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グローバル仕事人は「本・Web・会話」をどう活用しているか

ダイヤモンド・オンライン のロゴ ダイヤモンド・オンライン 2017/04/19 澤 円
グローバル仕事人は「本・Web・会話」をどう活用しているか: 知的好奇心を鍛錬するにはうってつけの「読書」。グローバル仕事人は雑誌を読む時に、同じテーマを扱った複数の雑誌を読み比べすると言います © diamond 知的好奇心を鍛錬するにはうってつけの「読書」。グローバル仕事人は雑誌を読む時に、同じテーマを扱った複数の雑誌を読み比べすると言います

 皆さん、こんにちは。澤です。

 4月も後半を迎えましたが、皆さんは何か新しいことを始めましたか?新生活に戸惑っている方もおられるのではないでしょうか。

 春は変化の時期、ぜひそんな状況も含めて楽しんでください。さて、今回のテーマは、前回に引き続き「自己鍛錬」です。

 今回の鍛錬ポイントは「知的好奇心」です。

 いかにして知性を磨いていけばよいのか、澤なりの考えをお伝えしたいと思います。

「読書」でファン心理や多様な価値観を理解する

 知的好奇心を満たす代表的な行動は、なんといっても読書ですね。本を読む習慣のある人は、すでに本の取捨選択術はご自身でお持ちでしょうから、こちらは参考までにということで…。

 まずは、紙媒体の「本」を読む場合についてです。私は、紙の本を読む場合、リズムや書籍の選択に非常にムラのある人間です。「月に平均的に何冊読む!」というタイプではなく、気が向いたときはまとめ読みをすることもあれば、気乗りしないと数週間の間一冊も読まないという感じです。

 ただ、本から得る知識というのは他の媒体とは違うように感じています。ですので、まったく読書をしないという状態には陥らないように心掛けており、時間があるときはなるべく書店をぶらぶらと歩いたりします。そして、気に入った本があれば、まとめ買いをしたいすることもあります。その時、本を選ぶ観点にはこだわりがあるのでご紹介します。

・好きな作家の小説・エッセイは迷わず買う

 好きな作家の書籍を買うのは、心の滋養強壮・栄養補給であると思っています。恋愛小説でも推理小説でも歴史小説でもエッセイでも、なんでもOKです。自分が大ファンの作家が文字で紡ぐ世界は、脳内の隅々までを満たしてくれます。他人の書評などは関係ありません。自分が好きなら迷わず買ってしまいましょう(私に言われずとも、そうする人が多いとは思いますが)。

「好きな作家がいない…」という人もいらっしゃいますよね。そんな人は、ぜひ「自分が好きな人がファンである作家」の本を買ってみてはいかがでしょうか?そうすることで、「自分が好きな人が好きな世界観」を体験することができます。

 私は、「ファン心理」というものはビジネスの中でとても大事な要素であると思っています。ファンになれば、自分のモチベーションを上げる原動力にもなりますし、逆に相手のために無条件でサポートしたくなったりもします。こういった心理状態を認識・コントロールすることは、ビジネスにおける成功に大きく寄与すると思います。そのためにも、「好きな作家」に対して投資をする行為は、ビジネススキルアップのための投資と思うことにしましょう。

・いわゆる「自己啓発本」を買いすぎない

 私自身、自己啓発系にカテゴライズされる本を出版させていただいたことがあるので、こんなことを言うのははばかられるのですが…。自己啓発本というのは「即効性のある強壮剤」のようなものだと考えています。必要なタイミングで、必要とされるスキルを磨くために読むのであれば、ご自身の成長に大きく寄与することは間違いありません。ただ、あくまでも「補助的存在」として考えないと、自分の行動を自分の考えで決められなくなってしまう可能性があります。

