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19平米で家賃13万8千円はお得!? 日本上陸した「OYO」が不動産版アマゾンを目指す理由

AERA dot. のロゴ AERA dot. 2019/04/15 11:30
まるで部室のように賑やかな「OYO LIFE」のオフィス。スタッフの国籍もさまざまで、職場の雰囲気は、世界を席巻する勢いそのままにアツい(写真/石臥薫子) © Asahi Shimbun Publications Inc. 提供 まるで部室のように賑やかな「OYO LIFE」のオフィス。スタッフの国籍もさまざまで、職場の雰囲気は、世界を席巻する勢いそのままにアツい(写真/石臥薫子)

 日本の賃貸の常識を覆すサービスが始まった。部屋を借りる契約はスマホのタップ4回で完了。 孫正義氏も認めた「OYO」が狙うのは、新しい価値観を持つミレニアル世代だ。 

*  *  *

サービスの詳細を知って、唇を噛んだ。

「ああ、あと数カ月早く、OYO(オヨ)があったらよかったのに……」

 そう悔しがるのは、今年1月に都内のシェアハウスに引っ越したばかりという会社員の村上大和(ひろかず)さん(27)だ。

 ホテルのように部屋を選ぶだけ、を売り文句に3月末にスタートした「OYO LIFE」は、敷金、礼金、仲介手数料が一切なし。スマホやパソコンで写真を見ながら物件を比較し、気に入れば「予約」ボタンをクリック。あとは携帯電話番号や名前、クレジットカードの番号を入れるだけ。たった4回のタップやクリックで契約が完了する。

 契約期間は1カ月単位。家具・家電も揃っているから、部屋が空いていれば手ぶらで翌日から住むことも可能だ。家賃にはWi‐Fiや公共料金も含まれているので、電気や水道、ガス会社と個別に契約する必要もない。

 そんな前代未聞のサービスに村上さんは「次回こそは」と期待を膨らませる。大学卒業後、3回転職し、そのたびに会社の近くの便利な場所に住み替えたいと思った。だが、都心部は当然家賃も高い。その分、敷金、礼金など最初に払う金額も跳ね上がるので、そこまでは払えないと諦めてきた。

「OYOは最初から月々の家賃だけ払えばいいし、家具・家電付きという点にも魅かれます。家具っていざ要らなくなっても処分が面倒だし、環境のことを考えればむやみに捨てることもできないので、できるだけ持ちたくないんです」(村上さん)

 OYO LIFEを展開するのは、世界6位のホテルチェーンを運営するインドのベンチャー企業OYO Hotels&Homesとヤフーの合弁会社だ。本格始動に先立ち、3月初めには「いきなり東京0円ライフ」と銘打ったキャンペーンを展開。くじに当たれば、六本木や銀座など超一等地の家賃数十万~100万円超という物件に1カ月間無料で住めると話題になり、サービス開始前に1万3千人超が事前登録した。契約室数も3月末時点で1008件に達しているという。

 部屋はシェアハウス、マンション、戸建ての3タイプで、賃料の目安はそれぞれ5万~8万円、10万~100万円、30万~100万円。試しにサイトをのぞいてみると、東京の山手線大崎駅から徒歩9分、19平方メートル、築2年のマンションが13万8千円だった。似た条件の物件だと、普通に借りたら10万円強が相場。かなり割高なようにも思えるが、OYO LIFE運営会社の勝瀬博則CEOは、こう話す。

「これまで10万円の家賃といっても、実質的な月々の負担額は14万5千円くらいだったんです。そう考えれば、OYOの14万~15万円は決して割高ではない。10万円払っていた人には十分払える額です」

 そのカラクリは、こうだ。

 一般的に、引っ越しには敷金や礼金などの諸経費がかかる。たとえば、賃料が10万円なら、敷金、礼金に仲介手数料や鍵の交換代などで52万5千円程度かかる。さらに家具・家電を買い揃えるのに約20万円、月々の家賃は管理費込みで11万円と想定。退去の際の引っ越し費用などで12万円かかり、2年間住むと仮定すると、合計で348万5千円かかる。これを月あたりにならすと、実質的には毎月、14万5千円を負担しているのと同じことになるのだという。

「もちろん住む期間が長くなれば平均の負担額も下がるので、1カ所にとどまりたい人は従来の賃貸契約のほうが良いでしょう。でも、18カ月以内に引っ越すのであればOYO LIFEの方がお得です」(勝瀬さん)

 OYOはこのサービスを通じて、「旅するように暮らす」というライフスタイル自体を提案したいのだという。

「自由がきく独身時代は住みたいところに住んで、生活そのものを楽しみましょうよ」(同)

 OYOが狙うターゲットは、ずばり、1980年代から2000年前後に生まれたミレニアル世代。冒頭の村上さんもまさにそうだが、モノの所有にこだわらない世代とも言われる。そのため、OYO物件の入居者は、家事代行や、車や服のシェアリングサービスを定額で利用できる「OYO PASSPORT」もオプションで利用できる。しかも最初の1カ月は無料という特典付き。

「我々はアマゾンと同じなんです。アマゾンに売っているものはほとんど、近所でも買えます。それでも皆さんなぜアマゾンで買うんでしょうか? それは、便利で快適だからです。いろんな種類の商品を比較できたり、自宅まで届けてくれたり、トラブルがあっても対処してくれたり。そういうサービスにプラスアルファのお金を払ってもいいという価値観を持つ人が増えているんです」(同)

 アマゾンの台頭によってリアル書店が苦戦を強いられたのと同じようなことが不動産業界にも起こるのか。物件のオーナーや仲介業者にとってOYOは脅威ではないのか。

「いえ、ウィンウィンの関係になれるんです」

 勝瀬さんは力強く言う。OYOは、オーナーや仲介業者から賃貸マンションや一軒家をまとめて借り上げる。さらにOYOの負担で家具などを揃え、内装をおしゃれにリノベーションして利用者に貸し出す。オーナーにとっては空室のリスクがなくなるし、物件の価値も上がる。「仲介業者にもOYOが仲介手数料を従来通り払うので、損はない」という。

 となると、OYOはいったいどこで儲かるのか。

「我々の収益は例えば14万5千円の物件だったら5千円くらいで大したことはありません。でも流通量が増えれば全く問題ない。日本の賃貸マーケットの市場規模は12兆円。その1%を取れるだけでも十分ペイします。今は都心部だけですが、今後は空き家問題を抱える地方でも物件を増やす予定です」(同)

 大量に借り上げるだけの資金力があるのがOYOの強みだ。本家のインドのOYOはユニコーン企業(未上場で時価総額10億ドル超)であり、孫正義氏率いるソフトバンク・ビジョン・ファンドからも出資を受けている。合弁会社設立にあたって組んだのも、ソフトバンク傘下のヤフーだ。(編集部・石臥薫子)

※AERA 2019年4月15日号より抜粋

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