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湖池屋が「プレミアムポテチ」路線に走るわけ シェアトップ「カルビーに対抗しない」戦略

東洋経済オンライン のロゴ 東洋経済オンライン 2019/08/14 07:10 常盤 有未
業績改善を牽引した「PRIDE POTATO(プライド ポテト)」をはじめとする湖池屋の商品ラインナップ(撮影:尾形文繁) © 東洋経済オンライン 業績改善を牽引した「PRIDE POTATO(プライド ポテト)」をはじめとする湖池屋の商品ラインナップ(撮影:尾形文繁)

 ポテトチップスの老舗、湖池屋の業績改善が目覚ましい。8月9日に発表した2019年6月期は、売上高339億円(前期比5.4%増)、営業利益6.7億円(同145.8%増)と大幅な増収増益で着地した。

 牽引役は、プレミアム化を推し進めてきた商品群だ。旗艦商品は2017年2月に発売した「PRIDE POTATO(プライド ポテト)」。日本産のじゃがいもを100%使用し、揚げ方にもこだわった、文字通り湖池屋の「プライド」をかけて開発した商品だ。味付けも日本を前面に打ち出した「秘伝濃厚のり塩」「松茸香る極みだし塩」「魅惑の炙り和牛」の3種類でスタートした。

社運を懸けたプロジェクト

 プライドポテトの開発は社運を懸けたプロジェクトだった。というのも、湖池屋は近年、業績の停滞に苦しんできたからだ。売上高は伸び悩み、利益もアップダウンを繰り返してきた。

 キリン出身の佐藤章社長は、「(業績低迷の原因は)価格戦争に参入したり、参入しなかったりしたこと。参入すれば売り上げはとれるが、利益はとれない。参入をやめれば今度は売り上げがとれなくなるという悪循環の繰り返しだった」と分析する。

 日本のポテトチップスの元祖は湖池屋だが、シェアではカルビーが勝る。カルビーは松本晃会長時代に、スナック菓子の価格を戦略的に下げ、数量を伸ばすことによって工場の稼働率を上げるという戦略をとった。こうしたコスト削減戦略により、カルビーは2011年度に63%だったポテトチップスのシェアを2018年度には72%まで拡大させた。

 シェア重視のカルビーに対抗し、湖池屋が生き残るためには価格では勝負せず、プレミアム路線で新たな需要を取り込むしかなかったのだ。

 佐藤社長はキリンで「生茶」や「FIRE」などをヒット商品に導いた実績を持つマーケッターだ。34.5%の株式を持つ筆頭株主の日清食品ホールディングスの安藤宏基CEOから「新たなブランディングも含め、湖池屋の経営をやってみないか」と誘われ、2016年に社長に就任した。

 当時の湖池屋について、佐藤社長は「老舗だけど、どこか垢抜けない。ユニークさはあるが、品質感はそれに匹敵しないという印象だった」と振り返る。

商品開発のヒントになった創業者の肉声

 佐藤社長はまず、コーポレートロゴを一新。続いて旗艦商品となる「プライドポテト」の開発に着手した。ヒントになったのは、テープに残っていた創業者、小池和夫氏(故人)の肉声だ。

 「聞いてみると、まるで料理人のように製法や味付けにこだわっていた。創業者が持っていた情熱、料理人のプライドを現代によみがえらせなければならない」。素材と製法に徹底的にこだわったプライドポテトが誕生した。

 「魅惑の炙り和牛」味は一時販売休止に追いこまれるなど、計画を大幅に上回る売れ行きを記録した。折しも2016年の夏に北海道を襲った台風の影響でじゃがいもの収穫量が減少し、商品が欠品する「ポテチショック」も重なったが、「湖池屋の新商品は売れる」という認知が小売店に広がった。

 「プライドポテトがヒットしたことで、スーパーなどの小売りが湖池屋に売り場の(どこにどのような商品を並べるかという)棚割り提案を任せてくれることが増えた」(湖池屋のマーケティング担当者)。1袋100円以下で安売りされることも多い定番のポテチに比べ、150円程度(オープン価格のため、小売店によって異なる)と、ややプレミアムな価格帯で、収益をしっかり確保できるプライドポテトは小売店側にとって好材料に映った。

 プライドポテトは発売後約5カ月で初年度売り上げ目標の20億円をクリア。初年度は結果的に倍の40億円を売り上げるヒット商品となった。

 その後もプライドポテトは2018年10月にはうまみ調味料・香料無添加の商品にリニューアル、日本食材にこだわった商品もシリーズ展開した。さらに、2018年9月にはじゃがいもの素材本来の味わいにこだわった厚切りのポテトチップス「PURE POTATO じゃがいも心地」を発売した。

 「プレミアムポテチ」という地位を築きつつある。

32年ぶりに「スコーン」を刷新

 「じゃがいも心地 オホーツクの塩と岩塩の合わせ塩味」は、食品では珍しいブルーがベースのパッケージだったが、中央に積み重なったポテチが映えるシンプルなデザインが消費者に受け入れられたようだ。当初は秋冬限定の販売を予定していたが、発売4カ月で予定していた売り上げ目標の約2.3倍に到達。通年販売に踏み切った。

 ロングセラー商品にもメスを入れた。2019年2月には「スコーン」を32年ぶりに刷新した。

 同じコーン系のスナックでは明治の「カール」が東日本地域で販売を休止したが、スコーンは定番3商品の生地を最初から見直し、パッケージも変えることで、若者層など新たな客層の取り込みを狙った。

 「スコーンは昔から食べている30代、40代の認知率・好意率は8割以上と高く、準基盤ブランドという位置づけ。従来のガツンとくる濃い味に比べると、幅広い層に受け入れられる味に仕上がった」(佐藤社長)

 動画やASMR(咀嚼音を楽しむコンテンツ)など若者向けマーケティングを展開した結果、20代など若年層の購入が増えたという。販売も前年同月比で2~3割増という上々の滑り出しだ。

 湖池屋は2020年6月期の業績について、売上高365億円(前期比7.5%増)、営業利益8.5億円(同25.5%増)とさらなる成長を予想する。高付加価値商品のバリエーション展開や個食ニーズに対応した商品の強化で成長を確かなものにする考えだ。

 この7月にはじゃがいも心地の夏向けフレーバー「バジル&ピールの清涼仕立て」を投入。8月15日からはスコーンの新味「禁断のシーフード」を発売する。

経営に余裕が出ても、価格戦略には走らない

 「ポテトチップス のり塩」など、比較的安価な定番商品は「ずっと食べ続けてくれる方だけを守っていこうという考え方で、(特売をし過ぎないよう)なるべく価格を維持しながら提供し続けていく」(佐藤社長)。利益を確保しつつ、販売を続ける考えだ。

 既存の定番商品とプレミアム商品の構成比は現在約1対1。佐藤社長は「仮に経営的な余裕が出てきても、価格戦略には走らない。より付加価値商品の比率が上がっても迷わず買ってもらえる会社になるのが本物の湖池屋の完成だ」と言い、付加価値商品のさらなる強化を目指す。

 立て続けにヒット商品を生み出してきたとはいえ、経営環境は楽観視できるものではい。中長期でみれば、スナックを好んで食べる子どもの人口が減っていく。「スナックを越えた新しいものにチャレンジすることも必要。例えば、これは昼食代わりだよな、スイーツの代わりになるよなというベクトルはあると思う」(佐藤社長)。

 湖池屋が成長を続けられるかどうかは、需要の拡大につながるような提案をし続けられるかにかかっている。

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