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コンビニ恵方巻「大量廃棄」問題の解決が難しい事情

ダイヤモンド・オンライン のロゴ ダイヤモンド・オンライン 2017/02/02 井出留美
コンビニ恵方巻「大量廃棄」問題の解決が難しい事情 © diamond コンビニ恵方巻「大量廃棄」問題の解決が難しい事情

クリスマスケーキや恵方巻――。流通・食品業界で毎年繰り返される「食のイベント」。その裏では、大量の食品廃棄が出て問題となっている。特に近年、コンビニチェーンによって全国的に普及した恵方巻は、生モノだけに廃棄も多いといわれる。なぜ大量のロスが生じるのか。少しでも減らす方法はないのだろうか。(食品ロス問題専門家、消費生活アドバイザー 井出留美)

昨年の節分にはSNSで大量に売れ残った恵方巻が話題に

 昨年2016年2月3日、フランスでは、大手スーパーの売れ残り食品廃棄禁止という、世界初の法律が成立しました。奇しくも同じ日の「節分の日」、TwitterなどのSNS上では、深夜になっても大量にコンビニエンスストアの店頭で売れ残る恵方巻の写真が投稿され、フランスの動きと対比されました。

 なぜなら、深夜に大量に売れ残った恵方巻は、生モノであるため、やがて廃棄処分されるしかないと容易に想像できるからです。実際、大量に廃棄された恵方巻の写真も多く投稿されていました。

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 今年も「節分の日」を迎えました。各スーパーやコンビニの店頭には、恵方巻が並ぶことでしょう。恵方巻の由来は諸説ありますが、その年の恵方(干支にちなんで良いとされる方角)を向いて無言で丸かぶりすると幸運が巡る、などとされています。

 先日、買い物のために行った近所のスーパーでは恵方巻の予約チラシが置かれていました。コンビニではどうなのか?

 首都圏のコンビニ14店舗をまわってみたところ、うち11店舗はポスターやチラシで予約販売が告知されていました。(調査時期:2017年1月19~22日、調査店舗のうち告知があった店舗:サークルK 上大崎二丁目店、まいばすけっと上大崎2丁目店、ファミリーマート目黒三田通り店、ファミリーマート目黒駅北店、ファミリーマート虎ノ門愛宕下通り店、ファミリーマート川口駅東口店、セブン-イレブン川口駅北口店、ローソン川口栄町店、セブン-イレブン川口幸町店、ファミリーマート川口幸町二丁目店、セブン-イレブン渋谷宇田川町北店)

期待はすぐに打ち砕かれた

「これは売れ残りの食品ロス削減のための施策ではないか」――。そう思った私の期待はすぐ打ち砕かれました。

 実際に、コンビニ各社のお客様相談室を通して担当部署の方に伺ったところ、どの企業の答えも概ね「予約販売はロス削減のためではない」とのことでした。あるスーパーの方にも同じ質問をしたところ、同様の答えでした。

 そのスーパーでは、恵方巻全体の売上高のうち、予約販売が10%を占めるそうです。毎年の「催事として集客を目的とする」ほか、「売上高のベースを固めておきたい」、「お客様の来店理由にもなり、“ついで買い”も見込めるから」とのことでした。コンビニ各社の予約販売の目的もほぼ同様のようでした。

 私がコンビニの予約販売をてっきり「食品ロス対策だろう」と早合点してしまったのには、理由があります。

 コンビニの大量廃棄が取り沙汰されますが、実はデータを確認すると、コンビニ各社の食品廃棄物発生量は10年前と比べると減少傾向にあります。

 例えば、セブン-イレブン・ジャパンでは、長期保存できるパウチ総菜を販売しています。総菜といえば日持ちがしない食品の一つですが、食品包装の技術や製造技術の改良により、賞味期限延長が可能となったものです。食品業界の商慣習である「3分の1ルール」(賞味期限を3で割り、最初の3分の1を納品期限、次の3分の1を販売期限とするもの。参照:「卵は常温で2ヵ月保つ!大量の食品廃棄を生む賞味期限のウソ」)についても、ロス削減に向けて緩和したと公式サイトにあります。

「3分の1ルール」のうち、菓子・飲料に関しては、平成26年度にはイトーヨーカ堂、東急ストア、ユニー、セブン-イレブン・ジャパン、サークルKサンクスで、平成27年度にはファミリーマート、ローソン、デイリーヤマザキ、スリーエフ、イオンリテール、ポプラでも緩和されています(出典:農林水産省食料産業局発表資料)。

 ローソンに連絡した際、広報の方が「セミオート発注システム」について教えてくださいました。需要と供給の差(=廃棄ロス)を少なくする取り組みで、2015年秋に導入したそうです。このシステムでは、各店舗の直近の販売実績、曜日、天候、気温、競合環境、カード会員の購買データなど、約100項目の条件をベースに、どれくらい売れるかという販売予測を立て、店舗が発注するとよいと考えられる商品数を自動算出し、推奨しています。この推奨値を元に、最終的には店舗オーナーが決めているとのこと。廃棄ロスだけではなく、商品を売り逃してしまうロス=機会ロス・販売チャンスロスも最小限にとどめることを目的としています。