「この場面で、あの本ではどうするって書いてあったっけ?」とか「こういう状況での行動パターンって、あの本で説明されていたな」とか、自分の考えよりも先に本に書いていることに意識が行ってしまう癖がつくと、自分の頭で思考する能力が衰退してしまうのではないかと思っています。ですので、自分の考え方や行動パターンを決めるための参考として、しっかり咀嚼・吸収することが大事になります。自己啓発本は、片っ端から読み漁って全部を身につけようなどと思わず、取捨選択しながら自分に合ったメソッドを取り入れる、くらいにしておくのがよいと思います。

・「名著」はとりあえず読んでおく

 ビジネスパーソンの共通語となっているような本は、とりあえず目を通しておくことをお勧めします。例えば、『マネジメント』(ピーター・ドラッカー)、『企業参謀』(大前研一)、『7つの習慣』(スティーヴン・コービー)、『ザ・ゴール』(エリヤフ・ゴールドラット)などです。内容の素晴らしさもさることながら、中で使われている用語がしばしば「ビジネス上の共通語」として使われたりすることもあるからです。

「マネジメント」という言葉が一般的にいう「管理業務」とは違うことはドラッカーが繰り返し本の中で語っていますし、双方にとってプラスとなる状況を「Win-Win」と表現するのは、『7つの習慣』を読んだ人であれば常識となっています。いずれの作品も最新事情を追加したり理解しやすく噛み砕いて再編集された「エッセンシャル版」が出ているので、こうした本を活用してとりあえず用語を押さえておくだけでもずいぶん違うと思います。なんとなく読む機会を逸してしまった…と思っている人は、何かを始めるのに最適な今の時期に、ぜひ書店で手を伸ばしてみてください。

・雑誌は選択肢の振り幅を大きくする

 世の中には、数多くの雑誌・週刊誌が出回っています。私も多くの雑誌を読みますが、なるべく幅広く読むようにしています。例えば、同じ政治や経済の同じトピックであったとしても、雑誌によってはまったく違う取り上げられ方をします。いわゆる「堅め」の媒体で政治の記事を読んだら、場合によっては下世話とも言えるような大衆紙で同じ話題の扱いを比べる、といった具合です。

 具体名で言えば、『選択』という通販のみで手に入るかなり硬派な政治経済系の雑誌があります。この雑誌でトランプ大統領に関する記事を読んだ後に、『週刊プレイボーイ』や『SPA!』などを読むわけです。記事中で扱う人物は同じでも、書かれる記事の詳細さや観点は全く違います。

 こうした思考の振れ幅を楽しむのも雑誌の読み方としてアリかな、と考えています。グローバル仕事人に必要なのは「多様な価値観の理解」ですから、様々な視点を雑誌という媒体を通じても感じ取るのが大事だと思っています。

 この記事を読んでくださっている主に男性読者の皆さんがひとつだけ気を付けるとしたら、大衆男性誌のグラビアページなどは電車内で決して開かないようにしましょう。そうするとグローバル仕事人以前の問題になってしまいますので(笑)。

「Web閲覧」は責任の所在・記事の目的を見極める

 インターネットは、多くの人を情報発信者と変えました。世の中に出回っている電子データの90%以上は、この3年の間に生まれたとも言われるくらいです。多くの人々が情報発信者となり、結果としてWebの情報は玉石混交となっている状態です。ビジネスだけではなく、政治や教育、芸能などの情報が、数多く発信され消費・浪費されている毎日です。その中でいかにして情報を得て、自分の仕事に生かしていくのか。グローバル仕事人として非常に大事な振る舞いです。

 Webのライターという職業は、参入障壁が低い分、記事のクオリティには大きな差があります。私の知人には、とても緻密・丁寧な取材をしてかつ極めて正確・公平な記事を書いている人もたくさんいます。その一方で、最近問題なっているような盗作や思い込みによる記事を書き流している人々がいるのも事実です。ですので、Web上での情報収集は細心の注意を払う必要があります。どのように情報を選択していけばいいのか、澤なりの考えをお伝えします。

