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桐谷さんの優待投資 リーマン・ショックで心の支えに

NIKKEI STYLE のロゴ NIKKEI STYLE 2018/11/09 11:00
桐谷広人(きりたに・ひろと) 69歳。元プロ棋士(七段)。1984年の失恋を機に株式投資を始める。現在800以上の優待銘柄を持ち、その優待品で日々の生活をほぼ賄っている。癒やされる人柄も人気の理由 © NIKKEI STYLE 桐谷広人(きりたに・ひろと) 69歳。元プロ棋士(七段)。1984年の失恋を機に株式投資を始める。現在800以上の優待銘柄を持ち、その優待品で日々の生活をほぼ賄っている。癒やされる人柄も人気の理由

株主優待を利用するために自転車で走り回る独特のライフスタイルと愉快なキャラクターが注目され、本誌をはじめ、テレビのバラエティー番組や講演会などで大人気の桐谷広人さん。実に年間約800銘柄分の優待を取得し、食事から服、日用品、家電、レジャーなどまで、生活の大半を優待で得た品物や優待券で賄っている。今回は、株主優待の良さについて語ってもらった。

「今は、多くの人に優待株の良さを知って投資してもらいたい、と心から思っています」と桐谷さん。優待投資は誰にでも楽しく気軽にできる。そして優待品は届くとうれしいのはもちろん、株式投資を続けていく上での「心の支え」にもなると感じているからだ。

優待は株式投資に関心を持ったり、様々な企業やお店、商品を知ったりするきっかけになる。また優待を使うことで、自分が興味を持つ対象が広がることもある。

例えば、桐谷さんは映画を年間約100本見る。「初めは優待券を消化するために半ば義務のように見ていましたが、そのうち様々なジャンルの話題の映画を見るのが面白くなりました。それで、テレビで映画の話をしていたら、今では映画の評論や宣伝の仕事も来るようになりました」。映画の仕事では、俳優のジョニー・デップやスティーブン・スピルバーグ監督とも会った。「そういう貴重な体験ができるのも、優待投資をしているおかげ。だから、映画関連の優待株はずっとお気に入りです」。

最近、全国各地で行っている講演会でも、そうした優待投資の楽しさを伝えている。

■資産額は過去最高を更新

優待品が投資の「心の支え」になるというのも、自身の経験から実感していることだ。

桐谷さんの現在の資産額は約3億3000万円と過去最高の水準。リーマン・ショック(2008年)以前のピーク時に記録した約3億円を、“優待投資パワー”でついに更新した。ただ、30年を超える投資歴の中で、このスタイルと資産額にたどり着くまでには起伏の激しい道のりがあった。

 リーマン・ショックの時には、強気の信用取引が裏目に出て資産が一時約5000万円まで急減。「追い証の恐怖で夜も眠れないし、まさに死ぬような思いのどん底」という状況から、約10年かけてここまで復活してきたのだ。

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桐谷さんの株式投資の“歴史”をたどったのが上の図だ。

株を始めたのは、プロ棋士として現役真っただ中の1984年。仕事として毎月1回、証券マンに将棋を指導していたのが縁で、株を付き合いで買うようになったのがきっかけだった。「最初は二十数万円ほどの投資でしたが、1カ月で5万円も儲かりました」。

その後、投資額を次第に増やしていくのと時期を同じくして、日本はバブル景気に突入。89年末には日経平均株価が4万円に迫る高値を付け、桐谷さんも大波に乗って約1億円の利益を得た。「自分は株の天才かもと思いました。まあ、その頃はみんな同じように思っていたんでしょうけどね」

好調に乗じて信用取引も始めた。ところが、そこが相場のピークに。バブル崩壊で株価が下がる中でもどんどんと買った結果、利益の大半を吹き飛ばした。

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 これに懲りて株の売買をしばらくやめていたが、「喉元過ぎれば……で、2年後に少しだけ売買を再開。その後はこつこつと資産を増やしていたのですが、今度は97年の山一証券の倒産に直面して再び大きな損。この時も信用取引で失敗しちゃいました」。

転機となったのは、2000年頃からの証券取引のネット化。安い手数料を味方に売買を積極的に行い、資産を急拡大していく。03年からの小泉相場にもうまく乗り、06年初めには資産が3億円に達した。「株を買わなきゃ損だと思うくらい、気は大きくなっていたかも」。

07年には57歳で将棋を引退。「そこで、これから株に全力を注ぐぞと信用取引も拡大させました」。しかし、まさに二度あることは三度ある。サブプライムローン問題とリーマン・ショックによる相場急落に巻き込まれ、ここで前述の「どん底」に落ちることになる。「1日に2000万円くらいのマイナスになることもありました。信用取引の追い証で、毎日何百万円と用立てなくてはいけない。とにかく手持ちの値がさ株をどんどん売って充てました。あんな恐怖は二度と味わいたくないものです」。

そんな状況の中で救いになったのが、手元に残していた金額が少ない株の優待品や優待券だった。「お米とか食事券、買い物券などのおかげで食いつなぐことができたんです。優待ってありがたいものだ、と心底思いましたね」。

桐谷さんが特に思い出すのは、豆腐店を展開する篠崎屋(東2・2926)の優待券。豆腐や総菜、漬物などを安く買い、おかずにできた。「今は優待を廃止してしまったのが残念ですが、当時はとても助けられました」。

■こてんぱんにされてよかった

この経験を経て、桐谷さんは優待投資に軸足を移していく。

12年のアベノミクス相場開始以降は信用取引もやめ、優待&配当狙いを中心とした投資スタイルに完全に切り替えた。「儲かったところで調子に乗ると必ず痛い目に遭います。でも優待投資なら、もうそんなことはありません」。以降は、「優待+配当利回りが4%」という自分なりの売買の判断基準を守り続けて、資産を着実に回復してきたのだ。

さらにこの優待投資への転向が、結果として、その後の“人気者”への道につながるのだから人生は分からない。「今となっては、こてんぱんにやられてよかったと思っています。そのおかげで信用取引をやめ、優待で映画を見て、食事をして、仕事を楽しんで、いろんな人にも会えます。人生の幸せ度で言えば、血眼で売り買いして大儲けしていた頃より何倍も高まっているでしょうから」。

こうした起伏に富む経験も、今では講演などのいい話の種だ。

■11月の権利確定銘柄

では最後に、ブログ「株主総会お土産日記」が人気の株主優待好き主婦投資家mtips氏が厳選した「2018年11月に入手できるお得銘柄」を紹介しよう。2018年11月中に割当基準日を迎える銘柄だ(なお、2018年11月末が割当基準日の場合、優待を得るための最終売買日は、11月27日になる)。銘柄選択の際の参考にしてほしい。

注:データは2018年10月5日時点。売買単位は全て100株。同内容の優待が年2回ある場合、1回分の内容を表記。利回りの──は算出不能を示す © NIKKEI STYLE 注:データは2018年10月5日時点。売買単位は全て100株。同内容の優待が年2回ある場合、1回分の内容を表記。利回りの──は算出不能を示す

(日経マネー 小谷真幸)

[日経マネー2018年12月号の記事を再構成]

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