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新Apple Watchが遂げた驚異的進化の全貌 今回はiPhoneよりこっちのほうが驚きだった

東洋経済オンライン のロゴ 東洋経済オンライン 2018/09/14 07:30 松村 太郎
9月12日、アップルのスペシャルイベントで発表されたApple Watch Series 4(筆者撮影) © 東洋経済オンライン 9月12日、アップルのスペシャルイベントで発表されたApple Watch Series 4(筆者撮影)

 アップルは米国時間9月12日に本社Apple ParkのSteve Jobs Theaterで開催したスペシャルイベントで、iPhoneの新ラインナップ3機種とともに、Apple Watch Series 4を発表した。予約は9月14日から、発売は9月21日からとなっている。

 価格はGPS搭載モデルが4万5800円から、GPS+セルラーモデルが5万6800円からとなっている(いずれも税抜)。またApple Watch Series 3はGPSモデルが3万1800円から、GPS+セルラーモデルが4万2800円からと値下げされた。

 今回、予想通りのデザインや機能、そして名前が付けられたiPhoneシリーズに対し、Apple Watch Series 4は驚きを持って受け止められた。その理由について探る。

2018年モデルのキーワードは「健康」

 Apple Watchは2014年9月に発表され、2015年4月に発売された。発売以来、スマートウォッチ市場を牽引するだけでなく、売上高はロレックスを含むすべての腕時計の中で世界一となった。ただ、そのマーケティングのメッセージは刻々と変化してきた。

 当初はフィットネス機能を重視し、心拍センサーと加速度センサー、そして独自に構築したアルゴリズムの組み合わせにより、より正確なカロリー消費の計測を行ってきた。アルゴリズムの進化は、スイミングの泳法の検出まで行えるほど充実している。

 続いて、昨年はセルラー機能を備え、Apple Watch単体で出掛けても電話やメールをiPhoneなしで利用できる「接続性」に力を入れた。公開を控えるwatchOS 5では、簡単なトランシーバーのようなアプリ「Walkie Talkie」も利用できるようになる。

 そして2018年モデルで取り入れる新しいキーワードは、健康だ。一見フィットネスと重なるようにも見えるが、その予想をはるかに超える変化がもたらされることになる。

 その前に、Apple Watchのデザインが初めて変更となった点に触れる。これまでぷっくりと膨らんだケースとカバーガラスに有機ELディスプレーを組み合わせたデザインで、38ミリ、42ミリの2つのサイズが存在してきた。
しかし今回初めて、時計のサイズを拡大させ、40ミリ、44ミリとなった。もちろんこれにより、画面サイズも大きくなったが、ギリギリまで敷き詰めるディスプレーを採用したことから、40ミリモデルは35%、44ミリモデルでも32%画面サイズが拡大している。

 この拡大した画面には、新たにデザインされたコンプリケーション(文字盤に表示させるアプリ)や新しい文字盤が用意された。たとえば8つのアプリの情報を配置することができる文字盤では、気温であれば最高・最低気温の把握、タイマーなら経過時間の表示など、インフォグラフと呼ばれる情報のビジュアル表現が用意された。

 画面サイズが大きくなったこともあり、いま42ミリモデルを使っている人にとっては、Series 4の40ミリモデルを選んでも、さほど小さいと感じないかもしれない。逆に44ミリモデルを選ぶと、明らかに大型の腕時計に変わったという印象を受ける。買い換えを考えている人は、一度店頭で試してみるとわかりやすいのではないだろうか。

 ちなみに、これまで使っていた38ミリ、42ミリのバンドは、それぞれ40ミリ、44ミリのケースに利用することができ、お気に入りのバンドを移行することができる。

真っ黒な背面のヒミツ

 もっとも大きく変化したのは薄型化と背面だ。背面はブラックセラミックを全面に配置し、中央部分にサファイアガラスがあしらわれたセンサーが備わる。金属の領域を拡大させた理由は、電波の受信効率を高めるため、と説明があった。接続性を重視している改良と言える。