・「情報ソースは実名入りか」を確認するのは最低条件

「関係者によると」「詳しい情報筋によれば」という情報は、基本的に「参考情報」以上の扱いを決してしないようにしましょう。発信されている情報に実名が入っていない場合、誰もその記事に対して責任を持つことはありません。責任を持たれることのない情報はすべて「怪情報」と思った方がいいでしょう。そのような情報を目にしたときは、

「この記事に対して誰が責任を持つのか」「どのような経緯でこのライターが記事を書いているのか」「このような書き方をすることで、得をする人・損をする人は誰か」

 といった点に着目します。世の中の記事は何のために存在するかといえば、たいていの場合「PV(ページビュー)を稼ぐ」のが主目的であり「正しい情報を正しく伝える」ことをトッププライオリティに置いているかどうかは別問題だったりします。

 もちろん私が書いているこの記事についても「多くの人に読んでもらう」のが主目的です。そして、すべての記事は澤自身で考えたものや直接見聞きした事象を文字にして表すというスタイルです。つまり、私はすべての記事に対して責任を持つことができる状態です。となると「嘘でもいいのでキャッチーな言葉を使って人の耳目を集める」という行動を取ると、実名を出している私は信頼を落とすだけで、何一つ得るものはありません。

 そう考えると政治や芸能人のスキャンダルネタは、ほとんどが実名のない伝聞での記事であり、信ぴょう性が高いものはそれほど多くありません。そのような信用度が高くない記事に思考の時間を費やすのは、極めて非効率であると言わざるを得ません。

・SNSはさらに注意を

 特に信ぴょう性の問題が顕著に出るのは、FacebookやTwitterなどのSNSの投稿です。SNSは、デマやガセネタの宝庫です。そして、発信者の意図とは別に記事が解釈されて拡散していくという特徴もあります。SNSからの情報収集も同様に3つのポイントを押さえて読むようにしたいものです。

「この投稿に対して投稿者は責任を持つのか」「どのような経緯でこの投稿しているのか」「このような投稿をすることで、得をする人・損をする人は誰か」

 SNSは、グローバル仕事人が活用すると大きな得をするツールである一方で、リスクの高いプラットフォームにもなりえるものです。SNSをテーマに、別途記事を書いてみたいと思います。

「人との会話」でものの見方や理解のプロセスを磨く年次で態度を変えるのは思考の浪費

 人は、人との会話によって最も知的好奇心が満たされる、というのが澤の持論です。本やWebの記事はもちろん価値があるものですし、効率的という点ではぜひとも活用したい媒体でもあります。その一方で人と会話をするというのは「時間と言葉を共有する」というとても手間とコストの掛かる行為であり、そこで得られるものは「大いなる体験」として心にしっかりと残るものです。ぜひ多くの人と会話を楽しんでいただきたいと思います。その際に、押さえておきたいいくつかの観点をお伝えしたいと思います。

・全く違うコミュニティーの人たちと会話する

 普段仕事をしていると、同じ人とばかり話をすることが多くなります。ホワイトカラーの職業の人であれば、上司や部下、席の近い同僚などと、朝から晩まで長時間一緒に過ごし、ほかに会話をした相手といえばコンビニの店員さんくらい…という経験がある人も多いことでしょう。接客業なら数多くの人と会話することになりますが、間に商品やサービスがあるため「価値の提供のための会話」が主となり、あまり自分の知的好奇心を満たすレベルまで深く話すことは少ない印象です。そうなると、「異なる価値観を持つ人たちから受ける刺激」が少なくなる傾向になりそうですね。

 そこで提案です。ぜひとも「異なる価値観が交じり合うコミュニティー」に積極的に参加しましょう。

 手段はたくさんあります。地域のボランティアに参加してもいいですし、オープンに人を募集しているサークルに入るのもよいでしょう。あるいは、テクノロジーの力を使って「オンライン英会話」などで異国の人たちと会話するのもいいですね。

 いずれにせよ、自分の行動パターンや思考パターンと全く違う人たちと多く触れ合うのが非常に効果的だと思います。私の場合も、いくつかのコミュニティーに属しており、様々な刺激を受けています。

