古いバージョンのブラウザーを使用しています。MSN を最適にご利用いただくために、サポートされているバージョンをご使用ください。

社外取締役を「お飾り」にしない上手な生かし方

ダイヤモンド・オンライン のロゴ ダイヤモンド・オンライン 2019/01/12 06:00 小宮一慶
社外取締役を「お飾り」にしない上手な生かし方: 社外取締役と上手に付き合うことができれば、業績にも良い影響を与えられます(写真はイメージです)Photo:PIXTA © 画像提供元 社外取締役と上手に付き合うことができれば、業績にも良い影響を与えられます(写真はイメージです)Photo:PIXTA

 企業の不祥事が相次いでいることから、社内の利害関係に縛られず、第三者の視点から経営をチェックする「社外取締役」の存在に注目が集まっています。また2020年施行を目指す会社法改正案には、上場会社や非上場の大会社に社外取締役の設置を義務付けることが盛り込まれています。

 しかし、社外取締役を設置すれば、社内の不正や不祥事をいち早く発見できるというわけではありません。時代劇ではないのですから、社外取締役が社内を歩き回って悪を見つけて成敗するということはあり得ません。社内の人間が見抜けない不正を社外の人間が見抜くのは通常ではとても難しいことです。

 社外取締役を置く一番の理由は、取締役会にかかる議案を社外の立場で判断してもらうことです。例えばM&Aのような大きな意思決定や予算の審議は、必ず取締役会に諮らなければなりませんが、オーナー経営者が多い中小企業では、社長が独断専行しても社内の人間には止めにくいものです。そこで社外取締役が社長にもの申して独断専行をさせずに正しい意思決定を行う。社外取締役の仕事はそれ以上でもそれ以下でもありません。

会社と一定の距離がある社外取締役だからできる役割も

 現在、私は「言うべきことは言わせてもらう」という条件で、上場会社も含め6社の社外取締役や社外監査役と5社の顧問を引き受けていますが、取締役会の雰囲気で会社の状況がある程度つかめます。

 社長の独演会に終始する会社は、一般的に業績は良くありません。取締役会ならぬ独演会場では、部下たちは意見やアイデアを出さなくなります。すると社長は「うちの部下にはアイデアを出す能力がない」と思い込み、自分の思いつきを話して、部下にふる。部下は「またか」と思いながら、思いつきを実行するふりをして時間を稼ぎ、一方、社長自身は思いつきすら忘れている――。これでは業績は落ち込むばかりで悪循環です。

 近鉄グループの中興の祖である佐伯勇さんは「経営者は独裁すれども独断せず」と言っています。衆知を集めて議論をして、最終的に自分で判断を下し、決めたことは部下に最後までやらせる。それが「独裁すれども独断せず」です。ところが先の例では、社長は思いつきを部下に丸投げして知らん顔という「独断すれども独裁せず」になっています。

 社外取締役は、社長の独断専行をいさめることに加え、経営に関するアドバイス能力も求められます。経営判断が仕事の社長とはいえ、迷って判断ができない場面はたくさんあります。そんなときに相談できる社外取締役がいると心強いものです。また、経営危機に直面すると優秀な経営者であってもパニックに陥るものですが、冷静に会社を見ている社外取締役がいれば、平常心を取り戻すことができます。

 後継者問題の相談相手としても社外役員が頼りになります。後継者を選ぶというセンシティブな問題は社内の人間には相談しにくいし、社内を知らない人にも相談できません。会社の事情を理解していて、ある程度、会社との距離がある社外取締役や社外監査役が適しているというわけです。

中小企業では社外取締役をどのように見つければいいのか

 では、どのような人材が社外取締役に適しているのでしょうか。元高級官僚や大学教授という肩書で選ぶ会社もありますが、経営を十分に理解していない人に依頼してもお飾りにしかなりません。といって、多忙な現役の経営者にはなかなか引き受けてもらえません。社外取締役を真面目に務めようとすると、膨大な時間を取られるからです。上場企業では取締役会だけでも年間20回を超える上、会社を知ろうとすると執行レベルの会議にもある程度出る必要があるからです。委員会設置会社ならさらに時間を取られます。そこで半分リタイアした経営者が適任なのかもしれません。

 ただ中小企業では、そこまで時間を取られることはないので、昔から付き合いがあり、自社の事業と競合しない会社の経営者に依頼するのがいいでしょう。はっきりものを言ってくれる人であることが必要なことは、言うまでもありません。

 社外取締役を置いたら、経営者は取締役会の活性化にも努めなければなりません。執行レベルの細かい話は取締役会に持ち込まず、事前に十分にたたいた上で、取締役会の判断を仰ぐ。またある意味、フリーディスカッションの場にしてもいいと思います。今後予想される世の中の動きに対して、自社をどう変革していくかといった大きな議論を社外の人を交えて行うのです。取締役会を含め、会議の場というのは、幹部を鍛える場でもあるとの認識も必要です。

 伝統のある古い会社は、自社で採用した人が役員に昇格するケースが多く、会社の常識にとらわれてしまいがちです。しかし「会社の常識は社会の非常識、業界の常識は社会の非常識」です。そこで社外取締役を招いて、社会の常識を踏まえた議論を深め、取締役会を活性化させることを目指す。それが社外取締役の理想的なあり方です。

(小宮コンサルタンツ代表 小宮一慶)

ダイヤモンド・オンラインの関連リンク

ダイヤモンド・オンライン
ダイヤモンド・オンライン
image beaconimage beaconimage beacon