、リアルで(実際のスタイリストがチャットで)返していて、ずっとログ(履歴)を貯めている。将来的にはAIになると思います」

現時点で、平均客単価は2万円弱程度と、ECのプラットフォームでは高価格帯に位置する。

「UU(サイトを訪れたユーザー数)で見ると圧倒的なAmazonやスタートトゥデイには負けると思いますが、我々には単価2万円のユーザーが付いている。このデータを使って何をするかというのが今後の展開

石川にとって、アパレルECは、通過点であって目的地ではない。

「(他の企業が)2万円のユーザーにアプローチするビジネスを考えます。Amazonは日本で本から始まりその後、総合スーパーのようになった。我々は(客単価が)2万円のファッションというのが強みなのだから、その層はどんなライフスタイルを求めているのかを考える」

将来的には、宝塚のチケットを取るかもしれないし、海外旅行のコーディネートや金融商品とも相性がいいかもしれない。

ニューリテールを作りたい

渋谷パルコ2跡地に建った、hotel koe tokyo。ストライプ社長の石川が見据える、次世代の小売りの形とは。 © Business Insider Inc 提供 渋谷パルコ2跡地に建った、hotel koe tokyo。ストライプ社長の石川が見据える、次世代の小売りの形とは。

渋谷・公園通りの坂を渋谷駅方面から上がって行くと、「渋谷パルコ2」跡地に、ストライプが2月にオープンした、ホテル併設型のアパレル旗艦店「hotel koe tokyo(ホテル・コエ・トーキョー)」のガラス張りの外観が見えてくる。

自社ブランド「koe」のショップでもあり、インバウンドの顧客を意識し、デジタルアートや和の要素を取り入れたホテルでもある。1階のカフェではDJイベントも開催されるエンターテイメントスポットでもある。

hotel koe tokyoを訪れると、石川の見据える次世代の「小売り」の形が、少しだけ見えてくるかもしれない。

石川は、現状のオムニチャネル(実店舗やオンラインストアなど流通チャネルを統合すること)について「店舗のお客様を(ECの)プラットフォームに引っ張るという流れしか、既存のサービスにはない。これでは2分の1オムニチャネル」だと、手厳しい。

ECのお客様を店舗に連れて行き、店舗で獲得したお客様をECに連れていくことの双方向で初めて、100%なんです。これを続けて行くと、市場が活性化する

ストライプデパートメントのようなECプラットフォームとリアル店舗とで、何をやろうとしているのか。石川が「ニューリテール(新しい小売り)」と呼ぶ概念。現時点では3つくらいに整理され、どれかが来ると予想している。

その3つがこれだ。

1.コストイノベーション

デジタルマーケティングによってECで購入した人を、店舗のリアルイベントに招致する時に、その場所は駅ビルや百貨店である必要はない。

「1、2本裏通りでも(商売が)成り立つのであれば家賃は下がる。店内で映像を流すだけにして無人化すれば、人件費も抑えられる」

例えば、渋谷の高感度な若年層にアプローチする「メディア」も、リテールの一つの役割になるかもしれない。 © Business Insider Inc 提供 例えば、渋谷の高感度な若年層にアプローチする「メディア」も、リテールの一つの役割になるかもしれない。

2.販売のイノベーション

スタッフが店舗に立つ時間は数時間でもいい。

「スタッフは顧客と『友達』になって、SNS上に自分が着用した写真や商品写真をどんどんアップする。そうすれば、普段から顧客にアプローチができる」

3.売る場所から宣伝する場所へ

「リテール(の店舗)をメディアと捉えて、広告モデルを入れる」

例えば渋谷のhotel koe tokyoではF1からF2にかけた年代の、高感度でグローバルな男女が集まる場所として音楽やアートイベントを開くなど、「可処分所得も感度も高い人のリアルなデータを集めています。そこに渋谷の若年層にキャンペーンを打ちたい企業からの広告がどんどん入る」

最後に残るオフラインの役割

小売りの業界を手がけてきた石川は、アリババやアマゾンが生鮮食品のスーパーを傘下に取り込むなど、ECと実店舗が融合される動きに注目する。

最適化を考えれば、ECだけをやるという選択肢はあるが、今は次の段階にテクノロジー企業が入りつつある。リテールの役割と(ECの)プラットフォームの役割とがある

例えば島根の全県民に、膨大なコストをかけてデジタル広告を打つよりも、地元の百貨店とタイアップしたり、廃校になった小学校の体育館を使ったりして、「期間限定の催事として、数百のブランドを集めてストライプが出店した時にこそ、獲得できるお客様がいる」(石川)

最初の体験は店舗かもしれないが、その後はECで継続して買ってもらえばいい。

「新しいソーセージをメーカーが出して、おばちゃんに勧められて試食した人が、美味しく思って買ってくれる。それがリテールの役割だと思っています。次にもう一度買う時に、ECでもリテールでもどちらでもいいんです」

(文・滝川麻衣子、撮影・今村拓馬)

石川康晴:ストライプインターナショナル及びストライプデパートメント社長兼CEO。1970年岡山市生まれ。岡山大学経済学部卒。京都大学大学院修了。公益財団法人石川文化振興財団理事長。 1994年創業、1999年にアパレルブランド「earth music&ecology」を立ち上げる。グループ従業員約6000人、国内外合わせて約1400店舗。2017年にストライプデパートメントを設立し、2018年2月、ECサイトのサービスを開始した。

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