古いバージョンのブラウザーを使用しています。MSN を最適にご利用いただくために、サポートされているバージョンをご使用ください。

デカトロンを迎え撃つ「ワークマン」の戦略 人気の登山パンツや滑らない靴の新作を発表

東洋経済オンライン のロゴ 東洋経済オンライン 2019/03/31 18:00 近藤 克己
ワークマンがカラフルなカジュアルウェアを中心とした新製品発表会を開催(筆者撮影) © 東洋経済オンライン ワークマンがカラフルなカジュアルウェアを中心とした新製品発表会を開催(筆者撮影)

 ワークマンは3月19日、東京上野の東京本部でメディア関係者向けに2019年春夏新製品発表会を開催した。同社はこれまで、フランチャイズオーナー向けに群馬・高崎および神戸で年2回ずつ新作展示会を開催してきた。しかし今回の発表会は従来と異なり、メディア、ブロガー、ユーチューバー、大手法人ユーザーを対象とした初めての試みである。

 昨年9月に新業態店「WORKMAN Plus」の1号店を出店以降、大きな波に乗っているワークマン。今回の試みも新戦略の一貫だ。気になる新製品をレポートするとともに、ワークマンの2019年戦略をひもとく。

アウトドアにぴったりの超高撥水デニムカーゴパンツ

 新製品発表会場に足を踏みこむと、この企業がちょっと前まで建設作業員専門の衣料メーカー・販売チェーンだったとはとても思えない光景が広がる。カラフルなウェアが並び、マネキンだけでなく新作をまとった女性のモデルも配置している。躍動感あふれるマネキン、背景を飾るパネルはアウトドアやスポーツを強く意識したものだ。

 まず最初に出迎えてくれたのは、新作の超高撥水デニムカーゴパンツ。水滴が玉になって流れていくほどの撥水能力を持つデニム地のストレッチパンツだ。

 防汚性能も持つのでバイク、キャンプやハイキングなどのアウトドアのほか、スポーツ観戦、野外ライブ観戦、ガーデニングといった汚れや雨が心配されるシチュエーションの利用を想定している。

 価格は2900円(税込み、以下同)。黒地のモデルも用意しているのでゴルフにも最適だ。同じコーナーには、かかとが踏める約160gの軽量撥水シューズ(1500円)が展示されていた。これもキャンプやガーデニングに最適。

 出せば1カ月と経たないうちに売り切れる大人気のクライミングパンツの新作も発表された。

 超高撥水・防汚機能付き、二分割で短パンにできる。装着する際に左右を間違えないよう、分割する箇所のジッパーは左右で色が分かれている。ポケットの内側はメッシュになっていて汗を逃がすベンチレーションも兼ねているなど、トレッキングユーザーの声を生かした製品だ。

 昨年、テレビなど各メディアで取り上げられたことで大ヒットになった2つの製品の新モデルも発表された。

大人気商品「滑らない防水靴」を65万足生産

 1つはジャケットにファンが内蔵された空調ウェア。

 ファンの力で衣類内部に空気を取り込み、首元から風が抜ける仕組みで、汗の気化熱で体が冷やされるため、真夏の屋外でもシャツ1枚より涼しいとのこと。昨年までは作業着としてのデザインしか販売していなかったが、今年はカラフルなデザインのものを用意し、屋外ライブやスポーツ観戦用に販売する。

 もう1つは、滑らない防水靴「ファイングリップシューズ」。

 もともとは厨房スタッフ向けに作ったシューズだが、雨の日でも滑りにくくて安全と妊婦の間で話題になり、それが一般の女性にも波及したことで、今でも欠品が続く大人気商品だ。

 今回、女性向けにSサイズを投入するとともに、カラーも2色展開とした。今年は欠品を防ぐために65万足を生産する。このほか、レインウェアやコンプレッションウェアなど、一般客向けに人気商品のカラーバリエーションを増やした。

 ワークマンは2019年3月期決算の売上高(チェーン全店)で前期比15.3%増の918億7100万円を見込んでいる。期初には832億円を予想していたが、このほど10%もの上方修正を行った。営業利益は前期比23.2%増の131億円、経常利益は同20.5%増の143億円だ。

 この大幅な増収増益はもちろん、カジュアルウェア分野への本格進出が貢献している。昨年9月に一般客向けカジュアルショップ「WORKMAN Plus」1号店をららぽーと立川に出店した後、ロードサイドの既存店の改修も含めて新業態店はこの3月末で12店舗になる。 

 「新業態にリニューアルした既存店の売上高は倍増したが、改装していない既存店への波及効果も高い」と、同社の土屋哲雄常務は説明する。従来、ロードサイドの既存店は平均月商1億500万円程度。

 WORKMAN Plusに改装した店舗は倍の2億円まで伸びた。それだけでなく、新業態店が各種マスコミに取り上げられることで既存店の来店客が増え、その結果、2月末時点の既存店全体の平均月商は1億2000万円まで拡大したという。

来期はさらにカジュアル分野の展開を強化

 今期の成功を受けて、来期はさらにカジュアル分野の展開を強化する方針だ。ショッピングセンターへのインショップを10店舗、路面新店を35店舗、路面店改装を23店舗、合計68店のWORKMAN Plusを出店する計画。これにより、来期のアウトドア系3ブランド販売額を前年比倍増以上の280億円まで拡大し、全社売上高も1000億円超えを目指す。そのため、来期もいくつかの施策を計画している。

