古いバージョンのブラウザーを使用しています。MSN を最適にご利用いただくために、サポートされているバージョンをご使用ください。

ダイハツvsスズキ、社員クチコミに見える開発競争の熾烈

ダイヤモンド・オンライン のロゴ ダイヤモンド・オンライン 6日前 Vorkers(ヴォーカーズ)
ダイハツvsスズキ、社員クチコミに見える開発競争の熾烈: Photo:DAIHATSU/SUZUKI © diamond Photo:DAIHATSU/SUZUKI

 日本の軽自動車をリードしてきたダイハツとスズキ。昨年トヨタ自動車の傘下となったダイハツは、今年5月、100万円以下で買える低価格の軽乗用車ミライースの6年ぶりの全面改良となる新型車を発表。これまでの燃費競争から脱却し、「走行性や安全性」を全面に新たなメッセージを打ち出しました。

 一方、スズキはインドでの販売台数を増やし、過去最高益を更新。4月末発表の販売台数で、軽自動車の国内台数は前年を下回りましたが、今年2月に発表したワゴンRは、全面改良で安全性能を強くPR、ダイハツよりも一足先に燃費競争からの脱却を打ち出し市場からの期待も高まっています。2015年春に軽自動車税増税によっていったん国内の軽自動車市場が冷え込んだものの、ようやく回復の兆しが見え、燃費に次ぐ新たな競争が始まっています。

 新たな時代を迎えつつある、庶民の足、軽自動車。常にライバル社との熾烈な開発競争の中、自動車メーカーの社員たちはどのような仕事に働きがいを見い出しているのか。実際に働いてみなければわからない企業や組織のリアルな姿を、「Vorkers(ヴォーカーズ)」に寄せられた社員クチコミからリサーチするこの連載。今回は、日本の交通網を支える軽自動車メーカーの対決です。

20代の成長環境を求めるか、待遇面の満足度を求めるか?

 まず、Vorkersに寄せられたクチコミを比較できる「Vorkersクチコミ分析」という評価比較機能を使って両社の違いを見ていきましょう。これはVorkersの法人向けサービスの機能になりますが、Vorkersにクチコミを寄せた社員の属性(男女、職種、入社形態など)ごとに、社員満足度や残業時間、有給休暇消化率などを比較することができます。

 社員満足度を構成するのは、働きがいを示す8指標。業界や社風が似ていれば、八角形のチャートは似た形となりますが、ダイハツ(総合評価2.78)とスズキ(総合評価2.69)では総合評価点は近いものの、「20代成長環境」が高いスズキと、「法令順守意識」や「待遇面の満足度」が高いダイハツで大きく社員満足度の構成要素が異なります。

 両社の共通点としては、新卒入社社員と男性によるクチコミが全体の半分以上を占めていることです。技術系の職種が多い自動車会社ならではの傾向と言えるかもしれません。また、残業時間は大きく変わらないものの、有給休暇消化率はダイハツが81.7%であるのに対し、スズキが38.5%と半分以下となっています。

 それでは、実際の職場環境はどうなっているのでしょうか。

トップダウンのスズキとトヨタ傘下のダイハツ、事業成長に有益なのはどちらか?

 両社の「組織体制・企業文化」の社員クチコミを見ていきましょう。まずはダイハツ工業から見ていきます。

■ダイハツ工業の社員クチコミ

[国内営業、在籍20年以上、現職(回答時)、新卒入社、男性、ダイハツ工業 3.1]昭和42年のトヨタとの提携以降も、ダイハツ独自の技術力・生産力を強みとしてきたが、本年8月のトヨタ完全子会社化を受けて、一層のダイハツの独自性(イズム)を、技術・生産面だけでなく全てにおいてこだわり、発揮することが最優先の課題。自由な発想やチャレンジャブルな仕事ができないわけではないが、ともすれば質実剛健さが組織の成長や進化を阻害している面もある。

[エンジン開発、在籍5~10年、退社(2015年以降)、新卒入社、男性、ダイハツ工業 3.4]世の中にない新しい技術を作るというよりも、既存の技術をいかにコストを抑えて実現するかが得意。製品である車についても、開発に必要な設備についても、仕事の進め方についてもSSC(シンプル・スリム・コンパクト)が徹底されている。とはいえ関西企業らしく、人間味のある人が多い。トヨタグループのため、トヨタが社長以上の決定権限を持っている。トップダウンの経営体質で、社長・役員の承認を取りながら進めていた業務でも、さらに権限を持つ人が反対すれば一瞬で覆るため、長年の業務を水泡に帰すこともある。

