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JDI新社長が語る「脱スマホ依存」の行く末 経営再建のカギは中国向け車載パネルの育成

東洋経済オンライン のロゴ 東洋経済オンライン 2018/07/13 08:00 印南 志帆
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日の丸パネルメーカー、ジャパンディスプレイ(JDI)が正念場を迎えている。前2017年度には純損失2472億円と過去最大の赤字を計上。売上高の約7割を依存する米アップルが、「iPhone X(テン)」に韓国サムスンの有機EL(OLED)パネルを採用したことで受注が減少したことに加え、工場などの減損が響いた。フリーキャッシュフローは5期連続でマイナスに沈む。

危機的状況に直面する中、今年度はチャンスが与えられた。2017年に量産を始めた新型の狭額縁液晶パネル「フルアクティブ」が秋に発表されるiPhoneの新モデルに採用される見込みで、下期からの大幅受注増が期待できるからだ。この好機を逃すまいと、JDIは第三者割当増資や産業革新機構(INCJ)による支援で計550億円を調達。部材の調達など当座の運転資金に充当し、アップルへの出荷に備える。生産工程の変更などによるコスト削減も同時に推し進めることで、過去に何度も目標に掲げつつかなえられていない最終黒字化を狙う。

ただ、今期の業績が改善したとしても、2019年の新型iPhoneは全モデルが有機ELパネルを採用するという観測もある。アップル含め、市場の成熟するスマートフォン向けパネルが売上高の8割を占める現状のままでは、業績の安定化は困難だ。そこで現在は車載用パネルなどの新機軸を育成中だが、どのように舵取りをしていくのか。6月に社長に就任した月﨑義幸氏(58)を直撃した。

「経営再建中」という枕詞を外したい

 ――JDIにとって、2018年度は失敗が許されない年です。この局面で社長に就任しましたが、自身に課した使命は何でしょうか。

 何が何でも今期の最終損益を黒字化する。これが最大のミッションだ。これまで4期連続で最終赤字を出してきたが、5期も続けるわけにはいかない。2017年度は、人員削減や中国子会社の整理、工場の減損などで1437億円の大きな特別損失を計上し、ウミを出した。あとは、業績改善に向けてひたすら利益を上げていくだけだ。JDIに関する記事から、「経営再建中の」という枕詞を早く外したい。

 今期も4〜6月は厳しい状況が続いたが、これがボトム。今通期では売上高10~20%増を見込む。当社の4辺狭額縁液晶パネル「フルアクティブ」の技術は複数のお客様から高く評価され、今年はある意味チャンスの年。今まさに、(アップルに出荷するパネルの)下期の大増産に向けて仕込みが始まったところだ。

 ――社員の方々は、その危機感を共有しているのでしょうか。

 もちろんそうだ。今、社長室には事あるごとに社員が駆け込んでくる。日々の小さなトラブルや売り上げの状況、今後の見通しまで、時に現場レベルの社員を含めて、逐一報告をしてくる。部屋の壁には報告事項の書かれた紙が、びっしり貼り付けられている。それに対し、私がリアルタイムで指示を出すという体制ができている。

 ――シャープをはじめ競合メーカーも、狭額縁パネルを造っています。追随される可能性はないのでしょうか。

 JDIが仕掛けたことがきっかけで、狭額縁がスマホパネルの事実上の標準になってきたことは確か。ただ、4辺すべてが狭い額縁のものを造れるのは、今のところ当社だけ。まねをしようとしても、そう簡単にできるものではない。フルアクティブは、(6月に社長を退任し、現在は技術顧問の)有賀修二氏が開発を主導してきた。彼には長年液晶業界で培ってきた勘があるのだろう。

 ――その一方で、2019年には最大顧客のアップルが、新モデルすべてに有機ELを採用するという観測もあります。

 特定の顧客について話すことはできない。ただ、スマホ向けパネル市場において、液晶と有機ELは共存するというのがわれわれの見方だ。それぞれに強みと弱みがあり、どちらかに完全な優位性があるとは言えないからだ。

有機ELの量産時期は未定

 ――とはいえ、これまでもアップルからの受注状況に右往左往させられてきました。今後、同社向けの売上比率を意識的に縮小することも考えられますか?

 それはない。受注をいただけるのであれば、全力でそれに対応するというのがJDIの基本だ。

 ――有機ELメーカー「JOLED」の子会社化を取りやめました。さらに、JDI自体も有機ELの技術を持っていますが、量産開始時期は未定です。

 当社における有機ELの技術開発はほぼ完了しており、すでに茂原工場にパイロットラインを入れている。ただ、本格的に量産するための投資は、海外パートナーからの支援が前提だ。

 当初は今年3月末までにパートナーとの提携を発表するというスケジュールだったが、足元の有機EL市場を見ると、特に中国市場などではまだ液晶の優位性が認められている。海外パートナーとの提携に関する交渉は今も続いているが、有機EL市場の潮目が当初の予測と異なってきた以上、急いでこちらから提携を模索する必要もないと判断している。

 ――有機ELの生産を取り止めることもありえるのでしょうか。

 今のところそのつもりはない。有機ELの生産技術は、大きく分けて蒸着方式と印刷方式の2種類がある。JDIが持っているのは、蒸着方式の技術だ。サムスンも蒸着方式の技術を持っているが、ご理解いただきたいのは、当社とサムスンの製造プロセスは大きく異なるということだ。JDIは、蒸着方式の生産で必要な真空の生産設備が小さくて済むため、コスト圧縮や生産性向上が見込める。サムスンが席巻する市場でも、十分優位性を出せるはずだ。

 また、よく誤解されるが、JOLEDの子会社化をやめるからといって、JDIが同社の製品を扱えなくなるわけではない。むしろ、設計、開発、販売面でこれまで以上に協業していく予定だ。特に販売面は、JDIの営業部隊が主に担う。JOLEDの有機ELは他社がまだ実用化できていない印刷方式を採用しており、蒸着方式では難しい10インチ以上の中型のパネル生産に適している。医療、車載、モニター、パソコン向けなど、さまざまな用途に対応できる。

再建のカギを握る車載事業

 ――JOLEDの中型パネルは、今後市場が拡大していく車載向けでも期待が持てそうです。JDIの東入來信博会長は、スマホ依存の体質から脱却すべく、スマホ以外の事業の売上高を現状の2割から45%へと引き上げることを掲げました。

 お約束はできないが、2021~2022年くらいには達成したい。足元でも、非モバイル分野は安定的に増えている。特に柱となるのが、世界シェア約20%と首位の車載向けパネルだ。先日もラインが不足するという問題が起きたほど、フル生産が続いている。昨年には石川のスマホ向けパネルのラインを車載用に転換するなど、増産体制も敷いている。

 現在当社のシェアが最も高いのは欧州市場だが、食いつきがよいのは中国だ。車内にパネルを複数搭載した先進的な自動車がどんどん出てきている。ただ、他国が納入までに3年かけるところを中国は1年程度と、リードタイムが短く、そのスピードについていくのは大変だ。そこで当社は2年前から中国での営業部隊を強化し、需要を取りこぼさないようにしている。車載事業の売上高は2017年度に1000億円の大台を超えた。2022年度には1900億円を目指す。

 ――産業革新機構とは、今後どのような関係を築いていきますか? 先日、JDIの工場を200億円で購入したことに対し、「企業救済ではないか」との批判もありました。

 引き続きサポートをしていただく関係性であることには変わりない。今後も資金調達などでお世話になる可能性については明言できないが、ご支援いただいていることはとても心強い。引き続きご支援いただけると思っている。

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