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ソフトバンク、負債が異常膨張で巨額減損リスク増大…「相乗効果ゼロ」の巨額買収の代償

ビジネスジャーナル のロゴ ビジネスジャーナル 2016/09/02 株式会社サイゾー

 ソフトバンクグループ(G)は、英半導体設計専業のアーム・ホールディングス(HD)の買収を9月5日に完了する。買収額は3兆2000億円。アームHDはソフトバンクGの完全子会社となり9月6日に上場廃止となる。

 ソフトバンクGの孫正義社長は、あらゆるものがインターネットにつながるIoT(モノのインターネット)時代の覇者を目指す。

 買収を発表した翌日の7月19日、ソフトバンクGの株価は一時、前営業日(7月15日)比678円(11.3%)安の5329円まで売られ、2012年10月12日以来の下落率となった。孫氏の“お家芸”である巨額買収に、市場は強い懸念を示したわけだ。

© Business Journal 提供

 その後、ソフトバンクGの持ち分法適用会社である中国電子商取引最大手、アリババ集団の16年4~6月期の決算が好調だったことを手掛かりに株価は反転した。アリババ集団の売上高は前年同期比59%増、営業利益は71%増と市場の予想を大きく上回った。決算発表を受けて、8月11日のニューヨーク株式市場でアリババ集団の株価は一時、6.3%上昇した。その流れが波及したかたちで、ソフトバンクGの株価は6500~7000円の高値圏で推移している。

●アリババ集団が時の氏神

 ソフトバンクGの16年4~6月期の連結決算(国際会計基準)の売上高は前年同期比2.9%増の2兆1265億円、営業利益は微増の3192億円、純利益は8.9%増の2723億円だった。

 営業利益が横這いにとどまったのは、米携帯事業会社、スプリントの営業利益が435億円と35%減に落ち込んだことが響いた。

 アリババ集団株式の売却益が純利益を押し上げた。4~6月期に2042億円の売却益を計上した。売却益がなければ純利益は681億円となり、73%の減益になった勘定だ。

 アリババ集団への出資比率は16年3月末で32.2%だったが、今回の売却により27%に低下した。それでも“カネのなる木”であることに変わりはない。ソフトバンクGが保有する上場株式の時価総額は9兆1000億円(16年7月27日時点)。このうちアリハバ集団が5兆9000億円と65%を占める。

 アリババ集団株式の一部売却はソフトバンクGの利益を押し上げると同時に、アームHDを買収する上での軍資金となった。

●みずほ銀行などから1兆円のつなぎ融資

 アームHDの買収では、アリババ集団株式の売却で1兆600億円、ゲーム大手ガンホー・オンライン・エンターテイメント株式の売却で730億円、フィンランドのゲーム大手スーパーセル株式の売却で7700億円を調達した。

 残り1兆円は、みずほ銀行、三井住友銀行、三菱東京UFJ銀行などが協調融資する方向だ。当初は、みずほが1兆円を限度に融資することになっており、単独の民間企業向けの、みずほの融資としては過去最大級とされてきた。メガバンク3行のほか、他の大手銀行や外資系の金融機関も加わるとみられている。

 融資を返済するための資金に充当するためハイブリッド社債を17年3月期中に1兆円発行する。償還までの期間は60年、金利は3%程度だ。

 ハイブリッド社債は、会計上は負債となるが、格付け会社はハイブリッド社債の一部を株式と同じように自己資本と見なす。株式を発行するのと違って、1株利益が希薄化したり、資本効率が下がったりするという悪影響は出ない。

●アームHD買収により、のれん代は4.5兆円を超える

 12兆3720億円――、6月末時点のソフトバンクGの有利子負債だ。16年3月期の売上高9兆1535億円を大きく上回る。有利子負債のうち、スプリントの分が3兆8983億円で3割強を占める。スプリントがソフトバンクGの業績の足を引っ張っていることが、よくわかる。

 アームHDの買収で有利子負債はさらに膨らむ。買収資金は、アリババ集団株式などの売却とハイブリッド社債で調達するので「心配はご無用」というのが、ソフトバンク側の主張だ。

 懸念は、のれん代の膨張だ。アームHDの純資産は2500億円。ソフトバンクの買収額3兆2000億円との差額は約3兆円だ。スプリント分などののれん代1兆4761億円(6月末)と合算すると、4兆5261億円となる。資本合計(同3兆2719億円)の1.4倍に膨らむ。

 ソフトバンクGは国際会計基準を採用している。買収企業が想定通りの収益を上げなければ、巨額な減損を一気に迫られるリスクが高まる。

●IoT時代の覇権を握ることを狙った買収

 ソフトバンクGが「減損リスクはない」と強気なのは、アームHDの経営が健全だからだ。アームHDの16年4~6月期の売上高は、前年同期比17%増の2億6700万ポンド(約368億円)、純利益は9000万ポンド(約124億円)。売上高営業利益率は48%と圧倒的な収益力を誇る。

 アームHDは半導体の開発に不可欠な回路設計図のライセンス提供が主な事業。パソコンからスマートフォン(スマホ)へとIT(情報技術)機器の主役が移り変わる際に、CPU(中央演算処理装置)の分野で米インテルの独占を崩してアームHDは台頭した。スマホの出荷が増えるほどライセンス料という形で業績を伸ばすことができる。

 海外企業の買収は、海外で拠点を築きシェアを拡大するのが主な目的だが、アームHDの仕様はスマホ分野の「事実上の標準規格」(デファクトスタンダード)といわれている。市場の大勢を占めるようになった事実上の標準ないしは規格のことだ。パソコンの基本ソフトWindowsやビデオのVHS方式などがこれに該当する。

 標準規格に照準を合わせてM&Aを行う日本企業は、ソフトバンクGが初めてだ。

 孫氏はアームHDの仕様でIoT時代の覇権を目指す。アームHDはライセンスビジネスだから、売り上げの規模が小さいことが懸念点で、利益面での貢献は限られる。孫氏も認めているように、ソフトバンクGの既存事業との「相乗効果はゼロ」だ。

 ソフトバンクGの今後の株価はアリババ集団次第だ。投資家が見ているのはアームHDの成長性ではない。ソフトバンクGが持つアリババ集団株式の含み益が増えるかどうかを凝視している。
(文=編集部)

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