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失業しても安心!ラクして稼ぐ黄金律

JBpress のロゴ JBpress 2019/02/23 06:00 松本 大介(さわや書店)
© Japan Business Press Co., Ltd. 提供

 勤めている書店を退職することに決め、読書傾向に「今後の身の振り方を考える」要素が満載の今日この頃。頭で考えていることが、如実に行動に現れることをあらためて認識する。ということで、今回はラクをしてお金が手に入らないかなという、希望的観測のもとに手にした3冊を紹介します。

cis 『一人の力で日経平均を動かせる男の投資哲学』

『一人の力で日経平均を動かせる男の投資哲学』(cis著、KADOKAWA) © Japan Business Press Co., Ltd. 提供 『一人の力で日経平均を動かせる男の投資哲学』(cis著、KADOKAWA)

 PCの前に座るだけ。終業は15時きっかり。楽そうに見える職業の最右翼、投資家。そういった印象をもってしまうのは私だけであろうか。しかし、その代償としての精神的疲弊は、きっとものすごいのだろうと推測する。

 いまの日本では、「資産形成は当然やるべき」という空気ができつつある。終身雇用は過去の遺物となり、国の管理する年金も当てにならない。自己責任という言葉が、さまざまな局面で都合よく用いられる世の中になったのは、小泉政権の時代からだったであろうか。

 それまでの「老後のモデル」は瓦解し、大多数の人は将来に不安を感じているに違いない。かくいう私もその一人だ。失業目前。国民年金保険料免除・猶予手続きを申請するタイミングを現在検討中である。少子化によって、先々の給付金額の減額は目に見えているだろうし、リターンが期待できるかどうか怪しいものだ。

 そういった個人的な現状と見解はさておき。本屋の店先で見ていると、帯にある「230億円稼いだ」という宣伝文句に反応して、本書を手にする人は多い。額が額だけにものすごいインパクトだ。最初の数ページをパラパラとやるとこうある。

「2000年、21歳の時に300万円で本格的に投資を始め、今の資産は230億円ある」

 なんと18年間で元手が7600倍。断っておくが、この金額はファンドで資金を集めて得たお金ではない。あくまで個人資産だという。本書を読んで著者の真似をすれば、自分の資産も倍々で増える可能性があるのではないだろうか。

著者と自分はどこが違うのか

 本書が発売された当初は、リアル書店よりもネット書店での売れ行きが好調だったらしい。その理由は、著者が個人トレーダ―としてネットの掲示板やSNSで有名人だったからだ。彼を知っているファン層が、いち早く購入したのだろう。その後、帯のインパクトも相まって口コミで広まり、著者のことをよく知らない層も書店で本書を求め始めている。

 一人の力で日経平均に影響を与える男とは一体? 著者はどんな人物なのだろう。本書の内容はもちろんだが、略歴をみて俄然興味がわいた。

 著者と私とは、ほぼ同い年なのだった。同じように日本の義務教育を受け、生まれてから平等の時間を与えられて、40年の時が経った今。個人資産は、天と地ほどの差がついている。分岐点はどこだったのかと、本書を興味深く精読する。ふむふむ。へー。なるほどね。パタン・・・うん、根本から考え方が異なるようだ。

 この本は、相場の必勝法を公開するといったたぐいのものではない。書名にあるように一貫して著者の「投資哲学」が綴られている。つまりは考え方。ある物事を前にした時、どのように対象を捉え、判断し、行動するかの根本原理である。

 著者と自分の違いは、次の考え方に集約される。

「上がる株は上がり続け、下がる株は下がり続ける」

 上がり続けた株は、いつか下がるだろうという考えのもと、私は逆張り人生を歩んできた。世の中は盛者必衰ではないのか。もしかして私が知らないだけで、平家は滅びていないのだろうか。

言語化が難しい著者なりの理屈とは

 下がり続けた株は、いつか反発するだろうという考えのもと、私は復活の兆候に目を凝らし続けてきた。捲土重来は凋落者のたわごとなのか。野村克也監督のもとで再生された、小早川毅彦の開幕戦3打席連続ホームランは、もしかして白昼夢だったか。

 230億円資産男である著者は、それらの考えは誤りであると切って捨てる。ちなみに平家みちよ(現みちよ)の苗字は本名だそうだし、小早川は結局打率 .249でそのシーズンを終えた。

 勝ち馬には積極的にのり、負け戦と悟るや離脱もしくはポジションを変える。それが相場において勝つ確率を上げる絶対条件だと著者は説く。相場を始めた当初、資産を100万円にまで減らし、痛い目をみてそれらの教訓を得たのだという。情報を収集して処理する能力と、仮説を立て、その仮説に身を投じる度胸。そして、おそらく言語化が難しい著者なりの理屈、つまり「勝負ごとにおける真理」のようなものを身につけているのだろう。そんな雰囲気が行間からにじみ出ている。

 著者にとって相場はゲームのようなものだという。麻雀以外にこれといった趣味もない様子の著者は、大金を得ても質素に暮らしているようだ。お金を稼ぐことが目的ではなく、相場を張るという行為自体が目的化しているように思える。本質はギャンブラー。積み上げた資産はカジノにおけるベットするためのコインだ。

笹舟が真似をしようにも

 自分の得意なことを見極め、道を突き詰めていった結果、たまたま現代資本主義にはシステム化された相場というものがあり、そのルール内で発揮できるたぐいまれなる才能が彼にはあった。どうやら、そう捉えた方がよさそうだ。

