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マイクロソフトがほれた「GitHub」とは何者か 75億ドルの大型買収で狙う「クラウド」強化

東洋経済オンライン のロゴ 東洋経済オンライン 2018/06/14 08:00 中川 雅博
6月12日に東京で行われたギットハブのイベントには、同社のジェイソン・ワーナー上級副社長(左)が参加。日本マイクロソフトの榊原彰CTO(最高技術責任者、写真中央)も駆けつけた(記者撮影) © 東洋経済オンライン 6月12日に東京で行われたギットハブのイベントには、同社のジェイソン・ワーナー上級副社長(左)が参加。日本マイクロソフトの榊原彰CTO(最高技術責任者、写真中央)も駆けつけた(記者撮影)

 「ウインドウズの会社」から「クラウドの会社」に変わろうともがく米マイクロソフト。大型買収はその象徴となれるのか。

 6月4日、マイクロソフトは米GitHub(ギットハブ)社を75億ドル(約8300億円)で買収すると発表した。同社のM&Aとしては、2016年の米リンクトイン(262億ドル)、2011年の米スカイプ(85億ドル)に次ぐ、過去3番目の規模となる。

エンジニアの必需品、それがギットハブ

 ギットハブは2008年に設立された企業で、ソフトウエアエンジニアにとって欠かせない開発プラットフォームとなっている。利用者は全世界で2800万人を超え、個人だけでなく、スタートアップから大企業まで法人の利用も活発だ。

 ギットハブの「ギット」とは、エンジニアが書くプログラムコードのバージョンを管理できる仕組みを指す。ワードやエクセルのファイルと同様に、コードでも前後のバージョンでどのような変更(差分)があったかを確認したい場面は多い。また、前のバージョンに戻したい時もある。そうした管理ができる技術として、ギットは主流なものの1つだ。

 自分のパソコンにギットの情報を保存することもできるが、ほかのエンジニアと共同作業をしようとすると、変更があるたびにファイルを共有しなければならない。そこでギットハブを使えば、オンライン上で変更箇所を確認できたり、複数のバージョンを統合できたりする。

 近年のソフトウエア開発で重視されているのが、「オープンソース」の文化だ。自分が作ったツールを全世界に無料で公開することで、ほかのエンジニアも利用できるほか、バグを直してくれたり、新たな技術の発展も生まれるというメリットがある。

 エンジニアが用いる技術の多くはオープンソースだ。そしてギットハブでは、オープンソースのツールのほとんどが管理されている。”オープンソースの聖地”との異名を取るのもそのためだ。

 同社のテクノロジー担当上級副社長、ジェイソン・ワーナー氏は「開発環境は複雑化するばかり。オープンソースで開発者がつながり合うことによって、皆で問題解決をできるようになった」と語る。

 そんなギットハブをマイクロソフトはなぜ、巨額の費用を投じて買収するのか。

 かつてのマイクロソフトといえば、「ウインドウズ」や「オフィス」を中心に独自のソフトや端末を売ることに終始する”閉じた”ビジネスモデルを展開していた。特にスティーブ・バルマー前CEOは、オープンソースの代表格であるOS「リナックス」を徹底的に敵視するなど、他社を排除する姿勢が明確だった。

 だが、2014年にバルマー氏の後任として就任したサティア・ナデラCEOはそれまでの方針を転換。クラウドインフラサービス「アジュール」を成長の柱と位置付け、アジュール上ではリナックスを使えるようにするなど、真逆のオープン戦略を進めている。

 実際、ギットハブの買収発表の電話会見で強調されたのは「Microsoft Loves Open Source(マイクロソフトはオープンソースが大好きだ)」というメッセージだった。

 同社の約1万7000人の社員がギットハブにオープンソースプロジェクトを投稿しており、単独企業として最大のコントリビューター(貢献者)となっている。ナデラCEOは「われわれは開発者ファーストの会社だ」と強調する。

すべてはクラウドビジネスのために

 クラウドビジネスの成否は、開発者コミュニティの規模で決まるといっても過言ではない。調査会社ガートナージャパンの亦賀(またが)忠明・最上級アナリストは、「新しいデジタルサービスは今後、クラウドから出てくる。それを作る人がいなければプラットフォームは成長しない。マイクロソフトは開発者コミュニティ形成の部分で弱かった」と指摘する。

 こうしたオープン戦略で先行するのが、米アマゾンが展開する業界シェア首位のクラウド事業、アマゾン・ウェブ・サービス(AWS)だ。「AWSは使いやすいツールやサービスを常に出し続け、エンジニアを引き付けてきた。コミュニティ作りもうまい」(亦賀氏)。

 マイクロソフトのアジュールも、売上高は四半期ごとに前年同期比2倍の成長を続けている。取り組みが株式市場で評価され、株価も上り調子。5月末には米グーグルの親会社アルファベットを株式時価総額で一時追い抜いた。これはアルファベットにとって、設立以来初めてのことだった。

 マイクロソフトにとってギットハブを傘下に加えるということは、“マイクロソフトびいき”の開発者を増やす狙いがあるといえる。また、ギットハブの法人ユーザーにアジュールのクラウドサービスを提供し、顧客として取り込むといったことももくろむ。

 一方、オープンソースの聖地が一企業の傘下に入ることに懸念を示すエンジニアは少なくない。実際、ギットハブからのユーザー流出が起き始めているようだ。日本企業で働くあるエンジニアは、「ギットハブが自由を失って失望した人たちがいるのは確か。ギットの技術を持つサービスはほかにもあり、流動が大きくなればギットハブ1強の勢力図が変わるかもしれない」と指摘する。

 これに対しギットハブのワーナー氏は、「買収されたことによる変化はほぼゼロ。自社データセンターも維持するし、同じくマイクロソフトに買収されたリンクトインや(ゲーム会社の)マインクラフトのように彼らのサービスとは統合しない。独立性を最重視する」と強調した。

 マイクロソフトはギットハブ買収で自らの信頼性を高め、エンジニアを引き付けることができるか。今後の動きに注目が集まりそうだ。

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