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スズキ「新型ワゴンR」の高すぎる販売目標 月間1.6万台を本当に達成できるのか

東洋経済オンライン のロゴ 東洋経済オンライン 2017/02/24 小林 敦志
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初代から数えて6代目の「ワゴンR」

 スズキが主力の軽自動車「ワゴンR」を2月1日にフルモデルチェンジ(全面改良)した。

 1993年登場の初代から数えて6代目。4年半ぶりに新型へ切り替わったワゴンRは3つの異なる顔つきをそろえ、発進時にモーターのみで走行できるマイルド・ハイブリッド・システムを搭載したほか、新型プラットフォーム(車台)の採用で20キログラムの軽量化を実現し、燃費は最も良いモデルでガソリン1リットル当たり33.4キロメートルを達成した。歴代モデルに負けない意欲作となっている。

 一方、スズキが掲げた新型ワゴンRの月間販売目標に筆者は驚いた。発表時のニュースリリースに太字で記載してあった「ワゴンRシリーズ全体1万6000台」の数字だ。先代の5代目ワゴンRがデビューした2012年当時のニュースリリースを見返してみると、月間販売目標は同じく1万6000台。ただ、同じ数字目標を掲げるには、当時と今では状況はあまりに異なっている。

 初代デビュー当初のワゴンRは助手席側にしか後部ドアのないことや、当時としては珍しい背の高いボクシーなスタイルを採用。瞬く間に人気が高まり、軽自動車の車名別新車販売ランキングのトップクラスに長らく君臨してきた。

 ところが、ここ最近は販売台数の縮小が続いている。2012年9月に登場した先代の6代目ワゴンRは初めて通年販売となった2013年こそ約18万6000台(同約1万5500台)と販売目標至近で推移したものの、2014年は17.5万台(同約1万4000台)へ低下した。さらに年を追うごとに販売台数は縮み、2016年は約8万1000台(同約6700台)とモデル末期だったとしても、発売当初に掲げた目標の半分にまで落ち込んでいた。

 
   

代わりに台頭したのはホンダ「N-BOX」、ダイハツ「タント」、日産自動車「デイズ ルークス」、スズキ「スペーシア」などがラインナップされる、スーパーハイトワゴンだ。子どもが車内で立てる高い室内高に、後部左右サイドドアはスライドタイプを採用するなど、現役子育て世代から見れば、リアサイドドアにヒンジ式ドアを採用するワゴンRのようなハイトワゴンに比べれば、圧倒的に使い勝手が高いことが人気の理由となっている。

 現在、軽自動車市場ではN-BOXとタントが熾烈な車名別軽自動車販売ナンバー1争いを繰り広げている。2大スーパーハイトワゴンとワゴンRの2016年の販売台数の推移を比較すると、それぞれ2倍近いほど販売台数には大きな差が出ている。

 ワゴンRのほか、ハイトワゴンでライバルとなるダイハツ「ムーヴ」とホンダ「N-WGN」の2016年の販売推移を見ても、ムーヴが後半に派生モデルとなる「ムーヴ キャンバス」を追加して、全体の台数が少し持ち上がり約8500台となった。キャンバスがムーヴシリーズのかなりのウエイトを占めていても、2大スーパーハイトワゴンには到底及ばない。かつてはワゴンRをメインに軽自動車販売の花形であったハイトワゴンだが、往時の勢いは完全に失っているといっていいだろう。

 

 そんな軽自動車市場で、7代目ワゴンRは再び月間1万6000台のヒットをたたきき出せるのか。2016年に軽自動車の車名別新車販売ランキングでトップに立ったN-BOXでさえ、月間平均販売は1万6000台に届いていないにもかかわらずだ。スズキには失礼な話になるが、どれだけ新型ワゴンRの出来がよく人気モデルとなったとしても、スーパーハイトワゴンが台頭している市場環境で、月間1万6000台をコンスタントに維持するのはかなりハードルが高い。

「行儀の悪い売り方」に戻る可能性も?

 スズキがもし、無理をしてでもこの目標を達成しようと動くとしたら、自らが否定した悪習に戻る可能性もある。

 思い起こされるのは2016年5月10日に行われた、スズキの決算会見。鈴木修会長が「行儀の悪い売り方」という発言をして話題となった。特に軽自動車で目立っている、「自社届け出(軽自動車は登録ではなく届け出になる)」の乱発による未使用中古車の大量発生を指しているものとされている。

 メーカーの生産工場稼働率の維持、販売ディーラーの実績確保、メーカー間での激しい販売合戦などなど、理由を挙げればキリがないが、在庫として抱えている新車を売り先が決まっていないのに、ディーラー名義などで自ら届け出を行うことでナンバープレートを取得。そして使わないままに中古車市場で流通させているものは「未使用中古車」と呼ばれている。中古車市場には軽自動車だけでなく、登録車も含めて「未使用中古車」がいま大量に流通している。

 2016年の軽自動車・車名別新車販売ランキングでトップ5に入ったモデルは、いずれも未使用中古車専売店もしくは、未使用中古車をメインに扱う中古車販売店の店先に数多く展示されている。某業界事情通からは、「全体の販売台数の45%ほどが自社届け出になっているブランドもあると聞いている」などという情報も入っている。

 軽自動車の販売台数争いの勝敗は、あくまでエンドユーザーへの正式な販売をベースにしているものの、ライバルメーカーの動きを探り、ライバルを蹴落とすために必要な数をしっかり自社届け出で積み増しができたかにかかっているなどと口の悪い関係者は語っているが、月によっては数百台などという僅差で販売台数争いが展開されているのを統計で見ると、メーカー間でなんらかの“探り合い”が行われているのは確かなようだ。

販売活動に臨むための「表明」のひとつか?

 スズキは2016年の年間販売台数において、目標どおり「登録車10万台販売」をクリアした。登録車販売に力を入れる関係もあり、軽自動車では現状シェア維持程度を目標に、ここ最近は軽自動車販売のデッドヒートには積極的な参加をしてこなかったと見る向きが多かった。

 2016年の年間軽自動車販売のメーカー別シェアでスズキは30.2%を維持。トップのダイハツとは3.4%差、3位のホンダとの差は11.5%となっており、少なくとも業界2位はしばらく安泰とはいえるが、2017年1月単月だけ見れば、ホンダとの差は8.5%、2016年12月は7.8%とホンダの追い上げも激しくなっている。

 需要の変化という逆風も踏まえて、スズキが新型ワゴンRの月間販売目標として1万6000台の達成を死守することを主眼に置くなら、再び「行儀の悪い売り方」を容認してもおかしくない流れにも見える。それとも、販売目標は公表値と社内向け値で異なることも一般的には多く、軽自動車販売トップを目指して販売活動に臨むための「表明」のひとつなのか。数カ月から半年程度でその答えが見えてくるだろう。


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