 このようにコンビニ各社は、食品廃棄物の削減には前向きに取り組んでいます。それではなぜ毎年、恵方巻の大量廃棄が取り沙汰されるのでしょうか。

スーパーよりもコンビニの方がロスを減らしづらい

 今回、複数の食品小売企業の15名に“個人的見解”を伺うことができました。まず、恵方巻については、スーパーとコンビニと「調理の面での差」があります。スーパーの場合、店舗内での調理が可能です。今回伺った企業では、「店で巻いて作り値引きして売りつくす」、「恵方巻の消費期限を8時間延長」、「閉店前の段階で残数を数え担当者へ連絡してロスをなくした」、「消化率の悪い店から消化率の良い店へと振り替えした」等の答えが返ってきました。

 かたやコンビニの場合、唐揚げなどの一部商品では店内調理はあるものの、恵方巻は店内で巻いているわけではありません。したがって、スーパーのように、販売在庫や客の入りを見ながらの製造調整は難しく、また基本的に店舗の裁量で値下げができないため、恵方巻に関しては「コンビニの方がロスを減らしづらいのでは」とのことでした。

 ついでに、スーパーの方々に、「なぜ食品廃棄がなくならないのか」と伺ったところ、「品切れ=罪悪・容認されない・恐怖・販売チャンスロス」、「過剰在庫にどれだけ余分なコストがかかっているのか社員が把握していない」、「ある程度のボリュームがないと売り場が映えない」等が挙げられました。ちなみに、品切れなどの機会損失については、むしろスーパーよりコンビニの方がより厳格でシビアなのが、流通業界の“常識”ということです。ということは、コンビニでも「食品廃棄の根絶は難しい」と、容易に想像できます。 

では、どうしたらいいのでしょうか。

 重ねて伺ったところ、「法律でペナルティを課す」、「アウトレットで消費期限間近のものを販売する」といった意見のほか、消費者(顧客)側に対しても「賞味期限や消費期限についてきちんと理解し、食べられるのに些細な理由で嫌悪することを控えてほしい」といった要望がありました。

個人の気持ちとしては「もったいない」

 私は踏み込んで、「仕事上で食べ物を捨てたときに抱いた感情」についても聞いてみました。「後ろ向きの作業で無駄」「疲れる」「苦痛」「もったいない」「自分の力量にがっくり」「世の中おかしい」「貧困国の子どもの顔が浮かんで申し訳ない」「産まれてきた牛に申し訳ない」等、残念さや罪悪感をあらわす“素のままの気持ち”が伝わってきました。

 フランスの法律が成立してから「日本でも同様の法律を」という声を聴きます。それも一案でしょう。ただ、余ったものを捨てずに寄付する以前に、「作り過ぎない」「売り過ぎない」「買い過ぎない」といった、「適度な製造・販売・消費」が求められていると思います。

 それは2015年秋の国連サミットで決められた「持続可能な開発目標」(SDGs、Sustainable Development Goals)の17のゴールのうち、12番目でも謳われています。もう大量生産・大量消費の時代ではないでしょう。先進国として、環境配慮しながらのビジネスが必須と考えます。

◆2030年に向けて世界が合意した「持続可能な開発目標」

 個人としてなら正常に判断できる。でも、組織としては感覚が麻痺して異常な行動(=大量廃棄)をとってしまっている。それはなぜなのでしょう。

 かつて私は食品メーカーの広報責任者として、個人で思ったことがあっても、会社を代表する立場としては口を閉ざす場面が多くありました。会社を辞めて独立した今思うのは、「自分の本心や五感」を殺して働いていた部分があった、ということです。

 それは“組織人”として働く人の多い日本社会全体にいえるのではないでしょうか。個として働くのでなく、組織に所属して働くと、「組織>個人(個人より組織の意向で動く)」の関係式ができます。

 組織人は、組織から給与も出張費ももらう。自分の懐が痛まない。必然的に、当事者意識は希薄になるのではないでしょうか。個人として食料廃棄はもったいないと感じても、組織としては仕方がないし、自分がそのコストを払う訳でもないし、所詮は“他人ごと”なのかもしれません。

 1月26日に、NHKのニュースを見ました。毎年、コンビニ本社は各店舗に“ノルマ”を課しており、アルバイト店員らに恵方巻を無理矢理買わせていた事例が多々あったようです。本来、恵方巻は「幸運を招く」という謳い文句なのに、それでも売れ残って廃棄するのなら「運を開く」どころか、逆に「運気を落とす」、「バチがあたってしまう」のではないでしょうか。

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