[開発、在籍5~10年、現職(回答時)、新卒入社、男性、ダイハツ工業 2.5]将来へ向けたビジョンがないが目先のことを短納期でやりきるパワーがすごい。トヨタという巨大な親の影響が強く、未然防止や再発防止に対する姿勢や取り組みは凄い。関西の企業のイメージを象徴するような風土がある。

 複数の社員クチコミが、関西企業としてのイメージや社風を挙げています。また、よく言えば質実剛健、やや保守的な社風で、トヨタによる社内への影響を強く感じながら働いていることがわかります。トヨタによる未然防止や再発防止に対する取り組みが、「法令順守意識」の高さにも現れているのかもしれません。そういった巨大企業の影響力の中、ダイハツらしさをいかに発揮していくことができるかが、熾烈な開発競争を生き抜く上での要素となっていきそうです。

 続いて、スズキの社員クチコミを見ていきましょう。

■スズキの社員クチコミ

[営業、在籍3年未満、現職(回答時)、新卒入社、男性、スズキ(自動車) 2.8]一族経営でありトップダウンされているビジョンが明確である。なので、みんなその意見に従って業務を遂行している。

[設計・一般、在籍5~10年、現職(回答時)、新卒入社、男性、スズキ(自動車) 2.0]一般のイメージ通り、会長をトップとした非常に強いトップダウン体制。管理職が上の決定に逆らうことができないため、設計現場の人間が非常に苦労しているのが現状である。企業方針が右往左往し、時期ごとに製品の目ざすべき目標がバラバラになっていると感じる。システム立った人材育成制度が整っておらず、個人個人の能力により成果が大きく異なっているのが現状であり、長期的企業成長の観点からすぐに改善しなくてはならない要素だと感じる。

[技術職、在籍3年未満、退社(2015年より前)、中途入社、男性、スズキ(自動車) 3.6]教育体制もしっかりしており、若手の育成にも熱心。

 ほとんど全てのクチコミで、一族経営によるトップダウンな組織風土に触れられています。そのため、推進力はあるもののボトムアップは難しく、それを課題と感じている社員が多くいることが伺われます。一方で、教育体制が整っていること、また若手社員の仕事の範囲が広く経験値が積めることについてもクチコミが寄せられており、20代の成長環境が高い背景がわかります。

 トップダウンのスズキと、トヨタ傘下のダイハツ。大きく社風が異なるそれぞれの会社の中で、社員たちはどのようにキャリアを築いていくことができるのでしょうか。

若手が活躍しているスズキ、一方、ダイハツは…?

 続いて、両社の「成長・キャリア開発」に関するクチコミを見ていきます。

■ダイハツ工業の社員クチコミ

[エンジン開発、在籍5~10年、退社(2015年以降)、新卒入社、男性、ダイハツ工業  3.4]一人ひとりの業務の範囲が広いため、設計・実験・シミュレーションなど幅広い業務を経験できた。トヨタグループ独特のA4資料や問題解決手法などを、実践しながら身につけることができた。ハウツー本が出版されているだけあって、どこの会社でも仕事を進める上で役に立つ考え方であると思う。

[開発、在籍5~10年、現職(回答時)、新卒入社、男性、ダイハツ工業 2.6]キャリア開発は、基本的にOJT。ただし、近年は短期開発がメイン。全く余裕がなくOJTを受け入れるとは限らないので、手探りででも業務を進め、失敗しながら成長する必要がある。残念ながらかなりのタフさは必要となり、本人次第の部分が多い。

 自主的な動きを求められるため個々人への負担は大きいものの、現場で仕事に臨みながら実務を覚えるOJTスタイルに大きな成長機会があるようです。さらに、トヨタグループであるため、業務改善のノウハウがしっかりと確立されていることも、成長に繋がっていることがわかります。

■スズキの社員クチコミ

[設計開発、在籍3~5年、現職(回答時)、新卒入社、男性、スズキ(自動車)  2.9]入社後2年目から担当業務を任されるため開発プロセスを早い段階で理解することができた。個人の担当業務も幅が広く、検討段階から生産、市場対応まで一通りの開発を経験できた。また、社内にプロフェッショナルが少ないため、自分自身で考えてアクションを起こさないと業務が進まない環境だった。このため関係部署に対する発信力や取引先との調整能力は他社で働く人に比べて力がついてきていると感じられる。

[生産部門、在籍5~10年、退社(2015年より前)、新卒入社、男性、スズキ(自動車) 3.1]縦割りの組織の中で自身の立場をわきまえ、限られた条件下でいかに自分色を出して結果を出すかが重要であったと思う。上司にもよるが、担当業務案件に対しての自由度は高く、自分の提案を関係他部署や工場スタッフを巻き込んで実施し、成功した時の喜びはすさまじかった。転職する際のアピールポイントにもなった。

 ダイハツと同様、担当領域が幅広くその中での成長機会が大きいようです。特に、若手社員であってもその環境は変わらないため、責任感が養われ、知識も向上していくようです。若手の裁量権が大きく、いろいろな業務経験ができるというのが、スズキの社員クチコミで多く見られました。

これからの会社の方向性について社員はどう期待しているのか?

