古いバージョンのブラウザーを使用しています。MSN を最適にご利用いただくために、サポートされているバージョンをご使用ください。

年収1500万円で1億円赤字 理想の教育と家計の現実

NIKKEI STYLE のロゴ NIKKEI STYLE 2018/05/17 11:00

世帯年収1500万円でも教育費にかけられるお金は限られている(写真はイメージ=PIXTA) © NIKKEI STYLE 世帯年収1500万円でも教育費にかけられるお金は限られている(写真はイメージ=PIXTA)

 中高と私立に通わせて、大学は海外留学。夫が46歳、妻は39歳で世帯年収1500万円の夫婦が、子どもに最高の教育を用意することは可能なのか。子育て教育費の「本当の話」をまとめた『教育費&子育て費 賢い家族のお金の新ルール(日経DUALの本) 』の著者、ファイナンシャル・プランナーの前野彩さんが読者の悩みにお答えします。

◇  ◇  ◇

<読者の悩み>

夫46歳、妻39歳。生まれてくる子にどれくらい教育費をかけられますか?

 夫は46歳、私は39歳。2年前に結婚して待望の赤ちゃんを授かり、7月には出産予定です。最近、よく夫と話し合うのは子どもの教育費のこと。一人っ子の予定なので、多少お金がかかっても可能な範囲で、できるだけいい教育を受けさせてあげたいと思っています。中学受験をして中高と私立に通い、海外の大学へ4年間留学する……という理想の教育プラン、わが家の家計でかなえられるでしょうか? 2年前に買ったマンションのローン返済と夫婦の老後も心配です。(東京都在住 39歳S子さん)

回答者: 前野彩さん(ファイナンシャル・プランナー)

■夫正社員、妻フリーランス。世帯年収1500万円と高収入だが……

FP前野彩さん(以下、前野) 今回の相談で一番聞きたいことはどんなことですか?

相談者S子さん(以下、S子) やはり教育費です。今の収入レベルでどれくらい教育にお金をかけられるかが知りたいですね。「夢の教育プラン」をかなえるためにはどれくらい貯蓄しなきゃいけないのか、無謀ではないのか。

前野 計画的に考えていらっしゃいますね。まずは、S子さんご夫妻が考える「夢の教育プラン」について具体的に教えてください。

S子 小学校は公立でいいんですけど、中学受験して中・高・大学と私立を考えています。できれば大学は海外の大学に4年間留学させてあげられればいいね、と夫と話し合っています。

前野 小学校だけ公立プランとのことですが、小学校入学前はどうでしょうか。

S子 今まさに保活中ですが、フリーランスなので認可保育園は無理そうで。認可外で候補をいくつか探したところ、おむつ代を入れて大体月7万4000円くらいかかりそうです。

■夫の定年時に学費がピークに

前野 共働きで、認可外だと保育料の高さは避けられないですもんね。お子さんのことや教育費以外で、希望するライフプランはありますか。

S子 これもあくまで夢ですが……今住んでいるのは築15年のマンションで、築30年を超えて価値がすごく下がってしまう前に住み替えたいなと思っています。夫が65歳で定年を迎えるタイミングで、鎌倉とか、今より少しのんびりしたところに。今のマンションを売却したお金で買い替えられるならそうしたいです。

前野 お仕事については、S子さんご自身は今後どう働いていきたいですか。

S子 今の仕事は好きなので、できるだけ長く働きたいとは思うんですけど、現実的に考えたときにフリーの記者って需要があるのが55歳くらいまでかなと思っていて。

前野 お子さんは小学校までは無認可の保育園、その後地元の公立小学校に入学して、私立の中高一貫校を受験、その後はできれば海外の大学へ留学させたい、と。割とフルコースですね(笑)。そして、ちょうどお子さんが大学に入学するころに、パパが65歳で定年を迎えます。では、このままの状態でこのプランが実現可能なのか。そして実現するために何が必要なのか。家計の現状と、これからかかるであろうお金を一つずつチェックしていきましょう。

■夫婦二人の合計貯蓄額は690万円

前野 まずは貯蓄の現状から見ていきましょう。夫婦二人の合計貯蓄額は690万円。毎月の貯蓄については、今おっしゃった5万円のほか、家計の中から貯蓄10万円というのはS子さんが出していらっしゃいますか。

S子 そうですね。基本的に生活費は全部夫持ちで、私の収入から月10万円ためています。

前野 ボーナスは、ご主人の分が夏と冬で合わせて約250万円あるんですね。

S子 これまでは結婚費用やマンションのリフォームに充てていたんですけど、これからは80万円ずつ夏と冬のボーナス時に出して、年間で160万円は繰り上げ返済に回したいと思っています。

前野 ご主人の退職金はどれくらいになりそうか分かりますか。

S子 会社の人の話を聞いていると、1000万円はないみたいなんですよね。800万円くらいかなあ。4年前に転職したばかりなので、在職期間が短いんですよね。

相談者S子さんのプロフィール

<夫婦の仕事と年収>

■夫(46歳)/正社員・金融 年収1050万円(税込み)、月給43万円(手取り)、ボーナス250万円

■妻(39歳)/フリーランス・マスコミ 年収450万円(税込み)、月給33万円(手取り)、ボーナスはフリーランスのためなし

<現在の貯蓄や金融商品>

■夫/普通・定期預金380万円

■妻/普通・定期預金50万円、投資信託170万円(時価)、株式90万円(時価)

<毎月の貯蓄>

■家計から月10万円

■自動積立月5万円

■教育資金としてつみたてNISA月2万円(2018年3月からスタート)

<住宅ローン>

■月14万円ずつ返済

2年前に都心に中古マンションを購入しリノベーション。リフォーム費用含めかかったお金は7000万円。住宅ローンは5000万円を20年固定金利(0.95%)35年ローンで借入。

■外食が夫婦共通の趣味。なかなか「レジャー費」が減らせない

前野 続いて支出の確認をしていきましょう。月々出ていくお金については、食費が4万円、日用品が1万円、レジャーに5万円、夫婦のお小遣いは夫6万円・妻4万円で、その他美容院や洋服代などが2万円。食費が月4万円というのはきちんと管理されている印象ですが、レジャー費が月5万円というのは……?

