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「高卒向けのリンクトイン」 米国で1億人が利用するJobcaseとは

Forbes JAPAN のロゴ Forbes JAPAN 2019/12/03 12:00 Vicky Valet

© Forbes JAPAN 提供 サーシャ・コントレラス(55)は、ゼロックスでの時給12ドルのカスタマーサービスの仕事を辞め、米ワシントン州エルムでの生活を諦めねばならなかったとき、途方に暮れた。夫は2016年2月、ミシシッピ州の地方部にあるカジノでシェフとして働き始めた。コントレラスはその翌年、17年連れ添った夫が浮気をしていたことを知った。

失業した上に独り身となった彼女は、グーグルを使って求人情報をひたすら検索する日々を送る中で、あるサイトを見つけた。ブルーカラーやサービス業で働く人向けの求人情報を集めた交流サイト(SNS)「ジョブケース(Jobcase)」だ。

「このサイトのおかげで、文字通り人生が変わった」。同サイトに無料で登録したところ、数百万件の求人情報や、他の利用者が投稿した有益な情報を閲覧することができた。投稿者の多くは、孤独な職探しに悩んでいた。

コントレラスは2017年7月、ある投稿に張られていたリンクをきっかけに、時給10ドルのカスタマーサービスの仕事を得た。そして2年後、またもやジョブケースのおかげで、今度は時給13ドルのカスタマーサービス職に転職。現在は特に転職の希望はないものの、毎日ジョブケースにログインしている。「気になる投稿があれば、コメントするようにしている。求職中の人の気持ちが分かるから」

ジョブケースを創業したフレデリック・ゴフ最高経営責任者(CEO)は、コントレラスの体験談を聞いた後、「これを皆のためにしなくては」と語った。ゴフは2015年、リンクトインができなかったことを実現させるべく、マサチューセッツ州ケンブリッジでジョブケースを立ち上げた。米国では、労働年齢に達した人のうちの8割が、4年生大学を卒業していない。ジョブケースが目指したのは、こうした人々が交流し、求人情報を検索し、キャリアを築いていけるサイトだ。

ゴフは、ジョブケースのために1億1850万ドル(約130億円)の資金を集めた。調査会社ピッチブックは同社の価値を4億4500万ドル(約485億円)と見積もっている。収入はアマゾン・ドット・コムやピザハット、フェデックスなどの企業2000社から得ており、ゴフはここ1年の売上高を1億ドル(約110億円)と推定。こうした企業が支払う額は、求人情報の掲載が1件当たり199ドル(約2万2000円)、ジョブケース主催の採用イベントへの参加が5000ドル(約55万円)などだ。

ジョブケースは、米国のターゲット層1億9700万人のうち、既に1億1000万人を会員として確保している。さらにゴフは、今後1年半以内にサイトを世界展開する予定だ。主要20カ国・地域(G20)では人口の84%が大学を卒業していない。ゴフは、この市場を開拓することで会員数10億人と企業価値10億ドル(約1兆1000億円)を早期に実現できると見込んでいる。

現在52歳のゴフは、同サイトの会員が抱えている苦難を、自らの経験と重ねる。元海兵隊の父は、オハイオ州トレドのクライスラー工場でトランスミッション修理工として働いた後、生命保険のセールスマンになった。ゴフはカーネギーメロン大学で修士号を取得したものの、卒業と同時に1990年の不況に見舞われ、4カ月の間トレドで皿洗いの仕事でしのがねばならなかった。

ゴフはその後、ニューヨークでオプショントレーダーとして一時働いた時期を経て、マサチューセッツ工科大学(MIT)で2つ目の修士号(テクノロジーマネジメント)を取得。さらにもうひとつの不況を乗り越え、本当は希望していなかったオクラホマシティのエネルギー企業の最高情報責任者(CIO)職に就いた後、ケンブリッジのヘッジファンド、パーシピオ・キャピタル・マネジメントのCEOとなった。

2008年の金融危機で経営に行き詰まると、ゴフはパートナーらを説得し、自身が新たに立ち上げたパーシピオ・メディア(Percipio Media)への支援を取り付けた。同社は、他のサイトから求人情報を収集し、余計なものを排除した求人掲示板を立ち上げた。

同社の業績は順調だったが、2014年にラスベガスで行われた人事管理関係のカンファレンスに参加したゴフは、自社の掲示板の利用者がより多くのサポートを必要としていることに気づいた。リンクトインでは洗練された履歴書風プロフィールを作成できるものの、地元トレドのビジネスコンビニ店従業員のような人々には何の役にも立たなかった。ゴフはパーシピオの求人掲示板事業を子会社化し、組織を再編してジョブケースを創業した。

ゴフはジョブケース立ち上げに当たり、「コミュニティー」の形成を重視したという。その中核となっているのは、次々と寄せられる投稿だ。これが、サーシャ・コントレラスの5カ月にわたる就職活動で精神的支えとなった。

同サイトを通じて実際に仕事を見つける人はどれ位いるのだろうか? 本記事執筆のためにフォーブスが取材した31人のうち、ジョブケースを利用して職を得たのはわずか2人だった。一方で、全員がジョブケースのコミュニティーを気に入っていると回答した。そのうちの一人、ロンダ・エーツ(51)は「気持ちを吐き出すのにとても良い場だ」と語る。エーツは別のサイトを通じて、ケンタッキー州レキシントンの梱包材業者での製造スケジュール管理の仕事を見つけた。

会員の大半は職を得てもそれについて報告しないが、ゴフは昨年ジョブケースを通じて就職した人数を全体の1%に当たる100万人と見積もっている。割合はこのように非常に低いものの、雇用側からの依頼は絶えない。コーネル大学のJR・ケラー助教授(人材管理学)は、失業率が過去最低水準にある今、企業側は求人広告が応募に直接つながるとは考えていないと指摘。「企業は真に優秀な人材を必死に探している。1億人のコミュニティーがあれば、チャンスを逃すまいと、そこに求人情報を掲載する」と述べる。

ゴフによれば、ジョブケースは創業当初から黒字だったが、2018年以降は会員数拡大に資金を投じている。同社は今年6月、シカゴ・アーバン・リーグ主催の就職フェアのスポンサーとなり、これを通じて8000人の新規会員を得た。

ゴフの夢は、ジョブケースの知名度をもっと上げ、働く人たちが同サイトを利用して職場環境の改善を求められるようにすることだ。「私たちは、株主価値だけでなく労働者にとっての価値も優先することで、資本主義を推進したいと考えている」と彼は言う。「それは会員から始まる」

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