古いバージョンのブラウザーを使用しています。MSN を最適にご利用いただくために、サポートされているバージョンをご使用ください。

クラウドファンディング成功の鍵を握る「3分の1の法則」とは

ダイヤモンド・オンライン のロゴ ダイヤモンド・オンライン 2018/02/15 06:00 三谷宏治
クラウドファンディング成功の鍵を握る「3分の1の法則」とは: 現在、ニューヨークでのコンクール参加のため渡米費用を募っている萩原寧々さん(写真提供:萩原寧々) © diamond 現在、ニューヨークでのコンクール参加のため渡米費用を募っている萩原寧々さん(写真提供:萩原寧々)

日本の寄付型クラウドファンディングは個人寄付全体の0.1%以下

 群衆(crowd)から資金調達を行うクラウドファンディング(crowdfunding、以下CF)。第180講ではリアル型ともいうべき「薬師寺での写経勧進」について述べました。高田好胤管主は、ひとり1000~2000円の写経勧進を数百万巻積み上げて、薬師寺伽藍再建ための資金数十億円の調達に成功しました。

 今回は、バーチャルなCFのお話です。

 日本のCF市場は急速に拡大し、2016年度には745億円に達したと見られています。前年比6割増です。しかしその額は、アメリカでのそれの数%程度(*1)に過ぎません。

 しかもその内訳を見ると、9割弱は事業性の貸付型や投資型のもので、個々人が商品やサービスを予約する形の「購入型」は62億円、「寄付型」は6億円に過ぎません。個人寄付という視点から見れば、CFを通じた寄付6億円は、年間約8000億円に上る国内での個人寄付(募金やふるさと納税)のたった0.1%以下なのです。

 CFは、日本においてまだまだメジャーな活動とはいえないでしょう。でも寄付型CFは、日本の若者たちがその夢をかなえる、とてもとても貴重な機会なのです。

 日本のCFサイト最大手、Readyfor (*2)(レディーフォー)で見てみましょう。

*1 アメリカのクラウドファンディング市場規模は2015年度で170億ドル、同時期の日本は363億円。*2 設立2011年3月、代表者は米良はるか。

個人の夢実現を支える寄付型クラウドファンディング

 日本で最初のCFサイトでもあるReadyforは、寄付型に力を入れています。

 そこで大きく寄付を集めるのは社会・文化貢献や復興支援などのテーマです。たとえば、

・NPOメッシュ・サポート:沖縄の離島から急病人を搬送するための小型機購入費用に目標3500万円(445人、調達額は目標の104%)・東京藝大:寄贈された2万枚のSPレコードを保存する資金に目標500万円(326人、同144%)・富山市ファミリーパーク:絶滅危惧種ライチョウの飼育繁殖技術確立に目標1000万円(902人、同107%、継続中)・NPOカタリバ:熊本震災の仮設住宅での中学生向け放課後学校維持に目標1000万円(473人、同105%、継続中)

 これらCFの意義はいうまでもありません。多くの子どもたちや病人、動物、文化財が助けられます。ただ同時に、Readyforには「個人の夢」もいっぱい詰まっています

・エジプト考古学者 吉村作治:ピラミッドのナゾ解明のための太陽の船復元資金に目標2000万円(465人、同161%)・阿波踊りプロ集団「寳船」:パリのJapan Expoで阿波踊りを披露するための渡航費用に目標108万円(75人、同103%)・ピアニスト 齋藤岬:米音楽院(*3)の修士課程で腕を磨くための費用に目標100万円(47人、同132%)・バレリーナ 荻原寧々:ニューヨークでのコンクール参加費用に20万円(9人、同45%、継続中)

 科学系もアート系も、自分の夢を追い続けるのは大変です。世界を相手にした活動を志せば資金はすぐ足りなくなりますし、公的支援や篤志家の寄付も頼りになりません。基本的には「資金的余裕のある家庭」の子女にしか、そういった夢を持つことは許されなかったのです。でも寄付型CFがそれを変えつつあります。

*3 南カリフォルニア大学ソーントン音楽学校。

 ピアニストの齋藤岬さんは中学卒業後「1年だけ」と送り出してもらった米国留学先で、全額給付の奨学生の座を勝ち取り続け、なんと修士課程まで進学しました。でも1年終えたところで資金が尽きました。それで頼ったのが寄付型CF。みごと資金集めに成功し、今は博士課程へと進んでいます。

クラウドファンディング成功の鍵は何か?