・スキースクールのインストラクターの仲間・空手道場の師匠や弟弟子(おとうとでし)たち・茶道のコミュニティー・スタートアップ企業のサポーター仲間・琉球大学の学生たち・マンションの理事会・妻のアート関連の仲間たち(妻は現代アートの造形作家)

 こういった幅広い人たちと言葉を交わすことで、まったく違うものの見方や理解のプロセスが得られます。「おぉ、その発想はなかった!」という発見を楽しむかどうか、これがグローバル仕事人の会話術の秘訣ですね。

・なるべく幅広い年代とフラットに触れ合う

 日本における会話で日常的に聞くのが、

「今何歳?」「何月生まれ?」「何年卒?」「入社は何年度?」

 といった「年次にかかわる質問」です。これはすなわち「一年ごとにヒエラルキーが存在している」ということを前提にした質問と言ってもいいでしょう。

 共通の知人や話題を探すための質問であればまだいいのですが、「あ、一年自分の方が早く入社しているからタメ口でいいな」とか「こいつは3年下か、ちょっと先輩として教えてやるか」となど、過ごした時間を何よりも重視して考える人もいますよね。

 グローバル仕事人として大事なのは「人材の価値は年次ではなく経験とアウトプットで決まる」という考え方であると私は思っています。年次が自分よりも下でも、優秀な人材であれば私を使う側に立ってほしいと思いますし、ずっと先輩でもパフォーマンスを高める努力をしない人に対しては、無条件で尊敬などしません(ちなみに、今のマイクロソフトの日本法人の平野社長は高校の後輩です。究極の年次逆転現象だと思ってよくネタにしています(笑))。

 私なりに気を付けているのは「相手の年次にかかわらず、フラットにお付き合いする」ということです。これは、誰に対してでも馴れ馴れしくするとかタメ口で話すということではありません。相手が若くても高圧的に出ることなく、相手が年上だからといって、やたらとへりくだった言葉遣いをすることもない、ということです。

 誰に対しても「フラットに尊敬の念をもって対峙する」という意識を強く持つように心掛ければ、つまらないコミュニケーションエラーを起こすこともありません。また、「誰に対してもフェアな人」というブランドを持つことができるようになります。これこそが、グローバル仕事人として必要不可欠な要素の一つです。

 そのために手っ取り早い方法を一つ。

 とりあえず誰に対しても必ず「さん付け」で呼ぶようにすることです。

 社内の規定で「役職名」で呼ぶことをルール化しているのであれば、それに従う方がスムーズでしょう。また「先生」と呼んだ方がいい相手であれば、そうするのも大人のたしなみですね。

 しかし、そのようなルールが存在しないのであれば、誰に対しても「さん付け」で呼ぶ習慣をつけるだけで意識はずいぶん変わります。「この人は年下だから『くん付け』でいいや」とか「ここは先輩の威厳を見せるために呼び捨てにしよう」とかいうことに意識を使うのは、思考の浪費だと思います。むしろ全員を「さん付け」にして、より近しい存在になったり親しみを込めて呼びたくなったら「~~くん」や「~~ちゃん」と変えてもいいでしょう。

 ただ、相手がどう思っているのかを確認せずに自分の「こうあるべき」だけで何かの行動を起こすのは、2月9日の私の記事『なぜ日本人は「べき論」を振りかざして衝突するのか』でもご紹介した通り、怒りによるコミュニケーションエラーの原因にもなります。違う価値観をフラットに受け入れる練習として、呼び方を変えてみてはいかがでしょうか。そうするだけで、年下の相手は胸襟を開いて会話をしてくるようになり、今までにはなかった若い人たちの視点を得ることができ、知的好奇心を満たす一助となることでしょう。

 私は最近「リバースメンタリング」という、若手の人たちにメンターをやってもらう取り組みを始めました。とても多くの学びがあり、刺激を大いに受けることができています。そこでの学びも、ぜひこの連載の中でご紹介したいと思います。

 (日本マイクロソフト マイクロソフトテクノロジーセンター センター長 澤円)

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