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「ハイパー・パーソナライゼーション」へ向かうD2C美容業界

Forbes JAPAN のロゴ Forbes JAPAN 2019/12/03 07:30 Kaleigh Moore

© Forbes JAPAN 提供 ヘアケア・ブランド「プローズ(Prose)」は、一人ひとりに適したシャンプーなどをオンライン販売しており、提供できる製品の組み合わせは500億種類を超える。同社が未来のeコマースで中心になると確信しているもの、それは「パーソナライゼーション」だ。

そう考えているのはプローズだけではない。美容業界では現在、テクノロジーを活用して、個別にパーソナライズされた製品を製造・販売するバーティカル・ブランド(ニッチ市場向けブランド)が増えている。例を挙げると、「ファンクション・オブ・ビューティー(Function of Beauty)」、「バイト・ビューティー(BITE Beauty)、「キュロロジー(Curology)」など。それぞれ、顧客に合わせたシャンプー、リップ、ニキビケアを販売するブランドだ。

こうした変化が起きているのには、それなりの理由がある。データが示すところでは、買い物客の8割が、パーソナライズされた体験を提供する企業から商品を購入する可能性が高いと答え、顧客の59%は、パーソナライゼーションが購入判断に影響を及ぼすと答えたのだ。

そして、美容業界のバーティカル・ブランドはすでに、「ハイパー・パーソナライゼーション」によって、驚くほどの結果を出している。たとえば、オンライン・コスメショップ「イル・マキアージュ(IL MAKIAGE)」では、同社独自の「PowerMatch」アンケートと人工知能(AI)を合体させたシステムを提供。買い物客はそれぞれ、自分に適したコンシーラーやファンデーションを見つけることができる。

同社はこのやり方で成果を上げている。2019年3月のローンチ以来、600万人を超える顧客を対象に、各自に適したファンデーションの色合いをマッチング。その精度は94%だ。同社の売上は、年内に5000万ドルを超えると見られている。

プローズのパーソナライゼーションも、イル・マキアージュと同様にアンケートから始まり、「オンライン・カウンセリング」が行われる。

このカウンセリングでは、顧客のライフスタイルや食習慣、居住地域、ストレスレベルといった重要データを収集。その後、プローズが独自開発したアルゴリズムを使って、収集したデータをもとに、顧客のヘアケアに関するニーズや悩みに応じた製品を個別に提案する。このような舞台裏のテクノロジーが、同社の高度なパーソナライゼーションを可能にしているのだ。

プローズの共同創業者で最高経営責任者を務めるアルノー・プラー(Arnaud Plas)はこう語る。「アルゴリズムならびにバックエンドのサイトを独自開発したことで、テクノロジーを迅速かつ最大限に活用できるという強みが手に入った。おかげで効率性が向上し、チーム間で直接情報をやり取りできるようになり、より良い製品を提供することができる」

今のところは順調だ。2017年のローンチ以来、プローズの顧客ベースは5倍以上に拡大。今年2019年だけを見ても、オンライン・カウンセリングの完了数は100万件を超えている。

同社の成長を加速させている要因は何なのだろうか。

顧客対応分野の多くのブランドと同じように、プローズは有料ならびにオーガニック(無料)のソーシャルマーケティングで上々の結果を出している。2019年には、ポッドキャストやダイレクトメールといった、デジタルおよびノンデジタルの媒体利用を開始したほか、屋外(OOH)広告キャンペーンにも初めて挑戦した。

プラーはさらに、口コミも今までのところ成果を上げていると話す。口コミは効果の高い媒体の第3位であり、80%以上の顧客が、プローズを友人に勧めたいと回答したという。

とはいえ、急成長には課題が伴う。たとえば、受注生産数を増やせるよう(かつ、顧客満足度を維持できるよう)、より斬新な方法を考案し続けて、テクノロジーの活用をできるだけ速く進化させなくてはならない。

サプライチェーンと受注処理の管理に関して言えば、プローズは方法を進化させている。ローンチ当初は、そうした管理作業を半自動で行っていて、生産速度は1分につき1製品だった。しかし、会社が成長し、顧客ベースが拡大し続けたことから、より迅速に注文処理ができる新たなプロセスの開発に取り組んできた。

新しいプロセスは2020年前半に始まる予定で、今後は、受注処理スピードがいっそうアップし、パーソナライズされた製品の生産を大幅に拡大できる見込みだ。

プローズは近い将来、製品ラインアップも増やす計画だ(現在はおもに、通常のシャンプーやコンディショナー、ドライシャンプー、洗い流さないコンディショナーを販売している)。また、新しいカテゴリー(ヘアケア・グッズ)の製品も、年内に発売開始の予定だ。

プローズは今のところ、小売店との提携は考えておらず、当分は直販(D2C)ブランドというかたちを維持するつもりだ。

その理由として、現在のビジネスモデルが順調であることが挙げられる。また、徹底的にカウンセリングを行うことで、単なるワンクリックブランド以上の存在となり、D2C業界で差別化できているという自負もある。

サブスクリプション方式での製品提供は、同社が長期的に顧客ロイヤルティを維持し、デジタル販売戦略を実践していくためにも重要な側面だ。

「サブスクリプション方式は、成長促進の重要な手段となってきた。しかし、顧客との密接な関係を活かすことが重要だということも、われわれは確信している」とプラーは話す。「その2つを組み合わせることが、現在の成功をもたらした原動力だ」

では、昔ながらのブランド、とりわけバーティカル市場の美容ブランドは、パーソナライゼーションをテコにするプローズなどのD2Cブランドから、何を学べるのだろうか。

現代の消費者は、個人として対応してもらいたいという願いを持ち、大衆のひとりでいることを好まない。顧客セグメンテーションでは、もはや不十分だ。

「プローズでは、傷んだ髪やくせ毛といった大まかなニーズをもとに消費者を細分化するようなことはもうしていない。それでは顧客の要求や目的に誠実に対処できないとわかったからだ」とプラーは言う。

美容ブランドは、D2Cか否かを問わず、唯一無二の個人である消費者が、自分に最も適した製品を手に入れられるよう手助けすべきだと、プローズは考えている。

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