 しかしそれだけではない。

 Apple Watch Series 4には、心拍センサーに加え、心電図(ECG)測定機能も内蔵されたのだ。米国食品医薬品局(FDA)の認可を取得しており、手首の腕時計でいつでも心電図を取ることができ、PDFで出力して担当医に提出し、診察に役立てることができるようになる。

 なお、日本向けのApple Watch Series 4では心電図の機能は当面利用できない模様だ。医薬品医療機器総合機構のウェブサイトによると、心電図(ホルタ解析装置)はクラスIIの管理医療機器に分類され 、解析用プログラムはJIS規格で定められている。心電図を測定するには、アップルはこれらの認可を受ける必要がある。

 米国でもFDAの認可を得るには1年以上がかかることから、アップルが長らくヘルスケアに取り組んできたことを物語る。

もう1つの目玉は「転倒検出機能」

 もう1つ、Apple Watch Series 4には、「転倒検出機能」が用意された。

 「転倒」と一口で言っても、いろいろなパターンがある。踏み台から落っこちたり、転んだり、滑ったり、いすの背もたれにもたれかかって、そのまま後ろに倒れることだってある。それぞれの転び方によって、受けるダメージやケガの大きさも変わってくる。

 そこでアップルは、2500人ののべ25万日分のデータを収集し、さまざまな転倒時の加速度データを集め、「転倒検出のアルゴリズム」を構築したという。このことからも、数年間の研究開発が伴っていることがわかる。

 スポーツの消費カロリーを正確に記録するためにさまざまな人にその種目の運動をしてもらい、カロリー消費のアルゴリズムを作成したが、これと同じ手法だ。

 Series 4の加速度センサーは32Gまで検出できるダイナミックレンジを確保し、強い衝撃のより詳細なデータを発見することができるようにした。ハードウエアの刷新とこれに組み合わせるソフトウエア、アルゴリズムの開発により、Apple Watchは人が転んで重大な影響が出る可能性を発見できるようになった。

 転倒を検出すると、画面には緊急連絡先への連絡画面が表示される。何事もなければ、その画面を自分でキャンセルできるが、1分間操作がなければ自動的に発信される。こうして、転んで動けなくなり、助けを呼ばなければならないとき、あるいは意識を失った際に、Apple Watchを役立てることができるようになった。

 Apple WatchはiPhoneとペアリングして利用するが、iPhoneのヘルスケアアプリには、転倒回数が記録される。

 実は、心電図も転倒検出も、計測することができる専用の機器はすでに存在している。しかし、これらの機能を備えたデバイスの見かけが、スマートウォッチである点が重要なのだ。

 身内の介護に携わったことがある方なら経験があるかもしれないが、転んだことを「怒られる」と思って言わなかったり、心電図や転倒検出器、補聴器といった専用のデバイスを身につけることを拒むケースがよくある。しかしスマートウォッチであれば、見た目も時計そのもので、操作も簡単だ。

 アップルは転倒検出の機能については、特別な操作を必要とせず、Apple Watch Series 4を身につけているだけで自動的に検出する仕組みとした。特に転倒はアメリカでも、一般に65歳以上の高齢者に増えてくるとされているが、特別な機器を使っている感覚をなくし、自然に検出できる仕組みにするよう、チャレンジを繰り返したのだ。

 そして、システムレベルでの自動検出を組み込むことができた。デバイスとソフトウエアをともに開発するアップルならではの結果、と言えるだろう。

Apple WatchがiPhoneを使う理由になる

 このチャレンジは、Apple Watchにとって、非常に重要なターニングポイントを作り出すかもしれない。これまでフィットネス、コミュニケーションにフォーカスをおいてきたApple Watchの新たなカテゴリーとして「ヘルスケア」の充実が決定的となったからだ。

 前述の通り、Apple Watch Series 4を使うためには、iPhoneを利用しなければならない。本人が買うだけでなく、子どもに勧められるパターンによって、iPhoneに興味を持つユーザー層が家族や夫婦単位で拡大していく可能性もあるだろう。少なくとも、既存のユーザーがiPhone以外に乗り換える理由を失わせることになる。

 個人的には、今回のプレゼンテーションで転倒検出機能と心電図機能が披露された瞬間が、長期的な目線で大きなインパクトを与える大きな山場だったのではないか、と振り返ることができる。

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