古いバージョンのブラウザーを使用しています。MSN を最適にご利用いただくために、サポートされているバージョンをご使用ください。

藤原副社長、マツダが売れなくなったって本当ですか?

ITmedia ビジネスONLiNE のロゴ ITmedia ビジネスONLiNE 2019/11/25 07:05
マツダの藤原清志副社長 © ITmedia ビジネスオンライン マツダの藤原清志副社長

 ここ最近のマツダには、聞いてみたいことがたくさんある。あれだけ出来の良いクルマを作りながら販売台数がなんで落ちるのか? MAZDA3とCX-30を批判している人は、まず乗ってみたのか聞きたい。あれに乗って、それでも高すぎると本当に思うのだろうか?

 いやもちろん手元不如意(ふにょい)で買えないという意味なら、例え新車のフェラーリやアストン・マーティンが500万円だとしても、「俺には買えないじゃないか! バカヤロー!」なのは筆者も同じ。しかしそれはコストパフォーマンスの話じゃない。とはいえ「マツダは身の丈をわきまえない値上げで失敗した」という意見は根強い。それについての反論を聞きたい。

 さらに、第2四半期の決算で、FRのラージプラットフォームのリリースを1年後ろ倒しにする発表があった。マツダの北米戦略にとっても、そして国内の第7世代ラインアップの完成という意味でも手痛い延期である。なんでそんなことが起きるのか、そしてどう対応するつもりなのか?

 いろいろと聞きたいと思っていたら、千載一遇のチャンスがやってきた。全てを知り、なおかつ一番本当のことをズバリしゃべってくれそうな藤原清志副社長がインタビューに応じてくれることになったのである。

 すでにインタビューは終えているが、それはもう超高密度のものすごいインタビューだった。2時間に及ぶ丁々発止の真剣勝負で、エネルギーを使い果たし、満足したと同時に燃え殻になりかけた筆者だが、書かないと終わらない。

 あのインタビューを最大限伝える読み物に仕立てようとすると、まずは上述の2つのテーマで筆者が解説原稿を書くべきだと思う。「第7世代は売れてないのか?」、そして「ラージプラットフォーム延期の真相」。間を空けるのも何なので、それを月火と連続で掲載し、その後、水木金で藤原副社長のインタビューをフルで(といってもたぶん、多少はカットしないと入らないし、オフレコの話もある)お届けしようという計画である。

●マツダは身の程知らずに値上げした?

 さて、「マツダは身の程知らずにクルマの値段を高くして、ユーザーに総スカンを食らった結果、クルマが売れなくてもう終わり」と、ネット界隈ではアンチ発言が渦巻いている。本当なのか?

 まずは価格の話からだ。車両価格は確かに上がっている。だがそれは「利幅を増やして大儲け」という話ではない。藤原副社長はそこをこう説明する。「今、CASEの対応で、絶対みんな(車両価格が)上がる時代なんですよ。コネクティビティとか先進安全技術とか、電動化とか、そういうことを考えると必ずベースは上がります。どの会社もこれから出てくる新車は、それ(CASE)を入れてしまったら(価格は)上がるんです。そこをどう見るか? 商品の価値を見ずに高い高いといっているのはあるかと思うんです」

 それはつまり、CASE周辺にはとてつもないお金が掛かる割に、ユーザーとしては価値を実感し難いということでもある。

 「(CASE対応をやれば)20万円くらいは最低でも価格が上がるんですが、そこだけで価値として分かってもらえないので、そこにわれわれが何をするかなんです。値上がりの原因はほとんどがCASEなんですけど、(第7世代では)静粛性の向上やオーディオ音質の向上、インテリアの質感、この3点は、(分かりにくい)CASEじゃない領域で(高くなった分)良くなっているでしょ? と納得を得るためにやってきたんです。それで『いいよね。このくらいするよね』と思っていただけるようにしたかった。だから、高額にしたとか、価格が高いといわれると、『その比較対象は、いったい何年のどのクルマなんですか?』と思うのが正直なところです」

 否が応でもやってきたCASEの時代のコストについて、むしろマツダは、ユーザーの納得感のために、可能な限りその他の部分の価値を上げることで頑張ったのだというのが、藤原副社長の主張である。Cセグメントとして高すぎるという人たちには、「赤いファミリア100万円」時代の記憶が消しがたく残っているのだろう。しかし赤いファミリアからは40年。それだけの年月を挟んだ製品の価格を比べても仕方ない。だからこそ「何年のどこのクルマなんですか?」という発言になるのだろう。

●マツダの戦略は失敗なのかを検証する

 さて、高い安いという感覚の話はおいて、利益がどうなっているかを見てみよう。

 マツダの2020年3月期第2四半期決算を見ると、かなり厳しい数字が並んでいる。売上高、営業利益、経常利益、税引き前利益、当期純利益、売上高営業利益率の全てがダウン。特に売上高利益率1.5%は正直瀕死の重傷に見える。

 いったい何でこんな事になったのかは別の表を見ると見えてくる。営業利益変動要因だ。筆者はこのページを見て驚いた。ベースの数字は前年の利益298億円にプラス312億円。つまり商品そのもの利益は2倍に増えている。販売台数がダウンしているにもかかわらず利益が2倍というのは内容が劇的に向上しているということだ。

