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あのバフェット氏もキレた 過去50年で「最大の失敗」とは?

ZUU Online のロゴ ZUU Online 2017/03/15

「弘法も筆の誤り」「猿も木から落ちる」とよく言われる。達人やプロと呼ばれる人たちも、時には大きな誤りを犯すことがあるという戒めだ。

それは、「投資の神様」「オマハの賢人」と崇められる、世界最大の米投資会社バークシャー・ハサウェイの最高経営責任者(CEO)、ウォーレン・バフェット氏(86)にも当てはまる。実は、「神」とされるバフェット氏の投資には悲惨な失敗が少なくない。そればかりか、世界一の投資会社に育て上げたバークシャー・ハサウェイの買収そのものを、彼自身が「大失敗」と評価している。

なぜか。救いようのない愚かな失敗から、よい「授業料」になり、後の収益に貢献した失敗まで、バフェット氏の失敗談から見えてくるのは、厳しい局面がっても、優良企業株は保持し続ける長期的視野と忍耐強さ、投資が取り戻せないと判断した際の失敗を認める潔さと損切りの迅速さ、そして刻々と変化する投資環境に合わせて柔軟に戦術を変えていく思考の柔らかさだ。

■猿も木から落ちた

「バフェット氏ともあろう投資のプロが、こんな初歩的な間違いをするのか」と思わされる事例が、バークシャー・ハサウェイが自社株4億3300万ドル分を使って、1993年に買収した米靴製造大手デクスター・シュー・カンパニーだ。

バークシャー・ハサウェイが大量保有するコカ・コーラと同様、消費者が長い間にわたり愛用し続ける商品を販売する企業であり、バフェット氏にとっては自然な長期投資の選択であった。

あのバフェット氏もキレた 過去50年で「最大の失敗」とは?(写真=Krista Kennell/Shutterstock.com) (ZUU online) © ZUU online あのバフェット氏もキレた 過去50年で「最大の失敗」とは?(写真=Krista Kennell/Shutterstock.com)

買収時は税引き前利益が4000万ドルに達していたデクスターだったが、2001年に競合との競争に敗れ、生産停止に追い込まれてしまう。2008年の株主への書簡でこの失敗を振り返ったバフェット氏は、「デクスター・シュー・カンパニーへの投資は、私の最悪の投資の一つだった」と率直に認めた。

原因は、投資先の競争力を過大評価したことだった。「もし同社の買収に使った自社株4億3300万ドル分を保有し続けておれば、現在(2008年時点)の価値は50億ドルになっていた」と、バフェット氏は後悔しきりだ。そして、「私は、将来も必ず失敗する」と株主に語り掛けた。

その言葉どおり、バフェット氏がその失敗を認めた2008年に大規模な投資をした、米総合エネルギー大手コノコフィリップスが次の大コケとなった。当時、原油価格は1バレル当たり100ドルを超えるイケイケ局面にあり、エネルギー企業の将来はバラ色に見えた。

原油高はしばらく続いたが、やがて現在に見られる大幅安へと逆回転を始める。それに合わせて、コノコフィリップス株の価格もつるべ落としのように下落し、バークシャー・ハサウェイは数十億ドル規模の損失を出してしまった。いわゆる「高値掴み」だったのだ。市場が浮かれている時には、バフェット氏のような冷静沈着な投資家でさえ、雰囲気に流されてしまうという事例である。

後付けにはなるが、原油価格が乱高下しやすいという歴史的なパターンに着目し、石油産業は浮き沈みが激しい業界であることを考えれば、避けられた誤りだった。バフェット氏自身が述べたように、「投資の友は悲観主義であり、高揚感は敵」なのである。

■バフェット氏もキレた 感情を制御する大切さ

一時の感情に流されない重要性は、バフェット氏の半世紀以上にわたる投資人生そのものである、バークシャー・ハサウェイを同氏が1962年から1964年にかけて買収した際の失敗にも如実に表れている。

安価な製品で米市場を席巻する日本などとの競争に敗れ、落日の紡績企業だったバークシャー・ハサウェイは、売却できる資産を多く抱えていたため、倒産したとしても、バフェット氏にとって良い投資対象だった。ところが、バークシャー・ハサウェイの旧経営陣は、バフェット氏がすでに買い付けていた同社株式を買い戻そうと画策し、しかもいったんバフェット氏に提示した価格を値切った。

バフェット氏は、これにキレてしまう。同社株を旧経営陣に売るどころか、買い増してバークシャー・ハサウェイを乗っ取り、旧経営陣をクビにしてしまった。これが、現在の投資企業・保険大手としてのバークシャー・ハサウェイの成功につながるわけだから、良い投資と思われがちだが、そうではなかった。

バークシャー・ハサウェイはバフェット氏の万能持ち株会社になっていくのだが、それが紡績企業である必要はなかったからだ。「傾きかけた会社にお金と時間を費やすより、健全な会社を買収して、その企業を持ち株会社にすれば、その企業は現在のバークシャー・ハサウェイの時価総額の(4316億ドルの)2倍の価値が出ていた」とバフェット氏は言う。「バークシャー・ハサウェイ乗っ取りは、今までの買収で、いちばん愚かだった」。

まだ40代前半で若く、旧経営陣にバカにされたと思い込んで頭に血が上り、平常心を失ったバフェット氏の最大の失敗だといえよう。

■バフェット氏の投資は「塞翁が馬」か

これら以外にも、バークシャー・ハサウェイの買収後、破綻の危機に直面した米金融大手ソロモン・ブラザーズや、損失しかもたらさなかった米小売り大手ウォルマート、やっとのことで損失を回避した旧USエアウェイズなど、バフェット氏の大型投資は失敗談に事欠かない。

だが同時に、「人間の吉凶・禍福は変転し、予測できないものだ」という意味の、「人間(じんかん)万事塞翁(さいおう)が馬」という中国古典・淮南子(えなんじ)が出典のことわざも、バフェット氏には当てはまる。

たとえば、バフェット氏がもう懲りたはずの航空会社株への投資を、バークシャー・ハサウェイが昨秋に再開し、好成績を上げている。さすが「バリュー投資の翁」、業界の情勢が変われば柔軟に方針を変更し、よいリターンを確実に手にする。それを可能にしているのは、失敗を認める潔さと損切りの迅速さ、それと同時に優良株は一時的に下がっても、長期的に持ち続ける勇気だろう。(在米ジャーナリスト岩田太郎)

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