 1つはカジュアルウェア開発の加速。既存のワークウェアのカラーバリエーション展開と、一般ユーザーの要望を取り入れた機能の付加を中心に取り組む意向だ。例えば、「レインウェアを普段着にするため、派手めのデザインを取り入れたいと思っている」(土屋氏)。

 実際、有名アウトドアブランドのハードシェルをタウン着として利用しているユーザーも多く、コストパフォーマンスに優れる同社のレインウェアはこうしたニーズに受け入れられやすいと見ている。

 「ただし品質だけは手を抜かない。今、メディア各社に取り上げられ注目度が高まっているから売り上げが伸びているが、調子に乗って中途半端な商品を出せば、あっという間にユーザーは離れていくだろう。“カジュアルウェアにプロ品質を”の基本理念は愚直に守っていく」(土屋氏)

 現在、国内のレインウェア市場は年間1,000億円程度と見られており、そのうち、ワークマンは12%ほどのシェアを握っていると同社は推測している。「普段着としても着られるレインウェアは2-3万枚程度で始め、2年後には20-30万枚まで増産したいと思っている」(土屋氏)。実現すればシェアはかなり拡大しそうだ。

 2つ目が女性向け市場の開拓。WORKMAN Plusでも女性用コーナーを展開しているものの、現在はワンスパン程度の売り場で、アイテム数も25と多くない。3月21日オープンの「ららぽーと甲子園店」と4月3日オープンの「ららぽーと湘南平塚店」では20坪の女性用コーナーを設置し、各ジャンルの売れ行き上位3位までの商品でSサイズを新たに制作し、販売することとした。これによりアイテム数は60強に拡大する。

 「甲子園店はフードコートに面しており、平塚店は食品スーパーに面している。どちらも女性客が多い立地だが、この立地の違いが客数や売れ筋にどう影響を及ぼすのか実験する」(土屋氏)

急増する「法人顧客」への対応策

 法人売り上げの拡大も図る。そもそも、カジュアルウェアの本格展開を決めたのは、今後の作業服市場の先細りを懸念したことによるものだが、WORKMAN Plusの展開により法人需要も拡大するという相乗効果も生まれている。

 「従来、法人需要は各店舗で対応していた。理由は、270人と少ない本部社員をなるべく使いたくないから。人件費の面で効率が悪い。しかし、WORKMAN Plusの出店で当社の認知度が一気に上がり、店舗・本社ともに法人大手からの問い合わせが急増したため、昨年末に本社に法人部門を設置することにした」(土屋氏)

 これまで、法人顧客によるまとまった数の注文は店舗で対応していたため、企業名や企業ロゴの刺繍程度の対応しかできなかったが、今後は既存のデザインにワンポイントで顧客のコーポレートカラーを挿入するなど、大きな注文が見込める場合にはある程度柔軟な対応をしていく方針だ。

 「WORKMAN Plusにより、当社がカラフルなウェアを製作できることの認知が広がった結果だと思う。人手不足の中、画一的なウェアではなかなか人が集まらない。建設現場だけでなく工場ラインや運送業など、あらゆる現場でファッショナブルな制服が求められているようだ」(土屋氏)

 今回、初めて新作発表会に法人顧客を招待したのも、法人客のニーズを直接聞くことが目的だという。この日、ゼネコン、製造業、運輸、デリバリーサービスなど13社の大手法人客が来場し、新作の説明に真剣に耳を傾けるとともに、別室に設けられた商談室で早速商談に入る姿も見受けられた。

 店舗開発も進める。

 「WORKMAN Plusは既存の建設系顧客と新規一般顧客の来店時間帯がきれいに分かれている。どちらも大切な顧客なので、双方が満足する売り場を作りたい。

 今考えているのは、時間帯でディスプレーが変わる仕組み。円形の台座にカジュアルウェアと作業着を着たマネキンを背中合わせにディスプレーしたものが回転したり、壁のパネルもスポーツのイメージと建築現場のイメージがスクロールで変化したりと、時間帯で自動的に変化する仕掛けを作る。音楽や香りも変化すると面白いだろう。すでに店舗の設計は出来上がっており、現在、出店候補地を探しているところだ」(土屋氏)

 首都圏の国道16号線内のエリアで、自社物件として出店できる土地を探しており、来年3月までには出店したい意向である。

日本初進出「デカトロン」へ宣戦布告

 3月29日、フランスの巨大スポーツ・アウトドアショップ、デカトロンが兵庫県西宮に日本進出第1号店をオープンした。約1800平方メートルの売り場で30ジャンル以上のスポーツ・アウトドアコーナーを設置し、すべての売り場でオリジナル製品を展開する計画だ。

 デカトロンは価格訴求力のある高機能ウェアが人気となっており、日本ではワークマンと競合すると見られている。ワークマン自体も、「関西地区のワークマン120店舗でアウトドア売り場を強化して(デカトロン)包囲網を作ります。1対120の数の優位で西宮戦争を制するつもりです」(プレスリリースより)と高らかに宣戦布告、一歩も引く構えを見せていない。デカトロンとワークマンの競争がスポーツ・アウトドアウェア市場を活性化させると期待する向きもあり、今年もワークマンから目が離せそうもない。

東洋経済オンラインの関連記事

東洋経済オンライン
東洋経済オンライン
image beaconimage beaconimage beacon