古いバージョンのブラウザーを使用しています。MSN を最適にご利用いただくために、サポートされているバージョンをご使用ください。

聴衆の「期待」を上手にコントロールするプレゼンテーション

ダイヤモンド・オンライン のロゴ ダイヤモンド・オンライン 6日前 三谷宏治
聴衆の「期待」を上手にコントロールするプレゼンテーション © diamond 聴衆の「期待」を上手にコントロールするプレゼンテーション

アクセンチュアで爆発的に増えた講演の機会

 1996年にボストン コンサルティング グループ(BCG)からアクセンチュアに転職して、新しい表現の「場」が生まれました。それが「書籍(本書き)」「寄稿(記事・論文書き)」と「講演」でした。

 上司の一言から『CRM~顧客はそこにいる』を共著者として書いたのが1998年末。日本で初めてのCRM(*1)解説書として、その後の増補改定版(2001)も含めれば4万部を超えるベスト・ロングセラーになりました。

 この執筆がキッカケで、そのテーマでの寄稿やらプレゼンテーション(講演)を大量に引き受けることになったのです。

 ただ、もともと本自体、その直前に始めていた「CIO(*2)向けCRMセミナー」から来ています。そのセミナー向けにつくり込んでいたプレゼンテーション資料やそのときのしゃべり(トーク)をそのまま書き下したものが、『CRM』でもありました。だから、CRMテーマでプレゼンテーションをすることにはなんの問題もない……はずでした。

*1 Customer Relationship Management 顧客関係マネジメント*2 Chief Information Officer 最高情報責任者もしくは情報統括役員

講演だと顧客がバラバラ、期待もバラバラ

 ところが、やってみたら、全然違いました。

 そのときの講演依頼は、インハウス(一企業向け)のものではなく、一般セミナーやIT展示会、業界団体のものが多かったのです。

 聴衆の満足・不満足は、期待と現実のギャップによって生じます。

 現実が一定だとすれば、事前の期待とそれとが一致すれば「期待通り(満足)」となり、期待が大きすぎたりズレていれば「期待外れ(不満)」、逆なら「期待以上!(大満足)」となります。

 だから「期待値を上手に下げる」ことが満足度アップのコツだったりします。

◆満足度は期待と現実とのギャップで決まる

 ところがこの「期待」は個々人によってその内容がまったく異なります。しかし、講演時に提供できる「現実」は通常、たった1種類だけ。

 なので、現実、つまりプレゼンテーションの内容が完璧だとしても、それがその聴衆個人のニーズに合っていなければ、満足度は大いに下がるでしょう。問題は期待の大小より現実とのズレなのです。

 東京ビッグサイトのIT系展示会(エキジビション)などで講演をすると、聴衆のバラツキに驚きます。

 大企業の社長クラスから新入社員までが聴衆として集まり、その知識レベル・興味関心はバラバラです。更には、立場が180度異なるヒトたちの集まりになります。つまりITを使う(ユーザー)側と提供する(ベンダー)側です。

 展示会には無数のIT企業がブースを出しスタッフが常駐しますが、みんながずっと忙しい訳ではありません。だから、展示会は「ユーザー企業への売り込みのために開かれるもの」なのに、そこでのイベント(講演など)参加者は、半数がIT系ベンダー自身、などということになるのです。

 ユーザー企業の中でも、社内情報システム部門のヒトと、ユーザー部門のヒトでは、これまた期待が全然違います。この三者(ITベンダー、ユーザー企業IT部門、ユーザー企業ユーザー部門)すべての「期待」に同時に応える話なんて、できるわけがありません

バラバラの「期待」を整理する

 放っておけば、聴衆は勝手に期待します。

「自分に合った話が聞きたい」「成功や失敗の具体的な事例を知りたい」「細かいことより新しいコンセプトが聞きたいな」

 そして、同じプレゼンテーションに対して、部長以上の幹部クラスからは「考えが整理されて大変良かった」と評価され、現場スペシャリストからは「話が抽象的で役に立たない」と酷評されます。だったらと具体論を詳述すると幹部たちには「個別の経験を語られても意味がない」と一蹴(いっしゅう)される始末……。

 2回ほどやって、プレゼンテーション内容の調整で対応するのは止めました。「現実」より、「期待」を変えるしかないと悟りました。

 一番簡単なのは「○○対象」と聴衆を絞ること。ただこれでは「IT展示会」の主催者のニーズには応えられません。なので、最初に挙手してもらうことにしました

「あなたの立場を教えてください」「次の内、どれに一番近いでしょうか?」

「(1)ユーザー企業のユーザー部門もしくは経営者、(2)ユーザー企業のIT部門、そして、(3)ITベンダーもしくはコンサルティング会社、つまりアクセンチュアからすると競合他社ってやつですね(笑)」

 そして、挙手の直後に宣言します

「今日の講演は、ユーザー企業IT部門のみなさん向けです」

「ユーザー部門の方々は、IT部門の本音と思って聞いてください」

「IT系企業の方々やコンサルタントのみなさんにとっては、アクセンチュアがどうユーザー企業に売り込んでいるのかの研修って感じですかね(笑)」

 後は、ひたすら宣言したターゲットに向けた話として集中します。

「ホント、ユーザー部門って後でコロコロ要望を変えますよねえ」「でもそれにも理由はあるんです」「特にCRMの世界だと……」

 最初の挙手と宣言。これだけでも「変な不満」はぐっと減ります。

◆あなたは誰? から始める期待コントロール

 なによりこちらのスタンスを示すことで、聴衆の参加スタンスもハッキリします。

「みんなの満足なんて追いかけませんよ。成功の鉄則は集中ですよね」

 でも、割り切ってそう伝える方が、全体の満足度は格段に上がるのです。なぜなら期待と現実のズレがなくなるから。

 聴衆に立場を問うことから始めるプレゼンテーション。ぜひ試してみてください。

参考・『ゼロからのプレゼンテーション』三谷宏治(プレジデント社)

(K.I.T.虎ノ門大学院 教授 三谷宏治)

お知らせ

 9月13日発売の新刊『ゼロからのプレゼンテーション』は、「プレゼンテーション部門」で発売前に1位(9月10日)を記録しました。 ミジンコレベルから始まった私のプレゼンター人生。基本はやっぱり原稿を書いて覚えることです。そしてできれば何回も同じ話を繰り返すこと。その練習法を発刊記念講演で公開します。9月22日、K.I.T.虎ノ門大学院に申し込みの上おいでください。初心者・初級者向けですが、教える立場のみなさんにも是非。申し込みはこちらまで。

 講演・研修など「うちでもやって!」や記事へのご質問・ご意見などはHPまでお寄せください。Official Websiteの「お問い合わせ」で受け付けています。

ダイヤモンド・オンラインの関連リンク

ダイヤモンド・オンライン
ダイヤモンド・オンライン
image beaconimage beaconimage beacon