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歴史は「25年ごと」に考えると見方が変わる 戦後、日本は3つの時代を生きてきた

東洋経済オンライン のロゴ 東洋経済オンライン 2017/06/17 塚田 紀史
歴史の変化は25年単位で読み解け、さらには150年単位、500年単位で大きな歴史を考えることができる(写真:ghandi/PIXTA) © 東洋経済オンライン 歴史の変化は25年単位で読み解け、さらには150年単位、500年単位で大きな歴史を考えることができる(写真:ghandi/PIXTA)

 混迷を極める現代においても「歴史の尺度」を駆使すれば、日本や世界がたどる未来の道筋が見えてくるという。『大予言 「歴史の尺度」が示す未来』を書いた東京大学大学院情報学環・学際情報学府の吉見俊哉教授は、時代は25年単位で読み解けると話す。

「世代間隔」という人口学的要因

 ──時代は「歴史の尺度」で読み解けるのですか。

 歴史の変化は25年単位で読み解け、さらには150年単位、500年単位で大きな歴史を考えることができる。

 ──25年単位?

 近年でいえば、日本の歴史は1945年から1970年までの25年、1970年から1995年までの25年、そして1995年以降という3つの25年単位で流れてきた。戦後直後の1945年から1970年は「復興と成長の25年」、続く1970年から1995年までは「豊かさと安定の25年」、そして1995年以降は2020年までを「衰退と不安の25年」と位置付けることができよう。それぞれの25年のまとまりには、その前後の25年と異なる傾向がはっきりとある。これはそれ以前についてもいえることだ。

 ──25年単位には人口学説の裏付けがあるのですね。

 少なくとも19世紀以降の日本の歴史の変化を25年単位でとらえることは、歴史事象の観察からそういえるだけでなく、有力な理論的根拠がある。「世代間隔」という人口学的要因だ。25年という年数はほぼ親子の世代間隔に相当する。女性が子を出産する際の年齢の平均値が、親世代と子世代の間の平均的な時間距離になる。この世代間隔は過去数百年を通じて25年から30年に収まってほとんど変化していない。

 人口は連続的に変化していくので、親子の世代間隔がほぼ25年になるのはどの年代に生まれた世代でも同じなのだが、大きな社会的事件、あるいは戦争や内乱のような「大きな死」とその後の「大きな生」との遭遇は連続的ではない。そしてその時代に生まれた一群の世代は、ある一定期間にわたり社会の動向を左右し、その後も一定期間、影響力を保持し続けることになる。

 ただし、今日の日本が陥り、アジア諸国がこれから陥る問題は、それまでの人口オーナス(重荷)に比べ、変化が大きいこと。短期間での急激な経済成長、寿命の著しい伸びによる高齢化などの理由が加わって、より深刻な問題を生んでいる。

 ――「時代と世代」は25年単位でとらえられるのですね。

 戦後の日本において、「政治」の季節といえる「60年安保」を担った世代の多くは1930年代後半生まれ。彼らより25年後の1960年前後に生まれた子世代は1970年代から1980年代にかけて「文化」の時代を担った。そして、その子世代の1980年代から1990年代にかけて生まれた世代は現在、20代半ばから30代初めにあり、日本経済の厳しい現実を前に、「経済」により大きな関心を向けているように見えるという、それぞれ特徴がある。

長期波動は世代間隔と共振現象を起こす

 ──同時に長期波動に留意する必要もあると。

 25年はこのような公約数を媒介変数的に世代史と歴史の間に置くことで、ローカル的な世代的記憶と数百年単位の世界の歴史をつなぐことができる。

 25年単位のもう1つの根拠として政治経済学的な視点が説得力を持っている。資本主義経済はこれまで約25年の上昇局面と約25年の下降局面を持つ50年周期で循環してきたという「コンドラチェフの波」が裏付けになる。この学説の先見性にいち早く注目し、用語の命名者となったのがヨゼフ・シュンペーターだった。

 シュンペーターといえばイノベーション概念で有名だが、日本ではこの概念は過度に技術中心主義的に解釈されている。本来は社会の組み立て方の問題であって、いずれ飽和する運命にあるとの認識に立っていた。50年の周期となれば、革命や戦争、人口変化、国の政策や都市の発展といった諸々の歴史変化に結び付く。「波」は長期になるほど、社会構造そのものと関係してくる。

 実際、日本でもさかのぼって明治維新前後からの50年は、ものすごい変化だったし、現代が周期の渦中にある1970年から2020年に同じようなことが起こっているのかもしれない。長期波動は世代間隔と共振現象を起こす。

 ──150年、500年といったより超長期の「歴史の尺度」も用いるべきとも。

 非連続の中から構造を見極めるためだ。25年単位の波動の歴史がどのように数百年単位の構造に結び付いていくのか。フランスの歴史学者フェルナン・ブローデルが案内人になる。ブローデルの言葉を借りれば、「50年ごとに世界は生まれ変わり」、構造は数百年単位の長い時間をかけてゆっくり変化する。ブローデルの見通しを理論化した米国の社会学者イマニュエル・ウォーラーステインは、むしろ地政学的な議論が主体だ。

 ──16世紀と21世紀に類似性があるのですね。

 500年も離れた2つの世紀に意外なほど多くの類似点がある。両世紀にグローバリゼーションと情報爆発という2つの大きな歴史的変化が生じる。16世紀のグローバリゼーションは大航海時代の形をとった。一方の情報爆発は、グーテンベルクの発明を端緒とした印刷革命に行き着く。活版の普及で知識や情報へのアクセスのしやすさが劇的に変化した。

 この両世紀をともに時代の「入り口」と位置付けたい。16世紀からの500年にはジェノバ、オランダ、英国、米国の四つの覇権国が、いずれも約150年の波動のサイクルで継起している。150年が取り持って近代の500年が形成されるわけだ。

 ──50年周期の3回あるいは10回の150年、500年。

 そう。ただし、4つの覇権国のサイクルは150~250年の幅を含んでいる。

困難な過渡期のなかで

 ──では、足元からの日本の21世紀を見通すならば?

 足元の50年の後半期は、ここ20年近く次なるシステムに転換していく困難な過渡期にいる。それまでのシステムの有効性が失われ、個々の政治や産業の現場が劣化していく一方で、1990年代からのグローバリゼーションの進行を通じ、日本社会が根底から変容していく時代でもある。

 ──「大予言」はない?

 本書で目指しているのは大きな未来についての大胆な予測ではなく、未来についての歴史的思考を可能にする条件を示すことだ。

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