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不倫がこんなにも世の中の関心事になる理由 週刊誌、ドラマ、ネット…止まらない連鎖

東洋経済オンライン のロゴ 東洋経済オンライン 2020/02/14 17:00 木村 隆志
願望アリでもナシでも気になってしまう不思議をひもときます(写真:kieferpix/iStock) © 東洋経済オンライン 願望アリでもナシでも気になってしまう不思議をひもときます(写真:kieferpix/iStock)

 先週2月5日、東出昌大さんと唐田えりかさんの騒動がいまだ収束しない中、鈴木杏樹さんと喜多村緑郎さんの不倫が報じられました。

 週をまたいだ12日には、「文春オンライン」の「『鈴木杏樹さんを許さない』不倫相手の妻・貴城けいが悲痛告白」、13日には「NEWSポストセブン」の「鈴木杏樹と不倫の喜多村緑郎、尾上松也の妹とも不倫した」が報じられるなど、不倫をめぐる報道はさらに過熱しています。

 テレビ番組で扱われた不倫もTwitterのタイムラインをにぎわせました。12日放送のドラマ「知らなくていいコト」(日本テレビ系)で主人公の週刊誌記者・真壁ケイト(吉高由里子)は不倫ネタをスクープする一方で、既婚者の元カレ・尾高由一郎(柄本佑)への思いを募らせ、踏みとどまろうとしながらもキスしてしまうシーンがあり、賛否の声で盛り上がっていたのです。

 現在発売中の週刊誌に目を向けても、『週刊文春』が「安倍首相も怒った『不倫審議官』大坪寛子 新型肺炎で大失態」、『女性自身』が「鈴木杏樹4千円ラブホ不倫にマル秘覚悟『略奪愛でも再婚したい!』」、『週刊女性』が「ひきこもり息子を暴発させた禁断の“不倫婚約”」、『FRIDAY』が「鈴木杏樹 高級外車で休憩料金4000円 ラブホ不倫」など、「不倫」の文字が散見されます。

 ネットも、テレビも、雑誌も、これほど「不倫」というネタを扱っていることにあらためて驚かされますし、これは裏を返せば「見る側のニーズがあるから」にほかなりません。なぜ世間の人々は「不倫」というテーマにここまで引かれるのでしょうか?

 各メディアに出入りしているコラムニストとして、また、数多くの不倫相談を受けてきたコンサルタントとしての立場から、その理由をひもといていきます。

濃密な三角関係が議論を活発にする

 そもそも不倫は犯罪ではなく刑事罰こそ受けないものの、民法上の不法行為に当たり、被害者に損害賠償する責任を負うもの。「禁止されるほど興味を持ち、やってみたくなる」カリギュラ効果という心理法則があるように、まずは「社会的に禁じられていることだから」という点が人々を引きつける前提となっています。当たり前の話ですが、一夫多妻制が認められている地域では、日本のように不倫騒動で盛り上がることはありません。

 「社会的に禁じられている」の次に人々が引かれる理由となっているのは、不倫は必ず三角関係になること。元凶である既婚者、その配偶者、不倫相手の三角関係が明確であり、しかも加害者と被害者の明暗がはっきり分かれるため、本人たちだけでなく赤の他人を巻き込んで「ああだこうだ」という意見が飛び交いやすいのです。

 相関図をイメージすると、三角関係は三者それぞれの立場から語れるため議論が活発になりやすい一方、1対1の恋愛・結婚ではそれほど盛り上がりません。

 長いコンサル経験の中で1度だけ、「不倫当事者の3人と会って話を聞く」という機会がありました。

 まず妻子のいる30代後半の男性は「不倫相手のことを本気で好きになってしまった。でも家族とは別れられないし、できればどちらとも決着をつけたくないと思ってしまう」、次に30代後半の妻は「浮気は許せないけど、それだけで別れるかというと話は別。私は被害者だから相手の女性からできるだけ慰謝料を取りたい」。

 最後に20代後半の不倫相手は「いけないことをしたのはわかっているけど、彼とは別れられないので、できれば奥さんとうまく別れてほしい」と、それぞれ本音を語りました。

発覚後も身勝手な感覚は改まらず

 少し補足をしておくと、このコンサルは「穏便な解決につなげるため」という前提のものであり、3人とも常識的な感覚を持った人物でした。しかし、男性と不倫相手は、不倫そのものが自分本位の行為であるにもかかわらず、発覚後もその身勝手な感覚を改められなかったのです。

 このような身勝手さは彼らだけでなく、不倫をする男女によく見られる傾向であり、日ごろ会社や学校、家族や地域の中では見せない別の顔。そんな身勝手な別の顔を知った人々は、批判したくなったり、軽蔑の目で見たりなど、過剰反応してしまうのです。

 上記は実話ですが、これを週刊誌で記事化しても、テレビドラマ化しても、彼らの三角関係は、それなりに見る人の関心を引くものになるでしょう。それは「妻が正義で、夫と不倫相手は悪」という図式で勧善懲悪のストーリーを作り上げることが容易であり、見る人の関心を引き出しやすいからなのです。

 人々が不倫に引かれる理由の1つに、ストレス社会とネットの普及が挙げられます。

 日々の生活が便利になった反面、格差、競争、監視、管理、同調などの窮屈さを感じやすく、ストレスを抱えやすい世の中になりました。また、人間には「人から被ったストレスは、人で解消しよう」という心理傾向があり、不倫当事者のような悪と認定しやすい人を「バカにしたり、罰したりすることで解消しよう」という感覚に陥りがちです。

