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日揮、やっと勝ち取った「LNGプラント」の中身 受注額は6000億円規模、採算改善へ「秘策」も

東洋経済オンライン のロゴ 東洋経済オンライン 2018/06/14 09:00 大塚 隆史
© 東洋経済オンライン

 「2018年度はプラントマーケットの潮目が変わる」(石塚忠・日揮社長)。エンジニアリング大手の日揮が勢いづいている。

 きっかけは5月、カナダ・バンクーバーの北西約650キロメートルの地点で計画されているLNG(液化天然ガス)プラント建設プロジェクトを、米国フルア社と共同で受注することが内定したことだ。

近づく最終投資決定

 日揮が受注内定を勝ち取ったカナダのLNGプラントは、英蘭ロイヤルダッチシェルや三菱商事などが出資するLNGカナダが計画している。当初は2系列で年間1300万トンものLNGを生産。その後も拡大を見込めるビッグプロジェクトだ。

 5月31日にはマレーシアの国営石油会社、ペトロナスが出資者として参画。同社はLNGの買い取りも行うとみられている。LNGプロジェクトが最終投資決定される目安の1つが引き取り先の確保だ。日揮社内からは「プロジェクトの最終投資決定への蓋然性が高まった」と期待の声が上がる。

 日揮・フルア社は設計・調達・建設工事(EPC)を1兆5000億円で受注したとみられ、うち日揮の受注分は6000億円とみられる。2014年のロシア・ヤマル以来の大型LNGプラント受注だ。

 ここ数年、日揮は雌伏の時が続いた。主力である大型LNGプラントの建設案件が減少したためだ。

 LNGプラントの大型投資は、原油価格と強い関連性がある。プラント会社に工事を発注する資源開発会社は、開発案件がどの程度の収益を上げられるのか、吟味して投資決定を行う。もちろん、原油価格が高くなれば高くなるほど利幅は大きくなる。そのため、足元の原油価格の推移は投資決定を行うか否かに大きく影響する。

 かつて、2014年6月に1バレル=108.01ドル(ドバイ)だった原油価格は急落し、2016年1月には27ドルになった。このときも原油価格低迷を嫌って延期するプロジェクトが多数出た。LNGカナダもその1つで、シェルは2016年6月に最終投資決定を無期限延期していた。

 その後、原油価格はじりじりと回復、今や1バレル=75ドル前後で推移する。状況は大きく変わった。日本エネルギー経済研究所化石エネルギー・電力ユニット ガスグループ研究主幹の橋本裕氏も「ほかの地域でもカタールの系統増設などがあり、今後もLNGプラント建設は続く」と話す。

日揮には「来客がひっきりなし」

 LNGプラントの建設には、投資決定から5年程度かかる。需給が逼迫するとされる2022~2023年を見越した投資決定は2018年中に行う必要があり、今後も順調に案件が出てくるとの見方が強い。建設を担えるのは世界でも数社とされており、国内では日揮や千代田化工建設の名が上がる。現に日揮本社はLNGプラント建設の相談のために、「来客がひっきりなし」(日揮関係者)という。

 ただ、LNGプラントのような大型工事は、想定外の事態で多額の損失を被るリスクがある。

 現に日揮は米国・テキサス州の大型エチレン製造プラント建設工事で多額の損失を計上した。近年の「シェール革命」でプラント工事需要が急激に増加したため、熟練工がなかなか集まらない難物の工事だった。そこに大雨やハリケーンが襲い、工期が遅れた。そのため、日揮は2017年3月期に19年ぶりの赤字決算に転落するという苦い経験をした。

 今回、日揮とフルア社がLNGカナダと結ぶ契約はランプサムと呼ばれる方式で、請負契約時に建設代金を確定するものだ。工事期間が納期を越えてしまったり、コスト管理がうまくいかなかったりすると、赤字工事になってしまう。

現地での作業時間を短縮する秘策

 こうした事態を防ぐため、日揮は秘策を用意した。現地での作業を極力少なくするモジュール工法の活用だ。機器や配管ユニット、架台をあらかじめ組み立てた状態で建設現場に持ち込み、その場で据えつける。この工法ならば現地での作業時間を短縮でき、災害などのリスクを軽減できる。すでにロシア・ヤマルプロジェクトや豪州・イクシスプロジェクトでも一部導入し、効果を実証済みだ。

 日揮は4月、中国COOECと提携。同社は中国国内に複数の大型モジュールヤードを有し、技術力に定評がある。LNGカナダでも貴重な戦力となることは間違いなさそうだ。

 一方、柱のLNG受注が落ち込んでも安定して収益を上げられるよう体質改善も進む。「LNGのみという一本足打法はやらない」(石塚社長)。東南アジアを中心に石油精製分野を着実に積み上げるほか、インフラ分野への拡大にも注力している。3月にはベトナムで同国最大級(出力4万9000kW)のメガソーラー建設プロジェクトも受注した。

 シェルのようなオイルメジャーとの仕事は特別だ。よい仕事をすれば、次につながる。LNGカナダの成否は日揮の将来を占うことにもなる。

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