 自動車メーカーの利益を左右する主要因は、おおむね5つある。台数(販売台数)、構成(単価)、販管費(値引き)、品質関連費用(リコールなど)、為替だ。多くの決算書では台数・構成・販管費をひとまとめにした上で、利益変動要因を説明する。マツダの場合それが図表の左側2つ。前年度の利益と本年度のベースとなる利益だ。グローバル販売台数が8%ダウンしているという結果を見れば、これが倍増する理由は消去法で見れば「構成」と「販管費」のどちらか、または両方にあることになる。

 その部分の解説コメントには「販売費用の抑制と単価改善の効果」と書かれており、多くの場合、影響が大きい順に書かれる。つまり商品の販売に関わる諸費用(販管費)が減っている。マツダの宿痾(しゅくあ)ともいえた値引きが激減しているということだ。なのになぜ財務指標では営業利益が減っているかといえば、375億円という凄まじい為替差損である。

 というのはどういうことか? ちょっと解説しよう。19年3月期の本決算発表において、マツダの丸本明社長は、インセンティブの増加で利益率を落としたことについて再三にわたって反省の弁を述べた。昨年のマツダは、北米でセダン販売の減速をカバーするために禁じ手の値引きを発動してしまったのだ。

 13年から始まった構造改革プランでも、17年から始まった構造改革ステージ2でも、マツダが必死に取り組んできたのはブランド価値の改善である。簡単にいえば値引きを抑制し、中古車価格を高く保つということだ。それだけ長いこと中核課題として取り組んできながら、19年の本決算で「また値引きをしてしまいました」と言うので、だとしたら一体一連の構造改革とは何だったのか? と筆者は思わざるを得なかったのである。販売奨励金、つまり値引きは麻薬である。「ダメ絶対!」と思ってもなかなか止められない。

 ところがそれからたった半年で、そこを改善して利益のポテンシャルを2倍まで躍進させてきたのである。もちろん北米で一度毀損させたブランド価値はそう簡単に回復しないので、先行してブランド戦略が成功している日本の利益が、北米をカバーしたと考えるのが妥当だろうが、それでもトータルで大きなプラスを稼ぎ出しているという意味では、筆者から見ると内容的に花丸級である。

 しかしながらマツダは運が悪い。せっかく胸を張れる結果を出した時に、向かい風の突風が吹いて為替差損でプラスが全部消し飛んだのみならず、後退を余儀なくされた。為替というのは天災のようなもので、これをうまく避ける方法はなかなかない。

 では藤原副社長はこれをどう受け止めているのだろうか? 筆者の「構造改革としては大成功と認識して良いのではないか?」という問いに対する答えはこうだった。

 「(構造改革がうまくいったという認識は)ありますけど、全然満足していませんし、道半ばだと思ってます。台数が減っているんですよ。販売に掛かる費用を抑えてミックス(構成)を少し良くしていって、というところは良いんですけど、台数が落ちているところがやっぱりダメだと思っているので、この売り方をしながら、台数を伸ばせるかどうか、そこができたら大成功だと思うんです」

 しかしトータルとしては、通期の見通しは155万5000台なので、前期の156万1000台と比べても微減ではないかという筆者は思う。

 「いやいや、北米は期初の公表台数(目標値)から見たら2万5000台のマイナスです。つまり昔の売り方(値引き販売)でしか、台数を売れない人たちがまだまだ存在するんです」。

 なるほど、実際米国でのMAZDA3の販売構成を見ると、低価格帯、つまりベーシックグレードで苦戦している。

 「ここ(Cセグメントのベーシックグレード)は、(北米では)日本でいったら軽自動車みたいなところですから、このセグメントの顧客は、特に低価格志向が強い人たちがたくさんいます。そこはどちらかというと販売店がインセンティブ(奨励金)を打ちながらこれまで販売してたところです。今は価値訴求販売だといっても、米国では約50年ぐらい一緒にビジネスをやらしてもらっているので。変えようとして努力はしたんですけど、少し不足していたと思います」

 さて、第7世代は高いか安いか、そしてマツダの戦略は大失敗なのかについて、筆者なりの考えをまとめておこう。

 いまやCセグメントの価格は300万円が普通になりつつある。だからこそ、今や売れ筋は200万円で買えるBセグに移りつつある。「クルマに払うのは200万円くらい」という人にとっては高くなった実感は確かにあるだろう。

 しかし世界はクルマの安全性や環境性能により高い水準を求めつつあり、それらの機能がタダで追加できない以上、車両価格は上がる。むしろマツダの場合、ブランド価値にうぬぼれられない自覚があるから、そういう見えにくい機能の向上についてただお金を取れるとは考えなかった。だからその分、静粛性の向上、オーディオ音質の向上、インテリアの質感向上の3つで埋め合わせる努力をした。そこを全部無視して金額だけで高いというなら、中身とのバランスはどうでもいい絶対価格だけの話になるのではないか?

 そして、戦略の成否だが、これは非常に難しかった部分についてうまくいきつつある。ただし、限られた範囲とはいえ、商品の価値に対しての値段ではなく、絶対価格勝負のマーケットがあり、その影響で台数を減らしている。そのための出口は、再度値引きを始めることではないだろう。価値を評価してくれる人に対してしっかり訴求していくこと、つまりマツダの価値を認める層を増やし、そこで買ってもらうことだと思う。

→インタビュー第2弾 藤原副社長、ラージプラットフォーム投入が遅れる理由を教えてください

(池田直渡)

ITmedia ビジネスオンラインの関連記事

image beaconimage beaconimage beacon