S子 これはほぼ外食費ですね。結婚する前は二人で月に16万円くらい外食していました。外食費ってどれくらいの金額が理想なんでしょう?

前野 実は「これが理想の家計」というものはないんです。高いと思っていても、「ここにわが家はお金をかけたい、譲れない」ということがちゃんと分かっているのなら、それは無駄遣いでないと思いますよ。大事なのはお金をかけたいところと節約するところの「メリハリ」です。

 出産費用などのイレギュラーな出費は除いて今お聞きした日常的な生活費を足していくと、年間で334万円。住居費は固定資産税を入れて230万円。火災保険や冠婚葬祭費などその他もろもろの費用54万円も合計すると、年間の支出は618万円です。

<年間の支出> ■生活費 334万円 ■住居費 230万円 ■その他 54万円⇒合計 618万円

 この支出を基に今後の生活を考えていきましょう。

■仕事復帰後は国保になり社会保険料が上がる

前野 S子さんの場合、出産後に健康保険が変わりますね。

S子 フリーランスになってからは、以前勤めていた会社の健保の任意継続制度を使っています。保険料は年間22万円で、高いなあと。

前野 仕事復帰後は国民年金と国民健康保険に保険料などを払います。自治体によってはホームページ上でシミュレーションできるので、試算してみましょうか。今の収入をキープできるとなると…国民健康保険料は年間29万5000円。国民年金と合計すると年間50万円くらいになります。

S子 えっ。保険料が今より7万5000円もアップするんですか!

前野 S子さんの収入からこうした社会保険料や経費を差し引いていくと、復帰後の世帯年収は手取りで1070万円になります。収入から今ためられている貯蓄185万円と支出618万円を差し引くと残りは267万円。お子さんが生まれたら、さらに教育費(保育料)として89万円が出ていきます。そうすると、教育費が増えた段階で計算しても178万円が残ります。これが使途不明金です。小学校から大学までの一般的な教育費用はご存じですか?

S子 全然知らないです。

前野 小学校は公立とおっしゃっていましたが、公立小学校は塾代も含めて平均月2万6700円なんです。文部科学省の調査によると、私立中学校だと塾などの費用も入れて平均で月に11万1700円、私立高校は平均月8万3300円ですね。大学は私立文系だと、4年間で417万円というのが学費の平均です(データは前野彩著『教育費&子育て費 賢い家族のお金の新ルール』より)。

S子 ぱっと見た感じ、ウチの家計じゃ無理な気がしてきました(笑)。これじゃ繰り上げ返済ができない……。住宅ローンを組むときに夫と試算してみたのですが、毎年繰り上げ返済していかないと、老後にローンが残っちゃうんですよ。中学から私立は厳しいってことなのかなあ。

■このままでは夫79歳、妻72歳で貯蓄がマイナス1億円に

前野 大学は海外へ4年間行かせたいということでしたよね。例えば1年間オーストラリアに留学したとすると、学費と生活費を合わせて320万円くらいかかります。4年間留学するとなると約1600万円、留学する国や学校によっては2000万円くらいかかることも。

S子 4年間で2000万円! 夫はそのときもう定年か。教育破綻しちゃいますね……。

前野 中高は私立を優先して、留学を短期間に変更するか、もっと働いて収入を増やすのか、それとも節約するのか。どれを優先するのかは夫婦の価値観や考え方次第ですから、ご夫婦で話し合ってみてください。将来、お子さんが大学生のときに家計がどうなっているかを見てみましょうか。

S子 4年間の海外留学はどう考えても無理なので、大学は私立文系で1年だけ海外留学、というパターンで試算していただけますか。あと私の収入は、50歳ごろから手取り年収200万円くらいで。55歳からは仕事が続けられるか分からないので、収入ゼロでお願いします。

前野 今までの前提条件をすべて入れてシミュレーションしてみました。一番下の貯蓄額の推移を見ると……お二人の現役時代は貯蓄額は順調に増えていきますね。ご主人が定年になり、退職金が入った時点では、貯蓄額は5000万円まで増えています。

S子 意外に増えてる(ニコニコ)。あ、でもこれはローンを繰り上げ返済しない場合ですね。

前野 そう、ぬか喜びさせてごめんなさい。このままいくとご主人が79歳、S子さんが72歳のときにローンは完済できるのですが、貯蓄は1億円近い赤字になっていますね。

S子 えーっ! マイナス1億円!

(後編に続く)

前野 彩

© NIKKEI STYLE  Cras代表取締役。FPオフィス will代表。ファイナンシャル・プランナー。「お金の安心と可能性をかたちにし、心の自立と輝く明日をつくる」ことを理念に、「知れば得トク、知らなきゃソンするお金の知恵」を子育て世帯や女性に伝えている。著書多数。近著に『教育費&子育て費 賢い家族のお金の新ルール』(日経BP社)、『本気で家計を変えたいあなたへ ~書き込むお金のワークブック』(日本経済新聞出版社)、『書けばわかる! 子育てファミリーのハッピーマネープラン』(マンガ:此林ミサ、日本経済新聞出版社)。

(ライター 澤田聡子)

[日経DUAL 2018年3月30日付記事を再構成]

NIKKEI STYLEの関連記事

image beaconimage beaconimage beacon