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人生100年時代の「プラチナキャリア」が創る未来

JBpress のロゴ JBpress 2019/08/08 06:00 高橋 みゆき
人生100年時代を迎える日本に必要となる”プラチナキャリアの力” © Japan Business Press Co., Ltd. 提供 人生100年時代を迎える日本に必要となる”プラチナキャリアの力”

 人生100年時代が近づき、超高齢社会の課題解決に向けて独自の教育制度や雇用制度を設ける企業が増えている。オープンイノベーションへの取り組みでも、企業対企業だけではなく、企業対個人による共創が増えていくのではないだろうか。東洋経済新報社主催の「プラチナキャリア・アワード」第1回受賞企業が行う人材育成制度「SCSK i-University」や高年齢者の雇用を促進する「アクティブシニア社員」等の取り組みを取り上げつつ、人生100年時代のオープンイノベーションの在り方を考察する。

「人生100年時代」のビジネスパーソンは生涯現役

 2019年5月、東洋経済新報社主催の第1回「プラチナキャリア・アワード」の受賞企業が決定した。プラチナキャリア・アワードは、長期的な視点で人材育成に取り組み、社員が年齢によらず活躍できる場を持つ等、人生100年時代を見据えて社会の課題解決に取り組む企業に贈られる。

 最優秀賞はIT関連企業のSCSK、優秀賞は伊藤園、T&Dホールディングス、マツダ、丸井グループ、東洋経済賞はファンケルがそれぞれ受賞した。

 プラチナキャリアとは、年齢に関係なく必要なスキルを習得し、そのスキルを存分に仕事へ生かし、社内だけでなく、広く社会に目を向けて課題解決に向けて努力するキャリア像を指す。東洋経済新報社は、プラチナ・アワードを通して、プラチナキャリアという理念を社会に浸透させつつ、“年齢を重ねても活躍できる人材を育成し創出する重要性”を企業に訴えている。

 プラチナキャリアは、人生100年時代を迎える日本にあたって、今後重要なキーワードとなるだろう。スキルやノウハウを持つ優秀なシニア人材は、減少する若い労働力をカバーする存在となりうる。

 少子高齢化による労働人口の減少の危機が叫ばれて久しいが、長寿命化は日本にとっては一つのチャンスでもある。なぜなら、高齢者は一昔前に比べて「若返り」をしているからだ。現代の高齢者は、10~20年前の高齢者に比べて加齢に伴う身体的機能の衰えが5~10年遅れているといわれており、元気な高齢者が多いことを実感している人も少なくないだろう。

 また、一般社団法人日本老年医学会が2017年に発表した「高齢者に関する定義検討ワーキンググループ報告書」によれば、75歳未満の高齢者は活動的で「高齢者として扱われること」を不快に感じているというのだ。

 60歳以上の労働意欲が高いことも覚えておきたい。内閣府の「平成30年版高齢社会白書」によると、「いつまで収入を伴う仕事をしたいか」という質問に対し、60歳以上の男女のうち42%が「働けるうちはいつまでも働きたい」と答えている。反対に「仕事をしたいと思わない」と答えたのはわずか1.8%だった。

 労働力人口における65歳以上の割合も右肩上がりに増加を続けている。同調査では、2007年には8.2%だった65歳以上の労働者の割合が、2017年には12.2%にまで上昇したとしている。

内閣府発表 平成30年版高齢社会白書(全体版) 労働力人口の推移より © Japan Business Press Co., Ltd. 提供 内閣府発表 平成30年版高齢社会白書(全体版) 労働力人口の推移より

 このように、健康な高齢者が増え、65歳を過ぎても働ける人・働きたい人は増加している。60歳以降で定年を迎え退職するという従来の日本型の雇用システムでは、労働者のニーズに応えきれないのが現状だ。もちろん、いつまでも活躍したいと願う個人は、年齢を重ねても重用されるようにスキルを磨き続けていく必要があるだろう。

優秀かつ意欲的なシニアとの共創で生まれるイノベーション

 健康な高齢者が増加し生涯現役で活躍できる時代を間近に迎え、企業には柔軟な雇用が求められている。2019年5月15日に開催された「未来投資会議(第27回)」では、高年齢者雇用安定法改正案の骨格が発表された。改正案では、70歳まで定年を延長する、定年を廃止する、再就職や起業の支援も行う等、高年齢者の雇用促進についての具体的な内容が示された。

 高年齢者雇用安定法の改正が実施されれば、企業は高年齢者の雇用だけでなく、高年齢の社員の再就職や起業支援も努力義務として取り組まねばならない。政府は、働き方改革でも「年齢にかかわりなく働くことができる企業の拡大」を掲げている。今後は組織対組織の構造から抜け出し、優秀なシニアとの協働も必要不可欠となるに違いない。

