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半導体、「微細化」止まり、材料屋が儲かるワケ サムスン、東芝が動き出す「物量作戦」の裏側

東洋経済オンライン のロゴ 東洋経済オンライン 2018/06/13 08:00 藤原 宏成
© 東洋経済オンライン

 「韓国サムスン電子の役員が、製造装置メーカーの下請けにまで乗り込んで、はっぱをかけたらしい」――。

 サムスン電子といえば、2017年に米インテルを追い抜き、半導体の売り上げで世界首位に立つなど拡大路線を推し進めている。そんな世界のトップメーカーが下請けの下請けに乗り込んだとうわさが流れるほど、半導体業界は活況を呈している。

 業界の統計機関が出した世界半導体市場統計(WSTS)によると、半導体の販売額は2017年に前年比21.6%増の4122億ドル(約45兆円)を記録。2018年も同12.4%増の4634億ドルと2年連続の2ケタ成長を見込んでいる。

 業界ではこれまで、20%を超えるような成長の後には、大幅な成長鈍化が起こる「シリコンサイクル」という好不況の波に悩まされてきた。ところが近年は半導体メーカー、半導体製造装置、半導体材料など、すべての領域で受注に対応しきれない好調ぶりだ。そのため、過去の苦境を知る業界関係者たちにも、「これまでのシリコンサイクルを超えた”スーパーサイクル”に入った」(野村証券和田木哲哉アナリスト)という見方が広まっている。

メモリが活況な中、微細化が鈍化

 現在、もっとも好調なのがサムスンや東芝メモリといった半導体メーカーだ。特にメモリ半導体は、これまでPCやスマートフォンのデータ記憶に用いられてきたが、最近ではデータセンターのサーバー向けの用途が拡大している。

 あらゆるものがインターネットにつながるIoT時代では、世界に流通するデータの量は急増していく。通信機器の製造・販売を行う米シスコが公表したレポートによれば、2016年から2021年の5年の間にモバイルネットワーク上でやり取りされるデータ量は7倍まで増加する見通しだ。

 流通するデータの量が増えれば、それを保存する倉庫が必要になる。倉庫の役割を担う大規模なデータセンターは2021年までにほぼ倍増する見込み。しかもデータセンターでは、およそ5年ごとにサーバーの入れ替えが必要とされるため、膨大なメモリ半導体の需要が生まれる。

 メモリ半導体の分野で断トツのトップを走ってきたサムスンは、2017年度、半導体部門の売上高7兆4260億円(前年比45%増)、営業利益は3兆5200億円(同259%増)と異次元の利益水準を見せ、売上高でもついに業界首位に上り詰めた。2位の東芝メモリや4位の韓国SKハイニックスもサムスンの追撃に必死だ。

 空前の活況に沸くメモリ半導体メーカーだが、技術的な課題は高まっている。半導体の進化とも言える「微細化」がいよいよ限界に差し掛かっているのだ。

 半導体はこれまで、半導体回路の線幅を細くし、回路を小さくする「微細化」によって省電力化、高性能化、面積の縮小といった技術革新を進めてきた。

 これを経験則的に言い表したのが大手メーカー・インテルの創業者ゴードン・ムーア氏が1965年に提唱した「ムーアの法則」だ。これは「半導体の集積率が18カ月で2倍になる」というもので、これまで半導体メーカー各社はこのペースを維持するように微細化を進めてきた。

 しかし、メモリ半導体はこれ以上の微細化を行うと性能面で支障をきたすレベルまで微細化を遂げつつある。従来の方法で線の幅を細くしていく方法はもう使えなくなる。メモリ半導体の一種であるNANDでは、回路を縦方向に積み上げる3次元化で微細化を進めるが、歩留まりも悪く、従来のペースで微細化を進めることはできていない。

 「今までメモリ半導体メーカーは、製造装置を最新のものに置き換え、微細化することで性能を上げてきた。だが、微細化がスローダウンしたことで、性能を上げるよりも、新しいラインを足すような増産に走っている」とある半導体業界の首脳は指摘する。

 実際、サムスンは中国・西安工場、韓国・平澤工場でそれぞれ新棟を建設。東芝も四日市工場の第6製造棟に加え、岩手県北上市にも新工場を建設している。それぞれ物量作戦への移行を図っていることが見て取れる。

製造装置、材料メーカーに追い風

 こうした物量作戦の恩恵を受けるのが、製造装置メーカーや材料メーカーだ。製造装置メーカーの東京エレクトロンやSCREENホールディングスなどは軒並み、過去最高の純益を更新するなど絶好調だ。

 材料メーカーでもSUMCOの好調が目立つ。同社はシリコンウエハで世界シェア約3割とトップクラスを誇る。シリコンウエハは半導体の基盤に当たる材料で、メーカーはウエハの上に化学薬品を塗布して回路を投影、現像することで、半導体が完成する。

 シリコンウエハは微細化との関係が深い。たとえば同じ性能のチップを作るにしても、集積率が2倍になれば、従来の半分のウエハの面積で作ることができる。これまでは半導体需要が伸びても、微細化の効果で相殺され、ウエハの出荷数量は伸び悩んできた。

 ところが、メモリ半導体メーカーの微細化が鈍化する中、急増したデータセンターの膨大な需要が押し寄せる。期待の3次元NANDの歩留まりもなかなか上がらず、物量作戦に舵を切った。

 これを受けてウエハの需給は逼迫したが、各社がなかなか増産しなかったため、ウエハの価格が高騰。2017年に20%、2018年も20%、2019年に10%と当分上昇が続く見込みだ。

 その結果、SUMCOの業績もうなぎのぼりだ。2017年12月期の売上高は前年比23.3%増の2606億円、営業利益は420億円と前年の140億円からで約3倍で着地。2018年1~3月期(第1四半期)も売上高は前年同期比28%増、営業利益は143%増と順調に滑り出している。

SUMCOが増産に慎重なワケ

 一部の半導体メーカーからは「ウエハの調達が懸念材料になっている」という声も聞こえる。SUMCOも2017年8月に10年ぶりの増産を発表。300ミリメートルウエハの設備を増強し、2019年をめどに月産11万枚を増産するが、半導体メーカーの求める量には到底及ばない。

 足元の世界ウエハ出荷枚数は月580万枚程度と言われている。増産分を加味しても600万枚程度にしかならない。一方、SUMCOの顧客予想を合計したデータでは2020年には月760万枚のウエハが必要になる。増産をするとはいえ、慎重なことに変わりはない。

 SUMCOが増産投資に慎重なのは2008年に大規模投資に踏み切った結果、ウエハの需給が緩んで、大幅な価格の下落を招いた経験があるからだ。「過去の過ちを繰り返さないよう、今後も逐次増産で対応していく」(会社側)という。

 調査会社IHSマークイットの南川明主席アナリストは「メモリの微細化は、NANDはすでに限界を迎えており、DRAMも15ナノメートル前後で限界を迎えるだろう」としており、「今はまだ見えていないが、3次元化のような全く新しい方向を探す必要がある」(同)と語る。

 微細化が限界を迎える中、さらなる物量作戦が続くのか、新たな微細化の道を見つけるのか。製造装置メーカーや材料メーカーは半導体メーカーの動向を注視している。

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