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「儲かっているのに優遇」に怒り。NY進出断念で見えたアマゾンが“嫌われる理由”

BUSINESS INSIDER JAPAN のロゴ BUSINESS INSIDER JAPAN 2019/02/18 05:05 津山恵子
クィーンズ区ロングアイランドシティに建設予定だったアマゾン第2本社に反対する住民たち。アマゾンは建設中止に追い込まれた。 © REUTERS/Shannon Stapleton クィーンズ区ロングアイランドシティに建設予定だったアマゾン第2本社に反対する住民たち。アマゾンは建設中止に追い込まれた。

「ニューヨーク・クィーンズは、売り物じゃないぞ!」

「アマゾンの価値は、ニューヨークのものじゃない!」

アマゾンは2月14日、ニューヨーク市クィーンズ区ロングアイランドシティに建築を予定していた第2本社の計画を撤回した。発表直後に組合や市会議員が開いた記者会見で、本社進出に反対していた市民が、歓声をあげた。

アマゾンは声明で、白紙撤回の理由をこう説明した。

「世論調査では、70%のニューヨーカーが私たちの計画と投資をサポートしているのに、州議会議員やローカルの政治家が、私たちの進出に反対し、計画を進めるためにロングアイランドシティの将来に必要な関係を築くこともしないと、言明したためだ」

助成金と税優遇措置に非難の声

アマゾンで働く人たちの労働環境が悪いという報道も、NY進出反対の拍車をかけた。 © REUTERS/Brendan McDermid アマゾンで働く人たちの労働環境が悪いという報道も、NY進出反対の拍車をかけた。

アマゾンが第2本社を計画していたクイーンズ区は、世界190カ国からの移民の中間所得層が住む多様性に富んだ地域。アマゾンが第2本社の計画を発表すると、全米238の自治体による誘致合戦の末、2018年11月にニューヨーク市と首都ワシントンに近いバージニア州北部に新本社を設置すると発表した。しかし、アメリカ最大の都市ニューヨークに進出する計画は、わずか3カ月で頓挫した。

ニューヨーク市民や地元政治家の一部が、アマゾン進出に反対した理由は以下だ。

  • アマゾンが組合に反対し、地域のビジネスの時給を引き下げる可能性がある。
  • マンション価格が投機目的で、あるいは高所得のアマゾン幹部が流入することで引き上げられ、以前からの住民が賃貸を払えず、引越しを強いられる。
  • アマゾンの労働環境が悪いという報道があり、地域ビジネスへの悪影響が懸念される。
  • 学校など公共施設の不足を招き、以前からの住民や学童に悪影響が及ぶ。

同時に、反対派の州や市議会の議員からは、アマゾンが多額の利益をあげる企業であるにもかかわらず、自治体が30億ドル(約3300億円)規模の助成金と税優遇措置を与えることに非難の声が集中していた。

市民の間では複雑な心境も

下院最年少議員として人気で、クィーンズ区選出のアレクサンドリア・オカシオコルテスは、ニューヨークのニュース専門局「NY1」に出演し、こう述べた。

「経済に投資することはもちろん大切ですが、市民や移民のために投資することも同じくらい大切です。なぜアマゾンだけに30億ドルも投資するのでしょうか」

アマゾン第2本社をニューヨークに建設することに反対したブレイマー市会議員。 © NY1放送を編集部撮影 アマゾン第2本社をニューヨークに建設することに反対したブレイマー市会議員。

この日、記者会見したクィーンズ区選出市会議員ジミー・ヴァン・ブレイマーも、こう強調した。

「一部の人は、儲けることしか考えていない。アマゾンは移民から搾取し、怯えさせる企業だ。この国では、移民を守るために戦うことが重要だ」

同時に「協力して戦えば、世界最大の企業が相手でも、何でも可能になる。労働階級、移民、組合のために戦い、ニューヨークの価値を守るために戦ったことを誇りにしている」とツイートした。

一方でアマゾンは、第2本社で2万5000人以上を雇用するとしていたため、テレビカメラの前で「恥を知れ!雇用が失われたぞ!」と叫ぶ個人営業の男性の姿も見られた。

クィーンズ区商工会議所のトーマス・グレック会頭兼最高経営責任者(CEO)は、ニューヨークのニュース専門局「NY1」の電話インタビューに応じ、こう話した。

「ショックで、言葉もない。多数の人が、アマゾンには反対していないのに、少数派のリーダーや当局者が反対して、ビジネスチャンスが失われた」

シアトルを離れる理由は皆同じ

ニューヨーク州知事のアンドリュー・クオーモ(左)とニューヨーク市長のビル・デブラジオは、アマゾンの建設計画を歓迎していた。デブラジオ市長は、計画撤回を受けて「驚愕している。人々はほんの小さな改善を要求しているだけなのに、対話も始めないまま撤回とは、がっかりだ」とアマゾンを批判した。 © REUTERS/Jeenah Moon ニューヨーク州知事のアンドリュー・クオーモ(左)とニューヨーク市長のビル・デブラジオは、アマゾンの建設計画を歓迎していた。デブラジオ市長は、計画撤回を受けて「驚愕している。人々はほんの小さな改善を要求しているだけなのに、対話も始めないまま撤回とは、がっかりだ」とアマゾンを批判した。

実はニューヨークが大企業の進出を拒み、撤回させたのは、これが初めてではない。

過去には、マクドナルドや小売大手Kマートなどの進出に大規模な反対デモがあった。両社は今は進出しているが、小売世界最大手ウォルマートは何度も進出計画が浮上したが、いまだにニューヨーク市内に店舗を持っていない。アマゾンに反対の声が上がったのと同じく、地域の時給水準や労働環境が悪化する懸念のほか、スモールビジネスがウォルマートとの価格競争に勝てないというのが理由で反対にあい、計画が頓挫し続けている。

アマゾンを利用しない活動に参加し、ニューヨーク進出にも反対していたエンジニアのイアン・パラデス(32)は、こう指摘した。彼は、アマゾンの本社があるワシントン州シアトルの出身だが、ニューヨークに住み始めた理由はアマゾンのせいだという。

「ニューヨークで会ったシアトル出身の人々が、皆同じような理由でシアトルを離れている。つまり、アマゾンのせいで、家賃が上がり生活を圧迫する。同時に、高所得者層のせいで、シアトルの地元文化が損なわれていくのを目の当たりにした。クィーンズに進出しなくなったことで、反対運動をした人々に感謝してもしきれない」

アマゾンは、バージニア州北部の第2本社と、南部テネシー州ナッシュビルの拠点の計画は予定通り進めるという。ニューヨークに代わる第2本社の候補地探しはしないという。(敬称略)

(文・津山恵子)

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