 オープンイノベーションに関する取り組みでも、組織同士にとらわれず、プロフェッショナル人材や優秀なフリーランスとプロジェクト単位でイノベーションの創出を図る、というスタイルも当たり前になっていくだろう。プロフェッショナル人材とは、地域企業の経営者の右腕となれるような人材を指す。

 内閣府は、こうした人材が企業で活躍できるよう、プロフェッショナル人材戦略事業を展開している。この事業では、各都道府県に拠点を配置し企業と優秀な人材のマッチングを行う。

 新たな商品やサービスを開発したり、販路を開拓したりして企業の成長に寄与できるプロフェッショナル人材は全国で引く手あまたのようだ。プロフェッショナル人材のニーズは年々高まっており、同事業は2015年10月のスタート以来、毎月相談件数と成約数が伸びている点にも注目したい。

 プロフェッショナル人材のニーズの高まりは、シニア世代のビジネスチャンスでもある。豊富な知識と経験、技術を持つシニア世代は、企業にとって力強い存在となるだろう。意欲があり、即戦力として活躍できるシニア世代の引き合いが増加する未来は想像に難くない。

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年齢を重ねても活躍できる人材の育成と確保が必要

 活力あるシニア世代に活躍の場を提供する企業も増えてきている。人材派遣・職業紹介を行うユメニティは、特定の分野において秀でた技能や技術、知識を持つ高齢者をプロシニアと呼び、豊富な経験を持つ人材として企業に送り込んでいる。

 企業側も、優秀なシニアの登場を待つのではなく、自社でプラチナキャリアと呼ばれるような人材を育成することを考えねばならない。プロフェッショナル人材を自社で確保できるよう育成に努めることが、企業戦略においても重要な位置を占めてくると考えられる。

 このように優秀な人材を育てるために、企業はどのような取り組みを行うべきなのだろうか。ここでは、前述の「プラチナキャリア・アワード」を受賞した企業から、とくにシニアの活躍に力を入れている企業をピックアップし、人材育成への取り組みを紹介する。

●SCSKの取り組み

 プラチナキャリア・アワードの最優秀賞を獲得した、ITソリューションを開発・提供するSCSK。同社はさまざまなサステナビリティ活動をしており、その一環として独自の働き方改革を行い、人材育成にも努めている。

 まずは同賞を受賞したポイントの一つである、SCSKの先進的な人材育成の方法に着目したい。全社員に「継続的な学びと成長の機会」を提供する枠組みとして、「SCSK i-University」という制度を設け社員の学びを支援している。

 この制度は、全350種類の豊富な研修で社員のキャリア開発、リーダーシップ開発、専門能力開発、ビジネス基礎能力開発を後押しする。

 加えて、同社はジョブチャレンジ制度(社内公募制度)やFA制度も導入しているが、これは60歳以上の社員でも利用できる。入社時から手厚い研修で社員のキャリア構築を支援し、高年齢の社員にも活躍の場を創出しているSCSKの取り組みは、多くの企業の手本となるところだろう。

●ファンケルの取り組み

 プラチナキャリア・アワードにて東洋経済賞を受賞したファンケルは、シニアの活躍を応援することを目的として、2017年より「アクティブシニア社員」という新雇用区分を設けた。

 これは労働意欲が高い社員を65歳以降に再雇用する制度で、嘱託社員、契約社員、パート社員等区分にかかわらず全社員が対象となっている。

 同社の正社員としての定年は60歳と定められているものの、アクティブシニア社員には定年年齢がなく、本人に働く意欲があればいつまでも働き続けられるという。

 アクティブシニア社員制度を導入した背景には、健康かつ高いスキルを持った65歳以上のシニアに働く場を提供するだけでなく、シニアが持つノウハウを若い世代に継承していく目的がある。

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シニアの力で新たなイノベーション創出を

「個」の力が重視されるようになり、自由な働き方が広まり始めた日本。前述した「定年後も活躍をし続けたいという意欲を持つ」かつ「健康で多様なスキルを持つ」シニア世代は、これからの日本において貴重な労働力となっていくことは確かだ。オープンイノベーションに関する取り組みの場でも、プロフェッショナル人材として働くシニアは、イノベーションの創出に欠かせない存在となるだろう。

 またそうした人材を企業が育成していくことも必要になる。さまざまな企業が育てた優秀なシニアが共創の場に集うことで、これまでにない新しいイノベーションが生まれるのではないだろうか。

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