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日本もAmazonやGoogleを生み出せる、IoT時代の可能性

ダイヤモンド・オンライン のロゴ ダイヤモンド・オンライン 2017/10/12 板東浩二
日本もAmazonやGoogleを生み出せる、IoT時代の可能性: IoTが進化すれば、日本もグローバル企業を輩出できる可能性がある――いくつもの規格を普及させた藤原洋氏が語る情報通信産業の未来とは? © diamond IoTが進化すれば、日本もグローバル企業を輩出できる可能性がある――いくつもの規格を普及させた藤原洋氏が語る情報通信産業の未来とは?

「イーサネット」「MPEG」「デジタルハイビジョン」「ブロードバンド」など、現在よく聞く規格は、この人物の手によって普及したと言っても過言ではない。インターネット総合研究所の代表取締役、さらにはブロードバンドタワーCEOも兼務する藤原洋氏だ。NTTぷらら・板東浩二社長が、藤原氏にITのこれからを聞いた。

デジタルハイビジョン標準化で日本のガラパゴス化を回避

板東 藤原さんがいなければ、「デジタルハイビジョン」や「MPEG」は現在とは別の形になっていましたよね。最初はどんな仕事をされていたんですか?

藤原 コンピューターの黎明期だった1970年代後半に、日立エンジニアリングで(工場の機械等を制御する)制御用コンピューターや、これらをつなぐLANの開発に携わりました。当時はLANでどうデータを転送するか、その方式が規格化されていなかったんです。そんな中、日立エンジニアリングは信頼性が高い「トークンリング」というデータ転送方式を使おうとしていました。でも私は、現在使われている「イーサネット」が普及すると考え、上司に頼んでこっそり開発を進めました。こちらのほうがシンプルで、情報転送処理が単純な作業の繰り返しで済んだからです。

板東 おいくつだったんですか?

藤原 30歳少し前です。ビル・ゲイツさんと同世代で、何度か会っています。彼もまた、将来スタンダードになるものを見抜く目を持っていましたね。まだコンピューターのCPUが4ビットから8ビットになり、工場や発電所の機械を制御するために使われていた時期に、ビルは「これが進化してマイクロコンピューターになる」と言っていました。パソコンはおろか、電卓程度の情報処理能力しかない時代に「パーソナルな仕事でもコンピューターを使う時代が来る」と読んでいたんです。

 彼は「マイクロコンピューターのためのソフトをつくる」から、社名は「マイクロソフト」なのだと言っていました。面白いですよね(笑)。スティーブ・ジョブズさんも同じ未来を予測していて、彼は「大学で研究していたけど、教授がバカだから会社つくった」なんて言っていましたね。

板東 その後、藤原さんはアスキーに転職され、ISDN対応の画像圧縮技術とCD-ROMに対応した画像圧縮技術(MPEG)を世界標準化されましたね。

藤原 動画像のデータを配信する場合、データを圧縮して、送信して、受信したら見られるように展開する、という作業が必要になります。この規格である「MPEG」の標準化に取り組んだんです。

板東 その後は、デジタルハイビジョンの標準化を成功させています。

藤原 これは大変でした。NHKさんは1993年の電波監理審議会で、ハイビジョンをアナログで送信する「アナログハイビジョン」という技術を採用したんです。しかし、米国でも欧州でも「ハイビジョン放送のデータはデジタルで配信する」と決まっていたので、私は「まずい」と直感しました。もしあの時、アナログハイビジョンでの配信が始まり、これに対応したテレビを売れ…となったら、世界で日本のテレビだけが画像が悪かったと思います。完全なガラパゴス化です(笑)。そこでまず、私が立ち上げた当時の郵政省スポンサーの研究所で通信速度が15Mbpsあればデジタル化できる、と実証しました。NHKさんは「30Mbpsないとできない」というんですが「MPEG-2を使えば可能」と証明してみせたんです。

板東 反対する方もいらっしゃいましたよね?

藤原 テレビを作っている大手メーカーさんは、既にアナログハイビジョンテレビの製造を始めていたから、私の提案には困惑したと思います。一方、民放さんは私を応援してくれました。アナログだとBS放送は4チャンネルしかつくれないから、既存の民放各局は参入できなかったんです。しかしデジタルなら民放さんもチャンネルを持てるから、各局が私の案を支持してくれました。

板東 藤原さんもそうですが、自信を持って「次の時代がこうなる」と言える人たちって、何か共通点があるんですか?

藤原 (少し考え)他人の評価を気にしませんね。

板東 ああ、藤原さんを見ているとわかる気がします。

第4次産業革命が来る!IoTの描く未来

藤原 私、上司や周囲から「生意気なヤツ」と言われることはやっていないつもりなんです(笑)。でも、この考え方やこの仕事が上司からどう見られているかな?といったことは気にしなかったですね。私が常に考えているのは、政治的なことに対して妥協するのは悪、しかし市場に対して妥協するのは悪ではない、ということです。

板東 では「この技術が次世代の標準になる」ということはどう読むんですか?

