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「住みたい街」人気で赤羽が北千住に屈した深い理由

ダイヤモンド・オンライン のロゴ ダイヤモンド・オンライン 2017/07/13 鈴木貴博
「住みたい街」人気で赤羽が北千住に屈した深い理由: リクルート『SUUMO』が発表する「関東版 住みたい街ランキング」で、今年も異変が起きている。同じ「穴場地区」の中で、昨年上昇した赤羽などがランクダウンし、代わりに北千住などがランクアップしているのだ © diamond リクルート『SUUMO』が発表する「関東版 住みたい街ランキング」で、今年も異変が起きている。同じ「穴場地区」の中で、昨年上昇した赤羽などがランクダウンし、代わりに北千住などがランクアップしているのだ

関東の「住みたい街」に起きた異変ブランド地区が復活、穴場地区が失速

 リクルートの住宅・不動産情報サイト『SUUMO』(スーモ)が毎年発表する『住みたい街ランキング2017』の関東版で、今年もランキングに異変が続出した。

 まず目をひいたのが、昨年2位にランクダウンした吉祥寺がトップに返り咲いたこと。王者の堂々たる復帰ということだが、これは今年のランキングを象徴する1つの傾向だ。

 というのは、他にも上位では目黒、渋谷、中目黒といった街がランクを上げている。吉祥寺と同じく、若い世代にとっての「ハイエンドブランド的な街」が軒並み復活しているのだ。同じ文脈で言えば、順位は1つ下げたが、昨年首位の恵比寿、11位の自由が丘、16位の表参道なども、ブランドとしての存在感が高い街である。

 問題は、なぜこれらのブランドタウンの順位が上昇したのかということだ。その答えは後半で述べるとして、2017年のランキングのもう1つの異変に注目をしよう。

 昨年20位に急浮上して「穴場」として注目を集めた赤羽が、今年は21位とワンランク順位を落とした。2014年に放送された山田孝之主演のテレビドラマ『東京都北区赤羽』で注目を浴び、意外とおいしい居酒屋や定食屋、ラーメン屋が立ち並ぶ穴場の街として人気が急上昇したのが赤羽だった。今年はさらにランクを上げるのかと期待していた折のワンランクダウンだったので、「異変」として目についてしまうのだ。

 実は赤羽以外にも、「サブカル的な魅力を持つ住みたい街」はランキングを落としている。「まんだらけ」で知られる中野が昨年より3ランクダウン、秋葉原が7ランクダウン。そして、私が愛して止まないごちゃごちゃして大好きな新宿も、8位から12位へと4ランクダウンしている。

 従来はやや「洗練されていない」というイメージからランクが低かったこれらの街が、昨年は「穴場」として注目されたわけだが、その人気が1年で再び後退し始めた。その理由は何だろうか。これについてもすぐに答え述べずに、さらなる異変を眺めてみよう。

北千住、大宮、立川ランクを上げた「穴場」の共通点

 ランクを下げる穴場がある一方で、ランクを上げた穴場もある。昨年からさらにワンランク上げて17位に入った北千住、6ランク上げた大宮(昨年は三鷹と同ランク)、9ランク上げた立川などである。

 これらの街の共通点は、「便利なターミナル駅」であるということだ。同じ文脈で言うと、上位ベストテンに定着している横浜、武蔵小杉、池袋、そして8ランク上げて5位に急上昇した品川も同じくくりの街だと言える。

 このくくりで象徴的な街は武蔵小杉で、住宅街として洗練されている一方、ターミナル駅としては「東京、品川、渋谷、目黒、恵比寿、六本木、新宿、池袋、横浜、鎌倉、成田、川崎、立川など首都圏の主要駅にすべて1本で行ける自在の交通アクセス」(SUUMO/2016より)が魅力となって、2014年以来トップテンに定着している。

 つまり、2017年の「住みたい街ランキング」の特徴としては、吉祥寺や中目黒などブランドタウンの順位が上がったと同時に、北千住や大宮などターミナル駅の順位が堅調なのである。一方で、2016年に「穴場」として注目された街が後退している。このことが意味をするものは何なのだろうか。

 実は今、首都圏の不動産価格は「混乱している」と言われている。

 日銀の異次元緩和が始まって以来、首都圏の不動産価格は上がり続けている。これが公式の報告だ。確かに、首都圏の新築マンション価格は上昇を続けている。

 実際、今年のゴールデンウィークにいくつか首都圏の新築物件を回ってみたのだが、私が2002年に自宅を購入した際に7000万円くらいの予算で探していたのと同じ条件の都心の高級マンションを探してみると、現在の売出価格は1億2000万円から1億4000万円になってしまう。私が一番素敵だと思った、宮内庁の国有地を払い下げて建設された高級マンションは、同じ広さだと2億円を超える価格になる。

 これは私が記憶しているバブル当時と同じ現象で、物件としてはとてもいいのだが、とにかく価格に手が届かない。そして年収2000万円くらいの超高給取りのビジネスパーソンでも、思い切って契約書にサインをしてしまうと、意外とリスクが高い。そんな価格帯だ。

 バブル時の地価高騰のときは、バブル崩壊後に高給取りのサラリーマンの年収が激減し、同時に物件の価格も半分以下になって、多くの人がローン破綻した。不動産価格が上昇している背景がその当時とは違うから、同じことが起きるとは言えないが、それでも今の新築物件価格は、賃貸で運用すれば採算が合わないレベルの価格帯になってきているのは事実だろう。

 それを裏付けるように、中古マンションの価格が下がり始めた。ここが「不動産価格が混乱している」と言われる理由で、これまで新築と同時に上がり続けていた中古価格が反転した。中古マンションを買う目的は自分で住むか賃貸に出すかだが、あまりに価格が高いと賃貸に出しても採算が合わなくなる。だから中古マンションの市場価格は経済実体に近くなってゆく。

異変の背景に不動産市場の調整が?サブカルの街・赤羽はそのままでいい

 さて、今年の「住みたい街ランキング」の異変は、そう考えると理由が読めてくる。昨年(2016年)のランキングでは、首都圏全体で不動産価格が高くなりすぎ、結果として多くの街で家賃の上昇が起き、住みたくない街になってしまった。一方で、意外と家賃の安い街が「穴場」として注目を浴びたのではないかというのが私の推理だ。その象徴が、かつては「住みたくない街」と言われていた赤羽のランク上昇である。

 そして2017年。家賃や中古マンションの価格は適正な方向に揺り戻しが起きている。まだ高いことには変わりはないが、それでも定番の「住みたい街」が「住めない街」ではなくなりつつある。

 だから、「便利」なターミナルの街と「憧れ」のブランドの街の順位が今年は上がった。そうは考えられないだろうか。

 私は赤羽のようなサブカルの街は大好きである。ただ、サブカルはあくまで「それが好きな一部の人たち」のものでいいのではないか。その意味で、赤羽が「穴場」として大衆が憧れる街になるという現象は、早めにトレンドから消えてくれたほうがいい。私はそう思うのだが、読者諸氏はどう思われるだろうか。

(百年コンサルティング代表 鈴木貴博)

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