 最後に、両社の「経営者への提言」から、社員が期待するこれからの会社の方向性について見ていきましょう。

■ダイハツ工業社員から経営者に向けた提言

[エンジン開発、在籍5~10年、退社済み(2015年以降)、新卒入社、男性、ダイハツ工業 3.4]SSCを追求しすぎるために、目先の費用は安くなるが、トータルでは逆に高くなるような判断がなされる場合を多々見受ける。全体最適にできれば経営効率が上がると思う。

[総合職、在籍5~10年、退社済み(2015年以降)、新卒入社、男性、ダイハツ工業 2.5]トヨタの完全子会社化になったことを恥ずかしく思うべきだし、スズキとこれからも争うのであれば、トヨタの力に頼らずに自分たちの力で国内・海外を乗り切るように努力すべき。

[開発、在籍5~10年、現職(回答時)、新卒入社、男性、ダイハツ工業 3.0]すぐに利益に結びつかなくても、新技術や、先行提案にもっと力を入れるべき。また長期的に具体性のある経営計画を持つべき。会社の強みをもっと強化しつつ、何年後までにどんなモノを作るか、そこに向けてどんな技術を開発していくのか。

[管理部門、在籍5~10年、現職(回答時)、中途入社、女性、ダイハツ工業 3.3]会社は今後厳しくなるとの一辺倒だが、こんな未来・夢もあるとのポジティブな絵も描いてほしい。

 ダイハツらしさを失わず、短期ではなく中長期で競争力を作るべき、という意見が多くの社員クチコミから切実な思いとして伝わってきます。ただ、何がダイハツらしさであるかは、残念ながら社員クチコミからは見えてきませんでした。「トヨタ傘下であることを強みとすべき」というクチコミもあり、長期の競争戦略のための岐路に立っているようです。

■スズキ社員から経営者へ向けた提言

[一般、在籍5~10年、現職(回答時)、新卒入社、男性、スズキ(自動車) 2.9]ブランドイメージ向上のため、スズキ製品の基礎となるブランドフィロソフィーの確立と、それを市場に定着させるための戦略的広告宣伝活動をお願いします。

[設計、在籍10~15年、現職(回答時)、新卒入社、男性、スズキ(自動車) 2.4]燃費不正の件で会長がCEOを退きましたが、依然として影響力があります。トヨタとの提携検討の時も社長の姿がありませんでした。もっと息子を信用して任せないと、大丈夫かなと思う。

[技術職、在籍3年未満、退社 (2015年より前)、中途入社、男性、スズキ(自動車) 3.6]人の命を載せる車を作っている会社として、これからも真面目なモノづくり企業であり続けてほしい。海外生産の比率が多くなることは仕方がないと思うが、国内での生産量は今後も確保して欲しい。

[設計部門、在籍3~5年、現職(回答時)、新卒入社、男性、スズキ(自動車) 2.1]手当を充実させて欲しい。仕事量に対して給料(手取りの金額)が少なく感じる。そのため離職率が高く、仕事のできる人材が減る一方に感じます。せめてもう少し手当を充実させて離職率を下げるべきだと思います。そうしないといつまでたっても会社の成長は見込めないと思います。

 トップダウンの経営が徹底浸透しているスズキは、いまだに根強く残る会長の影響力の中で、ボトムアップで意見を出せる体制を望むクチコミが多く寄せられています。また、待遇面の改善や、ブランドイメージを向上させ、優秀な人材確保を求めたいというニーズが見えてきました。

 両社ともに共通しているのは、「『人』を大事にしてほしい」という現場の声。熾烈な開発競争は現場の社員にとって成長機会となるものの、長期の競争力に向けた組織づくりには大きな課題があり、多くの社員たちがそこからの脱却を望んでいることがわかりました。

(本記事はVorkers[ヴォーカーズ]の提供記事です)

ダイヤモンド・オンラインの関連リンク

ダイヤモンド・オンライン
ダイヤモンド・オンライン
image beaconimage beaconimage beacon