藤原 「最終的には市場が決める」と考えています。「デジュール標準」という言葉があります。公的な機関で会議の結果、合意された「標準」を指し、ISOなどの国際規格はこれにあたります。逆の「デファクト標準」は“事実上の標準”で、市場の多数に受け入れられた「標準」です。そして、ビルも私も「次世代の標準は市場が決めるのだ」と考えていました。そして時に、政治的に決まった技術や、純粋に技術的に優れている技術と、市場に受け入れられる技術は異なります。だから、様々な技術を標準化していく際は「私の技術は素晴らしい」でなく「ともに世界標準を作りましょう」と、様々な企業に訴えかけ、参加を募る形にしました。

板東 その後、藤原さんはインターネット総研で、インターネットの高速化、接続料金の引き下げに大きく貢献されますね。

藤原 当時、インターネットは従量課金制でしかも高額でした。そこで「定額料金で常時接続できるネットワークを」と考え、フレッツのバックボーンとなった地域IP網、eAccess、ACCA、ヤフーBB、USENなど、様々なプロバイダのバックボーンの設計に関与しました。「インターネットで世の中を変える」という使命感があったんです。時代の変わり目でベンチャー企業が重要な役割を果たすことは多いですからね。

板東 藤原さんは今後、どんな世の中が来て、どんなビジネスチャンスがあるとお考えですか?藤原 結論から言えば、第4次産業革命が起こって「情報通信産業が発展する」のではなく「情報通信産業があらゆる産業へと拡散、浸透していく」時代が来ると思っています。

 最初の産業革命の後、19世紀後半から電力が活用されるようになりました。これが第2次産業革命。次に20世紀後半にコンピューターが様々な産業で活用され始めました。これが第3次産業革命。次は、IoT(Internet of Things、モノのインターネット)による第4次産業革命です。

板東 具体的には…。

藤原 今までのITは、人が情報を受け取り、人が発信していたんです。しかし今後はモノが情報を発信し、モノがそれを受け取るようになります。

 たとえばGE(米国のゼネラル・エレクトリック社)の「プリディックス・クラウド」です。様々な機器に多数の検知器を搭載し、集まったデータをリアルタイムで分析します。仮に航空機であれば、機体に様々なセンサーを付け、燃料の燃焼効率や、偏西風がこう吹いている、といったデータを集め「こうすると燃費がよくなる」といった情報を得て航空会社に販売しています。GEは新しいサービスモデルとして、シリコンバレーで1000人ぐらい雇って、成功させています。

インターネットでは遅れた日本もIoTではチャンス到来

板東 まさにモノが発信しているわけですね。

藤原 IoTのフェーズ1は、モノがどういう状況にあるか「見える化」することです。フェーズ2は、モノから得た情報を元に「自動制御」が可能になることを指します。フェーズ3が「最適化」。可視化されたデータをビッグデータとして分析し、フィードバックし、その機械に最適な動きをさせるわけです。フェーズ4が、これらの技術を組み合わせ、人手を加えなくても常に機械が最適な判断を下せるようにすることを指します。私は、これが全産業に浸透していくと考えています。そして、これは日本のチャンスでもあるんです。

板東 どういうことですか?

藤原 インターネットの世界では、最初に市場を取った人がtake allみたいなところがありますね。現在も「FANG」と呼ばれる企業――「Facebook、Amazon、Netflix、Google」が市場を支配していると考えられています。ただし、彼らが市場を支配できた理由は「英語」なんです。ハリウッド映画と日本映画の差と同じで、これらは英語圏のサービスだから世界中に展開できたんです。

 でもIoTの情報発信源は人間でなく「モノ」。だから日本語も英語も関係ない。とすると、ここがチャンスなんです。

板東 これまで言語の壁が大きかったんですね。

藤原 だからブロードバンドタワーは、テクニオン・ジャパンの株式を取得し、私もよく、イスラエルに行っているんです。

板東 イスラエル、面白いですよね。

藤原 歴代ノーベル賞受賞者の約4分の1以上はユダヤ人とも言われています。そして当社は、テクニオン・イスラエル工科大学で生まれたベンチャー企業、テクニオン・ジャパンの日本国内におけるベンチャーキャピタル投資の第一優先権を取得しています。ここでの研究は、AIやIoTに関わるものだけでなく、経口インスリン、臓器再生デバイス、点滴の自動補填など、医療分野でも有望なテーマが多数含まれています。

 イスラエルとは言語の壁があるだけでなく、直行便すら飛んでいません。これが日本のAI、IoTなどの停滞に直結していると思っているんです。だから私が日本とイスラエルを結ぶ役割を担おうと。将来的には必ずこの事業が日本のためになると思っているんです。

板東 藤原さんがおっしゃると、本当にここから何かが起る、と感じますね。

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