 例えば、会社の上司から受けたストレスは、基本的に趣味や食事などの1人で行えることでは完全に解消できません。ストレスが心の中に残るため、不倫当事者のような悪と認定しやすい人に罵声を浴びせることで解消しようとします。また、そうした行動を好まない人は、ドラマの悪役が成敗される姿を見て溜飲を下げるなど、やはり人から受けたストレスは人が関わるもので軽減させようとするものです。

 ネットの普及で個人が発信できるようになったことも、不倫という言葉を肥大化させました。不倫報道があると必ずと言っていいほど、「許せる、許せない論争」が起こりますが、ネットでは全面的に賛成や反対されるものより、賛否両論のほうが盛り上がりやすく、それが続くほど不倫という言葉が世間の共通語となっていくのです。

 「不倫という言葉をよく見るようになった」から、「会話の中でよく聞くようになった」から、今まで不倫に関心がなかった人も簡単にはスルーしなくなりました。「どんな不倫なのだろう」と気になり、記事や番組を見たことで、「私はこう思う」と自分の意見をネット上に書き込む人は少なくないのです。

身近なものだがファンタジーでもある

 ここまで不倫当事者を「批判したい」「罰したい」という人間心理を挙げてきましたが、人々の感情は一面的ではなく複雑なもの。嫌悪感や正義感だけではなく、「もし不倫したら」「不倫してみたい」という真逆の感情を消し去れないからこそ、不倫は関心事であり続け、世間の共通語となっているのです。

 不倫に批判的な人も、「不倫は誰にでも可能性があること」「隣家の夫や隣の同僚が不倫しているかもしれない」という身近なものであることは否定できないでしょう。しかし、身近なものであるにもかかわらず、現実的には不倫しない人のほうが圧倒的に多いファンタジーのようなものでもあり、だからこそ引かれやすいのです。

 また、罵声を浴びせる人が多いのは、「ほどほどの悪事だから」という側面もあるでしょう。前述したように不倫は刑事罰を受ける犯罪ではないため、「しょせん不倫は第三者がどんなにたたいたところで、当事者は命を取られるわけでも、社会的に抹殺されるわけでもない」ことを多くの人々は知っています。

 たとえば、東出さんをどれだけたたいても、現在の地位や活躍の場を奪えるというだけで、その効力は限定的。東出さんの姿勢や努力次第ではありますが、遅くとも数年後にはチャンスが得られる状態に戻るでしょう。東出さんに罵声を浴びせている人の大半は、「しょせん不倫」という悪事の程度をわかったうえで声をあげ、「他人がどうこう言う問題ではなく当事者間の話」であることも理解しているはずです。

普通の恋愛・結婚では反応されない

 最後に、メディアが不倫ネタを重視している背景を挙げていきましょう。

 恋愛が最大の関心事だったころは、普通の恋愛・結婚でも記事や番組にすることで関心を集め、一定以上の成果を得ることができました。しかし、個人の関心事が分散し、趣味嗜好も細分化した現在の世の中は、恋愛・結婚に占めるウェートが大幅に減少。

 普通の恋愛・結婚では一部の人々の関心しか集められず、不倫のような際立ったものでなければ多くの人々から反応してもらえなくなりました。メディアもビジネスである以上、多くの人々が反応するネタを選ぶのは当然なのです。

 また、芸能人や政治家のような好感度をベースにした職業は、不倫報道で生じるマイナスギャップが大きく、「裏の顔を明かした」というスクープの要素が色濃くなります。そのため私の知人記者たちの中には、有名人の不倫ネタをつねに持っている人が少なくありません。よりセンセーショナルな印象を与えるために、詳細をつかんで臨場感を出し、決定的な写真を撮り、最良のタイミングを見計らって世に送り出そうとしているのです。

 メディアにとって不倫は、「当事者が3人いるため、それぞれの立場から続報が出しやすい」こともポイントの1つ。実際、「文春オンライン」が先週は不倫した鈴木杏樹さんと喜多村緑郎さん、今週は貴城けいさんにクローズアップした記事を出し、「NEWSポストセブン」も喜多村さんの新たな不倫疑惑を報じたことがそれを物語っています。

 次にテレビドラマにおける不倫の狙いは、人間の業や罪、怒りや赦しなどを描きたいから。とくに「踏みとどまるか、感情に流されるか」「怒り狂うか、許そうとするか」などと葛藤するシーンはドラマティックであり、大きな見せ場になっています。

 冒頭に挙げた「知らなくていいコト」も「踏みとどまるか、感情に流されるか」が描かれましたし、それを見た視聴者の「ホントはダメなことだけどいいシーンだった」「不倫はドラマで見て楽しむもの。実際にやっちゃダメ」などの好意的なコメントが見られました。不倫を扱うドラマは昭和のころからありましたが、かつては劇薬のように扱われていたのに、現在は常備薬のような日常的なものとして描かれているのです。

 晩婚化や離婚率が上昇する一方で、独身者が増え、スマホを使って連絡が取りやすくなったりなど、以前よりも不倫がしやすい世の中になりました。だからなのか、不倫への風当たりが強くなっても、不倫願望のある人は減っていませんし、不倫をする人は繰り返しがちなだけに、まだまだ不倫報道や不倫を扱った番組は続くのではないでしょうか。

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