 だから、この本を読んだからといって、おそらく彼のように相場で勝てるわけではない。むしろ、彼の哲学を真似して株式投資などを始めたとしたら、カモられ、痛い目に合うのではないだろうか。

 たとえ同じ銘柄を買えたとしても、著者は日経平均を動かすほどの資金を持っている。その相場で勝つためには、著者よりもつねに早いタイミングで売買を成立させることは必須条件となる。大海に浮かぶ豪華客船と、笹舟ほどのパワーバランスである。笹舟が、波の影響をもろに受けることは必至だ。

 ということで、本書をとても面白く読んだのだが、あまりに著者との思考、境遇などの違いが鮮明すぎて、ファンタジーを読み終えたような心持ちで本書を閉じた。

河本真 『働かない働き方。』

『働かない働き方。』(河本真著、パブラボ) © Japan Business Press Co., Ltd. 提供 『働かない働き方。』(河本真著、パブラボ)

 しつこいようだが、もうすぐ無職である。現時点で、次に何をしようかということも決まっていない。我ながら、場当たり的な仕事の辞め方だったなと少し後悔もつきまとう。そんな状況であるから、本書のタイトルにも目が留まった。

 3部構成からなる本である。著者は日常で、「仕事」というワードを使わないで、「未来づくり」と言い換えているという。今日が明日という未来をつくるということか。

 第1部では働かないための17のリストを挙げ、第2部でそれに対する著者の見解を述べる。そして、第3部の主題が「そのために付き合うべき人」である。若干飛躍している気がするのだが、ドラクエもⅢで飛躍的に面白くなったから、きっと正しいに違いないと検証もせずに鵜呑みにする。

 しかし、本書の構成で少し気になった点があった。読み始めると、著者が何者であるのかが明らかにされないままに、本文が先へ先へと進んでいってしまうのだ。カバー折り返しのプロフィールを見れば分かることではあるが、どんな人なのかわからぬまま読みすすめ、繰り広げられる著者の主張をどこまで信じればいいのか。ちょっと判断しかねた。

 いいことを言っていると思うなら、誰が言っていようと取り入れればいいだけの話なのであるが、権威づけを求めている弱い自分に気づく。そのことに気づけたことは収穫であった。もうすぐ無職の言い分に何とか説得力を持たせようと、我ながら必死である。

 本書をざっと要約する。キモは「見た目の働いている時間」を意識的に限定し、それ以外の働いていない時間をいかに「見た目の働いている時間」にフィードバックさせるかということ。むしろ24時間働いているのでは?と思ってしまったが、やはり未来をつくるためには致し方ないことなのだろう。

 あーあ。本質が怠惰な自分は、オンとオフをきっちり分けたいタイプであるから、参考程度に留めておくことにする。働き方改革による「時短」を考えている人は、読むと参考になるかもしれない。

平山真也 『成功に奇策はいらない』

『成功に奇策はいらない――アパレルビジネス最前線で僕が学んだこと』(平山真也著、英治出版) © Japan Business Press Co., Ltd. 提供 『成功に奇策はいらない――アパレルビジネス最前線で僕が学んだこと』(平山真也著、英治出版)

 今回の収穫は本書である。

「本当に美しいものは、注目を求めない」

 上記は、私の好きな映画である「LIFE!」(2013年公開)で用いられている印象的なセリフだ。本書を読み終えて、このセリフを思い出した。

 現在、自分が勤めている書店業界(もうすぐ退職)と、帯に書かれた「斜陽産業」という文字が頭のなかでリンクして、本書へと手が伸びた。著者は、「斜陽産業」と言われるアパレル業界で成長し続けている「Dickies」の経営に携わっている方だという。

 一読した感想は、地に足がついたとても好感の持てる本だということ。成功体験のみならず、失敗体験もつまびらかにし、何がいけなかったのかを分析し、示してくれている。小売業界における目的と意図と、それに対するアプローチの仕方が明瞭に書かれており、読んだ人の頭のなかをシンプル化するのに一役買ってくれるだろう。

 何よりタイトルがよい。当たり前のことを極限まで徹底するという姿勢。言うは易し、行うは難し。横山はやすし、西川はきよしである(本書の内容とは無関係です)。

 わかりやすい「奇手」、「妙手」ばかりに注目が集まり、持てはやされている印象がある現在の小売業界。やるべきことを地道に積み上げることが、じつは一番の近道なのだと教えてくれる。一足飛びに結果を求められがちな時代にあって、それらをやり続けることが大切だと分かってはいるが、実現するのは難しく、胆力がいる。しかし、徹底して当たり前とされていることを繰り返すことの大切さを思い出させてくれる。

 派手なことばかりが礼讃され、炎上商法に代表されるようなふざけた金の稼ぎ方がまかり通る、いまの世の中への抑止力となって欲しい。そんな願いを込めて、ひそかに本書への注目を後押ししたい、そんなことを思っている。ユーチューバー、虚業で稼ぐ輩、身近にはびこる詐欺師などなどを苦々しく思っている人には、ぜひとも読んでいただきたい一冊である。

 ということで、注目を求めず、自分が美しいと思うものを信じて、ジミチに働く道を模索しようと決意をあらたにする。ドーラクは老後に取っておこう。いや待てよ、老後が不安だから投資でも始めたほうがよいだろうか・・・そして冒頭に戻る。

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