 ただし、CFでのプロジェクト成功率はそれほど高いわけではありません。購入型の世界最大手Kickstarter(*4)で3割強、2番手のIndigogoだと2割以下、国内2位のCAMPFIREも3割前後とか。Readyforは成功率7割弱ですが、寄付型中心ゆえに、目標額が(全体としては)低めであること、支援するキュレーターがしっかりしていることの成果でしょう。

 CFプロジェクト成功の鍵は、「最初と最後の盛り上げ」「3分の1の法則」と言われています。

 まずは最初のスタートダッシュがダイジです。CAMPFIREでは、プロジェクトの公開初日に目標額の10%以上を集められたプロジェクトの成功率はなんと88%に跳ね上がります。日本人は他人の評価を重視するので「すぐお金が集まる→いいプロジェクト」と判断しがちだからでしょうか。

 そしてあと大切なのが最後の数日です。これは心理学での「〆切り効果」なのですが、目標額を大きく超えるプロジェクトは別にすると、多くのプロジェクトが〆切り最後の1週間ほどでかなりの額を集めます。自分の貢献がもっともわかりやすい瞬間でもあるからでしょう。

 そういった寄付者の心理をわかっているので、プロジェクト側も、最後数日の広報に精を出します「最後のお願い」というやつです。

身内を固めるだけでは足りない。遠い人に届くかこの願い

 少額のCFは、どうせ身内や知り合いのお金を頼ってるんでしょ、と思われるかもしれません。たとえ寄付型でも、そうでもないのです。

*4 年間調達額が2015年で約7億ドル。

 一般には、「3分の1の法則」というのがあり、

・自分の友人・知人からの支援が1/3・友人・知人の友だちからの支援が1/3・まったく知らない人からの支援が1/3

 となると言われています。その解釈はよく「身内のお金で目標額の1/3は確保しろ」とされますが、それだけではありません。目標額の1/3は「まったく知らない人」から集めないと、成功には至らないのです。

 2016年3月に始まり成功裏に終わった「山元ミガキハウス」CFプロジェクト(*5)では、活動内容の効果検証や寄付者の内訳分析を、プロジェクトコアメンバーの岩野直樹氏らが行いました。すると総寄付者238人のうち、ちょうど3分の1(81人)が人的にもプロジェクト的にもほとんど繋がりのない人たちでした。

 そしてその平均支援額は1.1万円(100万円を寄付した1人を除く)で、5000円前後と見ていた予想を倍以上上回りました。そこからの寄付額は計192万円で、目標500万円の38%(総寄付額644万円の29%)となりました。これぞ社会学者のマーク・グラノヴェッター博士が1970年に見つけた「弱い紐帯の強み(*6)」です。

 逆に言えば、この遠い人たち(人的にもプロジェクト的にも繋がりが弱い人)の手厚い支援がなければ、このプロジェクトは成功しなかったのです。

 ではその遠い人たちに、どうやったらリーチできるのでしょう?

弱い紐帯にリーチするためにはSNSしかない?

 ここでは個人の夢の応援としての寄付型CFに話を絞ります。たとえば、先ほどのバレリーナ荻原寧々さんの場合はどうでしょう?

 彼女は14歳からイタリアで学び、19歳の今、海外バレエ団への入団を目指してオーディションを受けています。3月にニューヨークであるコズロヴァ国際バレエコンクールに出場は決まったものの、渡航費用が足りない……。そのために20万円を目標にプロジェクトをスタートさせました。

*5 CFサイトのチャレンジスターは東北の起業家支援に特化したものだったが現在活動休止中。*6 転職先を見つけるのに有益な情報の84%は、いつも会うような「強い紐帯 strong ties」からではなく、まれにしか会わない「弱い紐帯 weak ties」からもたらされた。

 見知らぬ若きバレリーナの夢実現に貢献しようとする人は、どこにいるのでしょう? そしてどうやったらその人にリーチでき、寄付につながるのでしょうか。

 正解はわかりませんが、3つのことが考えられます。

・友だちの友だち(中間の紐帯の人々)にSNSでの拡散を頑張ってもらう・インフルエンサーからの拡散に期待する・CFサイトでトップページにいるよう努力する

 彼女の夢に共感できることがもちろん前提ですが、弱い紐帯の寄付者たちにはCFリピーターが多く、プロジェクトを知りさえすれば寄付に動く可能性は高いと考えます。

 でも友だちの先の先にいる遠い人なので、友だちの友だちに拡散を頑張ってもらわなければなりません。もしくはフォロワーが1万人以上いるようなネットインフルエンサーに呟いてもらうとか。いずれも簡単ではありませんが、本人と周り友人たちの努力に期待しましょう。

 さてこの連載も3月いっぱいとなりました。あと3回、頑張ります!

参考情報・サイト・「日本最大級のクラウドファンディングサービス「Readyfor」――成功率70%の秘密に迫る」(2017.05.24、msmマネー)・「【初日の支援が成功のカギ!?】初日に支援してもらえたプロジェクトの成功率とは」(2017.08.02、CAMPFIRE ACADEMY)・「サクセスの可能性が高くなる!?クラウドファンディングの1/3の法則を知ろう!」2017.08.02、CAMPFIRE ACADEMY)・「クラウドファンディングの成功率ってどのくらい?徹底調査してみた」(2017.01.25、ストックドッグ)・「社会的テーマにおける寄付型クラウドファンディングの成功メカニズムの事例研究」岩野直樹(2018.2.10、KIT虎ノ門大学院)・Readyfor(文中の数字は2018年2月13日時点のもの)

ダイヤモンド・オンラインの関連リンク

ダイヤモンド・オンライン
ダイヤモンド・オンライン
image beaconimage beaconimage beacon